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明日につながる基礎知識

第22回 知っているようで知らないこのワード 「プロボノ」 ぷろぼの Pro Bono画像 イラスト

プロボノとは、ラテン語の「公共善のために(Pro Bono Publico)」に由来する言葉で、社会人が仕事で培った経験やスキル、専門知識を生かしてNPOなどを支援する社会貢献活動を意味する。もともとは弁護士など法律に携わる人が、低所得者に対して無償で法律相談や弁護活動などのサービスを提供する活動を指した。実際、アメリカ法曹協会の弁護士業務模範規則には「弁護士は少なくとも年間50時間のプロボノ法律サービスを行うよう努めるべき」とあり、日本でも第二東京弁護士会が年間10時間の公益活動を義務化している。

無償の社会貢献活動といえば、ボランティアが思い浮かぶが、プロボノとどう違うのか。例えば、弁護士の資格を持つ人が災害時に瓦礫(がれき)の撤去を手伝うのはボランティアだが、被災者に無料で法律相談を行うことはプロボノと呼ぶことができる。つまり、時間や労力を提供するのか、その人が仕事を通じて身に付けた職能を提供するかの違いである。

近年では、プロボノに参加する人の職業が弁護士以外にも広がっている。デザイナーがNPOのパンフレットやウェブサイトの制作を手伝う、コンサルタントがマーケティング戦略を立案する、システムエンジニアがデータ管理システムを構築するなどである。また、支援先もNPOだけでなく、地域社会や学校、伝統工芸、農業など多様な分野に拡大してきた。

現在、日本にはいくつかの中間支援団体(NPOを手助けするNPO)があり、プロボノに参加したい人と支援を受けたい団体のマッチングを行っている。プロボノに参加した企業人からは、「ビジネスやプライベートとは違う、第三の人脈ができた」「会社の肩書きや信用が通用しない所で仕事をすることで、自身のスキルアップにつながった」「社会的な視野が広がった」などの意見が聞かれる。

自分のスキルは社会的に見てどのレベルなのか、限られた時間でどれだけ質の高いアウトプットが出せるのか、初対面の人とうまくチームを組めるかなど、企業人がプロボノという"他流試合の現場"で確認できることは多い。このように、本業である仕事へのフィードバックが期待できることもあって、人材育成とCSRを兼ねたプログラムとしてプロボノを採用する企業も増えている。

今月の「プロボノ」なアーカイブス
画像 『プロボノ-新しい社会貢献 新しい働き方』

『プロボノ―新しい社会貢献 新しい働き方』嵯峨生馬著、勁草書房

『プロボノ
―新しい社会貢献 新しい働き方』

特定非営利活動法人サービスグラントの代表理事を務める嵯峨生馬氏の著書。サービスグラントは、プロボノ参加者とNPOとのマッチングを行う中間支援団体で、同団体に登録した人を4~6名のチームに編成し、週5時間程度、約半年をかけて具体的な成果物をNPOに提供するまでをコーディネートする。本書では、プロボノの基礎知識や社会的背景、NPOの課題、プロボノ参加者の横顔、公共領域への活用提言などが述べられている。プロのスキルを持つ企業人に新しい働き方を提案する1冊。