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日本デザイン探訪~「今」に活きる日本の手技 益田文和

画像 円錐形のコーヒードリッパーVol.48 円錐形のコーヒードリッパー バリスタ×耐熱ガラス

昭和の末まで街のあちこちにあった喫茶店。サイフォンやネルドリップで一杯ずつ入れてくれるコーヒーは今より高かったけれど、それに見合う満足感を与えてくれた。自分が頼んだコーヒーはもちろん、他の客が注文するさまざまな種類のコーヒーを淹(い)れる香りが、狭い空間を常に満たしていた。質の良いBGMの音質とともにその温かい香りに包まれた心地良い時間。そのために多少高い金を払っても無駄とは思わなかった。

今、あの頃のコーヒーに少しでも近い味を手に入れるには、自分で豆を挽いてペーパーフィルターで淹れるのが最も確かだ。ペーパーフィルター式のドリッパーがドイツで生まれたのは百年以上前で、1960年代から基本的な形は変わっていない。

その変革に挑戦して話題になっているハリオ円錐形ドリッパーV60を使ってみることにした。ハリオと言えば、これまた百年近くの社歴を持つ理化学用ガラス器具の専門メーカーで、喫茶店で使われていたサイフォンの多くもハリオ製であった。日本橋の本社に行っても販売されていないので、インターネットで買ってみた。

今までのドリッパーは、粉の状態によってペーパーフィルターが内側に貼り付いてドリップが止まってしまうことがあった。円錐形が特徴のV60では、同じく円錐形のペーパーフィルターを使う。抽出液の流れを渦巻き状のリブを持った内壁面で誘導、抽出速度を調整しながら底に開いた大きな穴に向かって落として行く。速やかにむらなくコーヒーのうま味を引き出すためのデザインだ。

良い豆を少し細かく挽いて、いつもより多めに使うのがコツとみた。よし、コーヒーブレイクだ。

HARIO V60 耐熱ガラス透過ドリッパー VDG-02 CBR(ショコラブラウン) http://www.hario.co.jp/coffee/hario_coffee/v60_dripper.html

画像 渦巻き状のリブを上から画像 渦巻き状のリブを横から画像 ドリップ後の様子

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年
東京生まれ。
1973年
東京造形大学デザイン学科卒業
1982年~88年
INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任
1989年
世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員
1991年
(株)オープンハウスを設立
1994年
国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー
1995年
Tennen Design '95 Kyotoを主催
現在
(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。
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