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日本デザイン探訪~「今」に活きる日本の手技 益田文和

画像 水さえあればのスーパー歯ブラシVol.49 水さえあればのスーパー歯ブラシ 職人技×ナノテク加工技術

インドネシア、ジャワ島中央の山あいに、自然のエコシステムに基づいた永続可能な農業と暮らし(パーマカルチャー)を実践している農場を訪ねた。そこで体験したニームという苦い木の枝を使う歯みがきが気に入った。日本ではいつも歯みがき粉を使うが、果たして歯みがき粉を使わずに済ませることはできないだろうか。

その後、歯みがき粉が不要という商品を東京の有楽町駅前にあるトコーという旅行用品店に出かけて見つけた。MISOKAというイオンコーティングされた歯ブラシで、歯みがき粉がいらないという。歯ブラシを水に漬けて磨いてゆすぐだけだというのだ。にわかに信じられない感じではあったが、ロゴマークやパッケージなどのデザインの質が高く、いい加減なものではなさそうなので試しに買ってみた。

結果は「驚き」の一言である。力を入れずに軽くみがいただけでその都度、歯の裏がサラっとするのが分かる。やむを得ず歯みがき粉を使って磨いた場合でも、仕上げにこの歯ブラシを使いたくなる。イオンコーティングされたブラシの先に秘密があるらしいが、そればかりではなさそうだ。磨き心地に人の手触りが感じられるのだ。

それにしても水だけで歯が磨けるというのは旅行先ではきわめて便利である。映画「卒業」でダスティン・ホフマンがホテルのフロントで「お荷物は?」と聞かれ、ジャケットの胸のポケットから歯ブラシを一本つまみだしてにっこりする場面があった。思わずあれをやってみたくなる。

MISOKA http://www.misoka.jp/

画像 水に漬けたブラシ画像 毛先画像 職人ロゴ

益田文和(ますだ・ふみかず)プロフィール

1949年
東京生まれ。
1973年
東京造形大学デザイン学科卒業
1982年~88年
INDUSTRAL DESIGN 誌編集長を歴任
1989年
世界デザイン会議ICSID'89 NAGOYA実行委員
1991年
(株)オープンハウスを設立
1994年
国際デザインフェア'94 NAGOYAプロデューサー
1995年
Tennen Design '95 Kyotoを主催
現在
(株)オープンハウス代表取締役。近年は特にエコロジカルなデザインの研究と実践をテーマに活動している。
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