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救命率の向上を実現する「モバイル・テレメディシン」の実効性確認
2005年度の試行運用を目指し


報道発表 ニュース

2004.04.15

医用データ伝送の標準規格で全国初
救命率の向上を実現する「モバイル・テレメディシン」の実効性確認
2005年度の試行運用を目指し


 循環器救急におけるモバイル・テレメディシン研究会(代表:国立循環器病センター緊急部長:野々木宏)は、救急車から患者データを病院にリアルタイム送信し、的確な早期診断と適切な搬送先病院決定で救命率向上を実現するモバイル・テレメディシンの実証実験で実効性を確認しました。吹田市(市長:阪口善雄)の協力により、救急車に関係機器を搭載した救急患者搬送想定実験で、医療用データ伝送の標準規格採用での運用は、全国で初めてです。

【背景】

 21世紀を迎え我が国では高齢化が進んでおり、要介護要因の主な原因である心筋梗塞・脳卒中などへの対策は重要です。近年これらの疾患に対する治療は集中治療室の整備、再灌流療法の普及などにより病院内死亡率は大幅に改善しました。しかし、急性心筋梗塞症では死亡の半数は院外で発生しているとされ、致命率は依然として26?40%と低くありません。これを改善するためには発症から出来る限り早い診断と専門治療が必要です。
 近年、情報機器の小型高性能化や移動体通信の高速化・低価格化が進み、モバイル・テレメディシンという新分野が急速に発展しています。日本は欧米と比較して商用移動体通信の開発・普及が進んでおり、これらを用いたシステム開発に適していると言えます。

【現状の救命救急への取り組み】

 救急車と病院間でのコミュニケーション手段の多くは、消防無線や携帯電話を利用した音声によるものです。そうした中、高規格救急車を中心に、心筋梗塞や不整脈などの診断に役立つ12誘導心電図伝送システムの配備が進められているものの、互換性がないシステムで専用受信機が必要、操作が煩雑、伝送時間が長い、などで十分に活用されていないのが実態です。また、救急車と病院とのデータ伝送では、さまざまな取り組みがなされているものの、専用システムによるものが多く、汎用性を欠き、容易に水平展開できない状況にあります。

【実証実験の概要】

 実証実験では稼動する吹田市所有の救急車に、心筋梗塞や不整脈などの診断に役立つ12誘導心電計、心電図・血圧・血液酸素飽和度などを表示するベッドサイド・モニタ、病院側で操作し患者の状態をモニタリングするネットワーク・カメラ、これらの機器を接続しデータを伝送するための超小型サーバを搭載します。データは簡単な操作で、超小型サーバを介し、第三世代携帯電話(W?CDMA)により国立循環器病センターへ送ります。同センターでは、市販のパソコンにより、リアルタイムに伝送されたデータを閲覧します。音声に加え患者の生体情報や画像をリアルタイムで伝えられるようになり、救急救命士と医師とのコミュニケーションが充実し「救急救命士への的確な指示」「専門病院への適切な搬送」、「病院到着前診断による早期治療体制の確立」などが可能となります。データの伝送にはInternet Protocolと医療用波形データ伝送の標準規格として期待されるMFER(Medical Waveform Encoding Rule)などを採用したことで、利用機器や伝送方式に依存しない汎用性を有しています。また、さらなる診断精度の向上を見据え、セキュリティを保ったまま、離れた場所の複数の医師で伝送されたデータが見られるよう、将来性と拡張性を兼ね備えたシステムとなっています。

【これまでの取り組みと今後の展開】

 循環器救急おけるモバイル・テレメディシン研究会は2002年7月、循環器救急に役立つシステム開発を目標とし発足、研究開発に着手しました。2003年4月には、プロトタイプを開発し、データ伝送に成功しました。救急車を利用した実証実験は2003年12月に開始し、これまで模擬データの伝送で操作性、実用性、安全性の検証により、実効性が確認できました。今後、健康生体のデータ伝送を経て年末までには、救急患者へ試験的に適用します。その結果を踏まえ関係機関と調整のうえ2005年度には、救急患者に常時対応できるよう、救急車へ関連機器常備による試行運用の開始を予定しています。また、実証実験や試験的な運用を通じて関係各機関には、救急医療現場への導入、救急救命士に対する常時指示体制や事後検証体制の充実といったメディカル・コントロールへの活用を働きかけ、医療の質の向上を目指します。
 これまでの取り組みについては5月3日、米国フロリダ州タンパで開催される米国遠隔医療学会で発表します。

【研究会構成メンバーの役割】

  • 国立循環器病センター(大阪府吹田市、総長:北村惣一郎)
    救急現場のニーズ(重症度を判断するトリアージと患者を適切な病院に振り分けるディスパッチおよび救急救命士がおこなう処置を支援するプレホスピタルケア)と、技術のシーズを結びつける橋渡し
  • NTTコムウェア株式会社(東京都港区、代表取締役社長:松尾勇二)
    Linuxをベースに開発した超小型サーバの提供と、モバイル・テレメディシンのシステム 開発全般
  • 日本光電工業株式会社(東京都新宿区、代表取締役社長:荻野和郎)
    12誘導心電計とそのインタフェース仕様情報の提供
  • フクダ電子株式会社(東京都文京区、代表取締役社長:福田孝太郎)
    心電図、脈拍、血圧などのデータを表示するベッドサイド・モニタとそのインタフェース仕様情報の提供
  • 松下電器産業株式会社ヘルスケア社(横浜市都筑区、社長:西田順紀)
    遠隔操作対応の小型ネットワーク・カメラの提供
  • 独立行政法人産業技術総合研究所関西センター(大阪府池田市、所長:請川孝治)
    モバイル・テレメディシン研究会全体のコーディネイト
   ※吹田市(協力)
    救急車の提供と救急救命士による協力



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