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「INNOVATOR FILE #2-1 センサーを用いた行動分析技術」 行動の可視化によって実現する生産性向上への取り組み 基盤技術本部 研究開発部 スペシャリスト 小林 和恵

これまで客観的な実態把握が難しかった「行動、プロセス」に着目

企業における業務効率化の改善を考えたとき、まず行うのが現状分析である。一般的なのは、コンピューターなどのツールがどのように利用されているかを調べ、ワークフローや組織構造を見直すことで、無駄やボトルネックを解消するというものだ。しかし、オフィスにおける活動はコンピューターの前だけで行われるわけではない。理想的なオフィスの在り方を考えるには、従業員一人ひとりに目を向けることが重要なのではないか。そんな発想からスタートしたのが、センサーを用いた行動分析による生産性向上への取り組みである。基盤技術本部研究開発部スペシャリストの小林和恵は、この研究に取り組むひとりだ。

「業務効率化は多くの企業にとって重要なテーマです。しかし、その際の評価指標となるものは、労力やコストといった投入物(インプット)に対して生み出した価値(アウトプット)、つまりどれだけ利益を上げたかという経営的な数字、開発プロジェクトであれば作成したドキュメント量やプログラム規模といった数値化しやすい指標が一般的です。一方で、オフィスにおける従業員や組織が、どのような活動を経て成果を生み出したのかという活動の実態を把握することは困難でした。そこで私たちが注目したのが、オフィスに置ける従業員一人ひとりの活動です。」

■行動分析による生産性向上への取り組み

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センサーデバイスを身に着けることで活動データを取得

この研究では、従業員の活動データを記録することが第一歩となる。業務効率化を目的とした行動分析のソリューションは他にも存在する。行動を把握するための手法には、アンケートを使ったものから、業務中の行動をカメラで撮影するものまで実にさまざま。小林が採用したのは、バッジ型のセンサーデバイスを身に着けるという方法だ。

「このバッジにはセンサーが内蔵されており、動き、音声、他のバッジ(人)との近接、位置(オフィス内の部屋や座席)などのデータを取得できます。バッジ型である利点は、常に身に着けていることが可能な点です。例えばビデオで撮影する方法だと、予めカメラを設置してある場所での行動しか記録できませんし、検証でビデオを見返す手間がかかります。それに、どうしてもカメラを意識して正確なデータにならないこともあります。その点、バッジであればそれほど気になりませんよね。意識していない普段の行動を記録できます。そういう意味でもバッジ型のセンサーデバイスは適しているのだと思います。」

■バッジ型センサーデバイス

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活動データから見えてくる実際の行動と組織のズレ

実際に研究チームのスタッフで実験を行い、そのデータを基に「行動実績の可視化」、「コミュニケーション分析」、「ワークスタイル分析」という3つの分析を行った。
まず、 行動実績の可視化では、何時にオフィスのどの場所にいたかや誰と会話(対面コミュニケーション)をしたかを把握できる。位置の把握にはBluetoothが用いられており、あらかじめオフィス内に設置しておいたノードと無線通信を行うことで場所を特定。

会議室にいたのか座席にいたのかといったことがわかる。また、他のバッジとの近接やその際の音声によって、誰と会話(対面コミュニケーション)したかがわかる。なお、音声の取得については、プライバシーなどの問題もあるため内容を録音するのではなく、会話の有無だけをチェックしているという。

■行動実績の可視化

コミュニケーション分析では、会話(対面コミュニケーション)の相手と量を実際の組織構造に当てはめることで、業務とコミュニケーションの関係を視覚化できる。上司と部下、同僚といった関係と実際のコミュニケーションから、組織がどう機能しているかを把握できる。もちろん、直接会話する以外にも電話やメール等の手段はあるし、会話の量だけでなく質(内容)も重要であるため、この結果だけで組織やコミュニケーションの問題を指摘することはできない。しかし、これまでは客観的に見えていなかったものが見えることで、新たな気づきが得られる可能性はあるだろう。

ワークスタイル分析では、組織や役職ごとの傾向が把握できる。在社時間は短いがコミュニケーションの多いプロジェクト、逆に在社時間は長いがコミュニケーションが少ないプロジェクトなどを統計的に把握できる。例えばこれらの傾向とプロジェクトの成果を照らし合わせることで、成功または失敗のしやすさとの関連性を見いだし、潜在的なリスクを予見できるかもしれない。そうなれば、組織編成のサポートとしても利用できる。

■対面コミュニケーション

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一人ひとりが働きやすい環境を創り出すための研究

ここで紹介した3つの分析結果は、あくまでもデータ活用の一例である。ソリューションとして使われるようになるには、さらなる検証が必要となる。研究の初期段階だからという理由もあるが、これまであまり手が付けられていない分野だけに、すべてが手探り状態なのだ。しかし逆に、まったく新しいアプローチの業務効率化が生まれる可能性も秘めている。

「この研究は、決して上司が部下を評価したり管理したりすることが目的ではありません。働き方を明らかにすることで、より快適なオフィスの在り方を考えるためのものです。自分や組織の行動を客観的に把握することにより、新たな気づきを得ることができ、モチベーションの向上につながるかもしれません。このセンサーを身に着けることで仕事がやりやすくなったという実感を持っていただけることが目標です。」

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研究のための研究で終わらせないビジネスを意識する姿勢

小林は、入社以来ずっと研究開発の現場に身を置いてきた。これまで手がけたプロジェクトには、次世代のユーザーインターフェース技術「タンジブル」を応用した「タンジブル災害総合シナリオシミュレータ」などがある。「これまで世の中にないもの」「誰も想像していないもの」を生み出すことが研究開発であるが、研究のための研究で終わってしまうおそれもある。広い視野とバランス感覚を養うとともに、製品として形にする事業本部とのコラボレーションが重要となる。小林自身もそれを実感している。

「これまでずっと研究開発に携わってきましたが、研究開発という仕事は自分に向いていると思っています。ただ、『こういう研究をしました』で終わってしまう研究ではなく、世の中に使ってもらえる研究を目指しています。そのためには、お客さまの声を直接伺ったり、社内の事業本部の方とお話ししたりする機会も大切にしています。それが新しい研究のヒントやアイデアに結びつくことも少なくありません。これからもさまざまな研究開発に取り組んでいきたいですね。」

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