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「INNOVATOR FILE #2-3 GUI問題箇所分析・プロファイル推定技術 詳細な分析によってシステムの課題をピンポイントで発見 基盤技術本部 研究開発部 スペシャリスト 楯 武士

生産性を左右するICTシステムのユーザビリティ

生産性の向上において、社内の業務システムや商用WebサイトといったICTシステムのユーザビリティ(システムの使いやすさ)はとても重要である。高いユーザビリティは、業務のスピードや正確性を向上させるという効果がある。さらに、それを使う従業員にとっても、余計なストレスを感じることなくモチベーションを維持できるため、企業にとっても大きな利益をもたらす。
このようなユーザビリティの研究に取り組むのが、基盤技術本部研究開発部スペシャリストの楯武士である。

「ユーザビリティとは、システムの使い勝手や使いやすさのことです。一般的には、使い方がわかりやすい、使い方を覚えたらスピーディーに処理できる、使い方を忘れにくい、ミスをしにくく、もしミスをしてもやり直しが簡単といった要素を指します。システムにおいては、誰が何のために使うのか、いつどこをどうやって操作すると目的が達成できるのかが一目瞭然で、ユーザーにあれこれ考えさせないこと。つまり人に優しくて気の利いたシステムというわけです。」

■ユーザビリティが高いWebサイト/システム要件

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ユーザーの姿を明らかにする2つの技術

近年、業務システムにおいて、ユーザビリティを強く意識した設計が求められるようになっている。これまでは「仕事だからしょうがない」と、使い勝手が悪くてもユーザーがシステムに合わせるのが常識であった。これが、システムをユーザーに合わせて設計するという流れに変わった。
また、インターネットの普及により、さまざまな商用Webサイトが運営されるようになったが、これらのWebサイトでは、お客さまであるユーザーにどれだけ使ってもらえるかが収益に直結する重要な要素である。そのため、多くの企業がユーザビリティの改善に心血を注いでいる。現在では、あらゆることをユーザー中心で考えてシステムを設計するという流れが注目されている。
そこで重要となるのが、ユーザーにとって最適なシステムを設計するための根拠を知るための手段、すなわちユーザーの分析だ。

「ユーザビリティの高いシステムを設計するには、まず改善すべきところを知る必要があります。これまでの業務システムではユーザビリティ分析はほとんど行われてきませんでした。そこで、ユーザーが画面のどこをどう操作しているのかといった実際のユーザーの操作を元にユーザビリティの分析をするために考案したのが、GUI(※1)問題箇所分析技術です。

■ユーザビリティ向上による効果

また、商用Webサイトでより正確なユーザビリティを分析するためには、ユーザーのプロファイル(特性)も知る必要があります。ITスキルの有無など、ユーザーごとに最適な設計は異なるためです。それを可能にするのがプロファイル推定技術です。」

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ユーザーインターフェースの問題箇所をピンポイントで特定

GUI問題箇所分析技術では、まずユーザーが行うWebブラウザー上での操作を記録する。これはアドオンの形で提供されており、ユーザーが使うコンピューターにこれをインストールすることで行われる。この蓄積された記録を分析することでGUIの問題箇所を特定し、改善のヒントを得ることができる。
「既存の業務システムを何人かのユーザーに使ってもらったとします。分析結果を見て、その中でも全体的に時間のかかる操作やユーザーごとにばらつきの大きい操作に注目します。例えばそれがプルダウンメニューだとすると、次はプルダウンメニューごとの操作時間を見ます。ここで、もっとも時間が長いものに改善の余地があるとして注目しますが、操作回数(使用頻度)も考慮する必要があります。頻繁に操作するにもかかわらず時間がかかるものは、慣れにくいという意味でもありますから改善すべきだといえます。このように、プルダウンメニューやテキストボックスといったオブジェクト単位で取得した操作履歴を詳細かつ客観的に分析することで初めて、本当に問題のある箇所を発見できます。

これは、従来のページ単位のものと比較してGUI問題箇所分析技術の優れている点といえます。」

ユーザーの操作を細かい粒度で記録できるのは、アドオンという形で実装されているからだ。これには、楯が以前商品化に取り組んだセキュリティー製品「PHISHCUT」での経験が活かされている。
「『PHISHCUT』は、フィッシング対策のための製品です。Webサイトの画像に電子透かしを埋め込み、それを使って偽物(フィッシングサイト)ではないことを判定します。分野は異なりますが、Webブラウザーの挙動を監視するという技術を今回の研究で応用しています。また、この技術は運用中のシステムに対してユーザビリティ分析を行って、改善点を見つけ出す場面で使われます。なぜなら、サーバーなどに手を加えることなく分析が行えるからです。これはビジネス的な観点では重要になります。」

■既存ユーザビリティ分析手法との違い

■操作時間と操作回数の相関関係を可視化

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操作内容からユーザーのプロファイルを推定

どのようなユーザーがそのサイトを使っているかという情報も、商用Webサイトのユーザビリティ分析には欠かせない。スキルや経験、嗜好を把握していなければ、本当に正しい分析はできないといってもよいだろう。
プロファイル推定技術は、社内からのニーズに基づいて研究が進められたものでGUI問題箇所分析技術における「ユーザーの操作を詳細に記録できる」ことを応用したものだ。「ある操作でAの傾向があるユーザーは、Bという特性を持っている可能性がある」といったルールを設定しておき、実際の操作記録とを照らし合わせてプロファイルを自動的に推定する。

「例えば、文字入力が速いユーザーは、ITスキルが比較的高いといえます。特に自分の名前を入力するような場合は、入力すべき内容は明らかなので、入力速度の差は、単純にスキルの差であると考えられます。

また、料金一覧や見積ページを長時間または頻繁に見返しているなら、そのような人はコスト意識が高いといえます。電話番号の入力ボックスでWebサイトを離脱してしまう場合は、個人情報の入力に抵抗を持っていると推測されます。これらをルールとして設定し、ユーザーの操作と照らし合わせることで、自動的にプロファイルを推定します。従来からある分析手法では、検索ワードや履歴からユーザーのプロファイルを判断するという方法が主流でしたが、プロファイル推定技術を組み合わせて使うことで、さらに高い精度でユーザーのプロファイルを推定できるようになります。この技術は、ユーザーが特定しやすい企業内の業務システムよりも、むしろWebマーケティング分野での応用に期待できると考えています。」

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高精度な分析が誰でも簡単にできる仕組みづくりに挑む

GUI問題箇所分析技術とプロファイル推定技術が市場で活用されるようになるには、さらなるブラッシュアップが必要となる。
「詳細な操作記録だけがあっても、それを正しく分析できなければ意味がありません。当面は、誰でも簡単に問題箇所を正確に把握できるような仕組みづくりが目標ですね。専門知識を必要とせずに分析ができる、あるいは分析結果を簡単に把握できるようにするといった工夫が必要だと考えています。」
楯は、人間の行動や思考、意識を研究する認知心理科学に興味がある。ユーザビリティへの取り組みもその興味の延長線上にあり、今後さらに研究を深めていきたいという。

「ユーザビリティは生産性の向上に大きく影響しますので、企業や業務にとって大変重要ですが、実はそれだけではありません。働く人にとっての快適さ・心地よさにもつながります。使いやすくて成果も上がる、そんなシステムや環境の実現に貢献できるような研究をこれからも続けていきたいです。」

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