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コムジン診療所 花粉症 〜春の憂鬱を吹き飛ばせ!〜
花粉症になりやすい人とは?

花粉症は植物の花粉が原因で起こるアレルギー性の病気。花粉が飛び散るのはその植物の花が開いている時期に限られるため、原因となる花粉の開花時期によって花粉症のシーズンも変わってきます。春が花粉症のシーズンと言われるのは、日本の花粉症患者の約8割がスギ花粉症であるため。例えば原因花粉がヨモギの人なら症状が現れるのは秋ごろになります。

花粉症の歴史はまだ浅く、日本で最初の患者が発見されたのは1961(昭和36)年。ブタクサの花粉によるものでした。スギ花粉症が発見されたのは2年後の63(昭和38)年で、以後、年々増加を続け、現在に至っています。
スギ花粉症が急増した最大の原因は、スギ花粉の増加。戦中・戦後の山林の荒廃を復興する目的で、成長の早いスギを全国の山林に植林したために日本の森林はスギ林ばかりになり、結果、春先になるとたくさんの花粉が私達の生活空間に飛来するようになったのです。

しかし、同じ地域に住み、同じような生活をしている場合でも、花粉症になる人とならない人がいます。これはなぜでしょうか?
それを説明する前に、まずアレルギーが起こる仕組みを説明しておきましょう。ヒトは自分の体と違った成分の物質(異物)が体内に入ってくると「抗体」を作り、再び同じ異物が体内に入ってきた際に反応を起こします。その反応が人体に都合の良い方向に働くのが「免疫」。細菌やウイルスなどの病原体を攻撃して病気が起きるのを防ぐシステムです。これとは逆に、人体に悪影響を及ぼすような反応を示すのが「アレルギー」。どちらも体を守るための反応ですが、アレルギーの場合、それが“裏目”に出てしまうわけです。

花粉症を引き起こすのは「IgE抗体」と呼ばれる抗体です。しかし、このIgE抗体は花粉を吸ったすべての人の体内で同じように作られるのではなく、アレルギー体質の人ほど作られやすくなります。IgE抗体を作る・作らないの違いは、IgE抗体の産出機能を抑制する遺伝子(アレルギー抑制遺伝子)を持っているかいないか。持っていない場合は、体内に花粉が入るとIgE抗体が作られ、それがある量まで達すると花粉症の症状が出てきます。
アレルギー抑制遺伝子の存在はまだ実証されていませんが、いずれにしても花粉症には遺伝子レベルの素因が深く関係していることは間違いありません。もちろん、そうした遺伝子的要素がある人でも、花粉に接する機会が少なければ発病しません。

メディカルケア&セルフケアで花粉対策

花粉症の4大症状と言われる、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみ。空気中を飛散している花粉は、まず鼻の粘膜や目に接触するため、こうした症状が現れるのです。目のかゆみ以外は風邪の初期症状に似ていて間違えやすいのですが、7〜8回程度連続するくしゃみや、水のようにサラサラな鼻水が何日も続くようなら花粉症。「もしや…」と思ったら病院(一般的には耳鼻科か、アレルギー科)へ行きましょう。

病院では、その症状がアレルギーによって起こったものかを確認し、そうであれば、次に何の花粉が原因かを調べます。
いずれの場合も、治療の中心は薬物療法。これには症状が現れないようにする「予防的治療」と、症状を和らげるための「対症療法」がありますが、メインとなるのは抗アレルギー薬を使った予防的治療。服用してから効果が出るまで1〜2週間かかるので、医師の診療を受けた上で、花粉飛散予測日の2週間ほど前から花粉が飛ばなくなるまで服用を続けます。副作用はほとんどありませんが、なかには眠気が出る人もいるようです。心配な人は一度試し飲みをしてみるといいでしょう。肝臓や腎臓、心臓に疾患のある人はその旨を医師に伝えておくことも必要です。
初めて花粉症になった時や抗アレルギー薬の飲み忘れで症状が出てしまった場合は、ステロイド薬の鼻スプレー薬や点眼薬を使って症状を抑えながら、抗アレルギー薬の効果が出るのを待ちます。ステロイド薬は強い副作用があると言われていますが、局所的に使う場合は問題ありません。

また、花粉症対策にはセルフケアも欠かせません。なかでも最も重要なのが花粉を避けること。そのためには花粉情報をよく確認し、花粉の飛散量が多い日・時間帯はなるべく外出を控える、外出時は帽子・メガネ・マスクを付けるようにする、家の中でも日中は窓を極力閉め切り、掃除は丁寧に行い、フローリングならぞうきんで水拭きするなど、とにかくできる限り花粉との接触を避けて下さい。

花粉症になってしまった人が症状を軽くするためにも、アレルギー体質の人が花粉症の発病を予防するためにも、日ごろから運動をして病気に負けない体を作っておくことが大切です。運動には体力の増強以外に、皮膚の鍛錬や自立神経安定の効果があります。ただし、その際も環境には要注意。花粉が多く飛ぶ中で運動すれば、花粉症の悪化(または発病)を招くことになりかねません。そのほか、鼻の粘膜を過敏にさせるストレスや睡眠不足などにも気を付けましょう。

花粉カレンダー(南関東地方)
 
花粉防衛ファッションの例  
帽子 顔や髪に花粉が付くのを防ぐため、つばが広めのものが良い。外出後は、なるべく早く髪を洗おう。
メガネ 花粉症用のすき間のないタイプがベスト。普通のメガネやサングラスならレンズが大きいものが良い。
マスク 花粉症専用のものがベストだが、普通のマスクを使う場合は湿らせたガーゼを内側に挟むと良い。使用後は必ず、洗ったり、はたいたりすること。
スカーフ、マフラー 首筋は花粉が付くと皮膚炎を起こしやすいので、スカーフやマフラーで露出を防ぐ。素材は表面がスベスベしたものが良い。
コート 一番外側に着る服は、花粉が付きにくいよう表面がスベスベした素材が良い。覆う面積が広い長めのコートがより効果的。
化粧 ベタつく化粧品は花粉を付着させることになるので避ける。
外出頻度 花粉の飛散量が多い日はなるべく外出を控える。特に1日のうちで飛散量がピークとなる12〜15時はできるだけ外出を避ける。
帰宅前 家内に花粉を持ち込まないよう、玄関の外で洋服・帽子・髪などに付いた花粉をよく払い落とす。家族にも協力してもらうことを忘れずに。

監修者プロフィール
斎藤 洋三(さいとう・ようぞう)

医療法人財団神尾記念病院顧問。
1932年東京生まれ。58年東京医科歯科大学医学部卒業。同大学医学部大学院助手、講師、助教授を経て現職に。専門は耳鼻咽喉科学。花粉症研究の第一人者で、「スギ花粉症」をはじめ「カナムグラ花粉症」「バラ花粉症」の発見・命名者としても知られる。東京都花粉症対策検討委員会の会長を98年まで務め、2000年には日本花粉学会学術賞を受賞。
著書に『新編 花粉症の最新治療』(主婦と生活社)、『アレルギー 治療と予防の最前線』(有斐閣)、『花粉症の科学 話題のアレルギー病を探る』(化学同人)など。

 
イラスト/小湊好治 Top of the page

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