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コムジン診療所 ドライアイ 〜瞳に乾燥注意報〜
意外と気付かない目の乾き

ドライアイとは、目の表面を覆う涙が不足したり、その成分が変化し質が悪くなることによって、目の表面に障害が生じる状態をいいます。目の表面を覆っている涙の量は通常時で約7マイクロリットル(1マイクロリットル=1ミリリットルの1000分の1)。目薬1滴の7分の1ほどの量しかない、この小さな涙の海は、栄養や酸素を角膜に届けたり、細菌感染を防いだり、ゴミなどの異物や不要物を運び出すなど、さまざまな働きで目を守っていますが、直接外気にさらされるため、そのままではすぐに蒸発してしまいます。これを防ぐのがまばたき。私達が無意識に行っているまばたきが新しい涙の分泌を促し、それを目の表面全体に送り届け、不要物を古い涙とともに「涙点」という排水口から流し出す役割を果たしているのです。
ドライアイは、こうした涙の海のバランスが何らかの原因で乱れることで起きる目の病気です。放っておくと角膜が傷付き、炎症や視力低下を引き起こすこともあります。

では、涙の海のバランスを乱す原因とは何でしょうか? 
一つはまばたきの減少。人は普通1分間に20回程度まばたきをしますが、パソコンやテレビゲーム、自動車の運転など、細かい作業をしたり、何かを凝視している時には、その回数が4分の1、つまり5回程度にまで減ってしまうのです。当然その間は涙の分泌と供給量が減り、目が乾きやすくなります。
二つめは涙が蒸発しやすい環境。目の大きい人や就寝時に薄目が開く人もそうですが、特に深刻なのがエアコン。暖房、冷房を問わずエアコンの効いた部屋は湿度が低く、目を乾きやすくします。その風が直接顔に当たる場合はさらに深刻な状況といえるでしょう。
三つめは涙の量や質の低下を招く、ストレスや夜更かしの習慣。そのほか、加齢やコンタクトレンズの使用によって、また糖尿病、膠原病、シェーグレン症候群などの全身性の病気が原因でドライアイを引き起こすこともあります。

ドライアイの主な症状は、目の疲れと、目が重い、熱い、開けにくい、充血するなどの不快感。意外なことに自覚症状として目の乾きを訴える人は少なく、患者さんを対象にしたアンケートでも10%以下となっています。そのため潜在患者数が800万人といわれるわりには、自分がドライアイだと自覚している人は少ないのです。「もしかして…」と思った人は、さっそく下にある「セルフチェックテスト」を試してみて下さい。

セルフチェックテスト

TestT 自覚症状チェック
1.目が疲れやすい
2.白っぽい目やにが出る
3.目がショボショボ、ゴロゴロする
4.目が重たいと感じることが多い
5.目が乾いた感じがする
6.何となく目に不快感がある
<診断>チェック1つに付き1点


7.物がかすんで見える
8.目がかゆい
9.光をまぶしく感じやすい
10.わけもなく涙が出ることがある
11.目が痛む
12.目が赤くなりやすい

TestU 1分間のまばたきの数は?
ぼんやり景色などを眺めている時のまばたきの回数を家族や友達に数えてもらいます。壁紙の模様を凝視したり葉の数を数えたりしないこと。また、数えられていることも意識しないようにして下さい。30秒間の数を2倍にして1分間の回数を出します。
<診断>1分間に30回以下は0点、31〜40回は3点、41回以上は6点

TestV 目を開けていられる時間は?
TestUと同じ要領で家族や友達に協力をしてもらい、まばたきを我慢して目を開けていられる時間を計ります。
<診断>30秒以上は0点、20〜29秒は1点、11〜19秒は2点、 6〜10秒は3点、5秒以下は6点

<総合診断>
テストの合計点が
0点………ドライアイの心配はありません
1〜12点…ドライアイの可能性アリ。点数が高いほど、その可能性も高いといえます
13点以上…ドライアイと考えて、ほぼ間違いないでしょう

普段の生活に一工夫を

「セルフチェックテスト」の結果はいかがでしたか? ドライアイの可能性が高いようであれば眼科へ行き、詳しい検査を受けて、その症状や程度に合った治療を受けるのがベストですが、普段の生活に少し気を付けるだけでも症状を改善することは可能です。

自己対策としては、まず、まばたきの数を減らさないようにすること。現代社会では、パソコン操作や自動車の運転をしないというわけにはいきません。そこで、目を酷使しなければいけない時にはまばたきを意識的に増やし、30分間作業をしたら少しの間目を軽く閉じるなど定期的に目を休めるようにします。また、パソコンのモニターを低めの位置に設定し、見下ろすような角度で作業をすれば、目を開く面積が減り、涙の蒸発量を減らすことができます。モニターに表示される文字サイズを大きくしたり、明るさを調整して目の負担を減らすことも有効です。

エアコンの効いた部屋では、加湿器を使ったり、濡れタオルを干すなどして保湿に気を配ること。オフィスなどでそうした対応が難しければ、湿らせたスポンジの付いたドライアイ用保護メガネを利用してもいいでしょう。温かいおしぼりをまぶたに当てるのも効果があります。
さらに、夜更かしを控えて睡眠時間を十分に取る、テレビゲームで遊ぶ時間を短縮する、リラックスできる時間を作る、コンタクトレンズの装用時間をなるべく短くするといったことも心がけるようにして下さい。

それでも目が乾く、涙の分泌が足りないような場合は、目薬でケアします。市販の目薬でも構いまいませんが、ドライアイの人は頻繁に目薬を使うことになるので、刺激物や防腐剤が入っていないものを選びましょう。これは防腐剤や刺激物により角膜を逆に傷付けてしまうことがあるためです。乾きの強い人は、保湿力を高めたヒアルロン酸入りの目薬が有効です。これは眼科で処方してくれますが、一部市販されているものもあります。

これらのことをやってみてもなかなか症状が改善されない場合は、シェーグレン症候群などの全身疾患も考えられるので、一度眼科を受診して下さい。重篤なケースには、血清点眼の治療や、涙の排出口をふさぐ「涙点プラグ」という治療も行われています。また、コンタクトレンズを使用していて、午後になると充血する、ゴロゴロする、目が痛むなどの不調のある人が無理にコンタクトレンズを使用するのは危険です。必ずメガネを併用しましょう。

なお、現在ドライアイの症状がない人でも、日々目を酷使していることは否定できません。ここで挙げた生活上の工夫はドライアイの予防策としても大変有効です。目薬の点眼は目に疲れを感じた時など必要最小限に留めるべきですが、その他の生活上の工夫はできるところから、どんどん取り入れていきましょう。

監修者プロフィール
坪田 一男(つぼた・かずお)

慶應義塾大学医学部眼科教授、医学博士。
1955年東京生まれ。慶應義塾大学医学部を卒業後アメリカで医師免許を取得し、ハーバード大学で角膜の専門医となる。帰国後、国立栃木病院眼科医長、東京歯科大学眼科助教授、教授を経て、2004年4月より現職に。ドライアイ、角膜移植、近視矯正手術の研究では世界中に知られる日本を代表する眼科医。この春の新著に『目から始める不老の医学』(日本評論社)、『125歳まで元気に生きる10の決意』(宝島社)など。ホームページのアドレスは、http://www.tsubota.ne.jp/

 
イラスト/小湊好治 Top of the page

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