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コムジン診療所 外反母趾 〜合わない靴が足のトラブルを招く〜


足の親指はこうして曲がる

外反母趾は、簡単に言えば足の親指が外側に「く」の字に曲がってしまう症状です。親指の付け根の関節部が痛くなったり、赤く腫れたりしますが、初期段階のうちは、靴を脱げば痛みは解消されます。ただし、進行すると靴を履いていなくても痛みを感じるようになり、親指が第二指の下にもぐりこむような形になってしまいます。

外反母趾は圧倒的に女性に多くみられます。その理由は、男性に比べて女性は関節が柔らかくて、靭帯が伸びやすく、筋力が弱いためです。また外反母趾は、医学的な意味での遺伝的疾患ではありませんが、おばあさんもお母さんも自分も外反母趾だという女性は少なくありません。それは外反母趾になりやすい骨格的な特徴が受け継がれているからです。
足に合わない靴を履いて歩くことも外反母趾の要因となります。先細のハイヒールは足に合わない靴の典型。ヒールが高いと足が前に滑って足先が靴に押しつけられます。5cmヒールでは体重の25%、10cmのヒールでは体重の50%の力で足先が靴に押しつけられているのです。窮屈なハイヒールなど、足に合わない靴を長時間履き続けた結果、親指が締め付けられて痛みと変形を生じるわけです。
また、歩き方の癖も外反母趾など足のトラブルを招く原因です。歩き方のバランスが悪くなる最大の原因は、足に合わない靴を履いて歩くことです。つまり、足のトラブル解消の決め手は、靴にあると言ってもいいのです。

足には、5本指の付け根を結ぶラインの“横アーチ”と、親指からかかとまでを結ぶ内側アーチ(土踏まず)、小指の付け根からかかとを結ぶ外側アーチという2つの “縦アーチ”があり、このアーチが歩く時の衝撃を吸収し、姿勢をバランス良く保つ役割を果しています。靭帯や筋肉などがこのアーチを支えていますが、靭帯や筋肉が緩んでくると、これらのアーチに崩れが生じます。指の付け根が開いて横アーチがつぶれてしまうのが、中年以降の女性に多く見られる開張足。そして、縦アーチがつぶれてしまうのが偏平足です。外反母趾はほとんどの場合、開張足や偏平足を合併しています。この三者は“鶏と卵”のような関係で、外反母趾が開張足や偏平足の原因となり、開張足や偏平足が外反母趾を悪化させます。足の筋肉が弱って、縦横のアーチが崩れてしまうことが外反母趾の要因でもあるのです。


15度以上は外反母趾の可能性あり

外反母趾かどうかは、親指の曲がった角度「外反母趾角」で決まります。本来はX線写真を撮影し計測します。外反母趾角は5〜8度が正常、15度以上は外反母趾の可能性があります。15度〜20度までは軽症、20度〜40度は中程度、40度以上になると重症とされています。自分でチェックする時は、紙の上に立ってイラストのように定規を当てて2本の線を引き、その角度を測ると良いでしょう。このように外反角度を計った場合は、12度を超えると外反母趾の可能性があるとされています。

外反母趾の予防には足にあった靴選びが欠かせません。サイズが合っているか、かかとが大き過ぎないか、土踏まずが合っているか、底が硬すぎないかなどをポイントに、足に良い靴を選びましょう。先細のハイヒールを履きたい場合は、足が前にすべらないこと、立った時も指先にゆとりがあって指が動くことなどをポイントに選ぶと良いでしょう。サイズの表示が同じでも、メーカーによって微妙に大きさが違うこともありますから、自分のサイズだけでなく、前後のサイズも試すことをお勧めします。また、本来ハイヒールやミュールは、長時間履くための靴ではありません。TPOに応じて靴を履き替えるなど、ハイヒールを履く時間を少しでも短くすることも足のトラブルを防ぐコツです。

 
外反母趾の角度(X線写真で計測する場合)
 
外反母趾のセルフチェックの仕方

もし外反母趾が心配になったら整形外科医に相談しましょう。まず、本当に外反母趾なのかを診断するところから始まり、保存療法として足の手入れや靴選びの指導、足底板や治療靴の作製などを行います。これらの保存療法を行っても痛みがある、変形が強くて普通の靴を履けないといった場合は手術をすることになります。
実は、外反母趾になって一定の角度以上に親指が曲がってしまうと、窮屈なハイヒールなどを履かなくても、歩いているだけで外反は自然に進行してしまいます。少し足が痛くても、大丈夫だろうと思って医者に行かず手遅れになる人も少なくありません。初期の段階で整形外科医にかかり、適切な判断、経過観察をしてもらうことも外反母趾の予防・治療には重要です。

外反母趾の運動療法「ホーマン体操」
床に足を投げ出して座り、幅の広いゴムバンドを両足の親指にかけます。ゴムの大きさは、指を輪の中に入れたときに間が2〜3cm程度になるくらいが適当です。踵を合わせ、そこを支点にして足先を外側に開きます。その位置で5〜10秒保ち、足を戻してゴムバンドを緩めます。これを1クール30回、1日3クール行います。新聞やテレビを見ながらできるのでおすすめです。

 

 

監修者プロフィール
内田 俊彦(うちだ・としひこ)

渡辺整形外科院長
NPO法人オーソティックス ソサエティー理事長(http://www.orthotics-society.or.jp
1977年昭和大学医学部卒業後、同大学藤が丘病院整形外科に入局。1986年より1年間、神奈川県こども医療センターに国内留学。足のアーチをサポートし、歩行バランスを改善する足底挿板療法「DSIS療法(ダイナミック シュー インソール システム)」の基本理論を構築し、大学に復帰後、リハビリテーション部と共同で「DSIS療法」を確立。2002年、渡辺整形外科院長に。著書に『「外反母趾」は自分で治せる』(マキノ出版)。



どこでもできる簡単ストレッチ
第5回 「腰」

オフィスや家庭で気軽に行えるストレッチを紹介します。第5回は「腰」。腰は上半身の様々な動きを支える要です。負担がかかりやすく、しかもデリケートな部分なので丁寧にストレッチして腰部の筋肉の疲労をほぐしましょう。

腰を回す 椅子を使って腰を回す 上体をかがめて腰を伸ばす

▲ 両足を肩幅程度に開き、背筋を伸ばして背、腰の力を抜き、ゆったりとしたペースで床と水平に円を描くように腰を回す。横に押し出した時は、体側と腰のストレッチを意識する。逆方向も同じように回す。

 

▲ 椅子に座り、両足を床につけたままで腰を回し、両手で椅子の背もたれをつかむ。肩や肘の力は抜く。肩や胸が一緒に伸びるのを意識する。仕事中など、気がついた時にこまめにストレッチを。

 

▲ 握りこぶしが2つ入る程度に両足を開き、肩の力を抜いてリラックス。背中を丸めて上体をかがめていく。膝を軽く曲げたままで上体を前に倒し、頭を両膝の間に入れる。背中から腰部をよく伸ばす。

 

ストレッチ監修/萱沼文子

 
 
イラスト/小湊好治 Top of the page

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