一覧に戻る
COMZINE BACK NUMBER
コムジン診療所 ひざの痛み 〜その痛みは変形性ひざ関節症?〜


変形性ひざ関節症とは

「ひざ関節」はひざの上にある「大腿骨」(太ももの骨)とひざの下にある「脛骨」(すねの骨)が接する部分をいい、更に大腿骨の前面には「膝蓋骨」(ひざのお皿)、脛骨の外側には「腓骨」があります。大腿骨と脛骨が接する断端は、硬い骨同士が直接ぶつからないよう「関節軟骨」という滑らかで弾力のある硬組織に覆われています。この関節軟骨が、ひざ関節に過度な負担がかけられたために、だんだんとすり減って、骨や関節が変形していく病気が「変形性ひざ関節症」です。

「変形性ひざ関節症」という病名は、病状が進むにしたがって、ひざの骨や関節が変形することからつけられたものですが、最初は関節軟骨の目に見えない程の小さな傷から始まり、何年もかけて徐々に進行します。

<前期>
関節軟骨が劣化し始め、衝撃吸収力が低下する。歩いた時や体重をかけた時、椅子に腰かける時や正座する時、あるいは立ち上がる時、階段を昇り降りする時に痛みが起こる。しかし、痛みは時々しか起こらず、安静にしていると軽減するので、放っておくことも多い。
<初期>
関節に更に外力がかかると、関節軟骨内部のコラーゲン繊維の骨組みが徐々に壊され、少しずつ関節軟骨がすり減っていく。階段の昇り降りや椅子に座ったり立ち上がろうとする時など、特定の動作に対して頻繁に痛みが起こるようになる。急にひざに水がたまる頻度も多くなり、強い痛みを伴うこともある。
<進行期>
普通に歩くだけでも痛み、安静にしてもなかなか痛みがおさまらないため、日常生活に支障を感じるようになる。ひざをひねっただけでも激痛を感じたり、痛みのためにスポーツ活動が難しくなることもある。階段で手すりを使ったり、歩く時に杖を必要とする人もおり、O脚などひざの変形も目立ち始める。
<末期>
関節軟骨が完全にすり減って、関節の隙間がほとんどなくなり、軟骨下骨が露出した状態。手すりや杖なしで歩くことが難しく、外出にも不便を感じるようになる。活動レベルが低くなるため、ぎくっとするような激しい痛みは少なくなるが、鈍い痛みを持続して感じる。骨の変形もますます目立つようになる。

  ひざの関節の仕組み
     

体重増加や筋力の低下は要注意

変形性ひざ関節症の原因については、まだはっきり解明されていませんが、さまざまな悪化要因が考えられます。次のような人は変形性ひざ関節症になりやすく、進行・悪化しやすい傾向があります。

●体重が重い人
●スポーツや肉体労働でひざを酷使した人
●O脚やX脚の人
●背骨や骨盤、股関節、足関節などが変形している人
●太ももの筋力(大腿四頭筋力)が低下している人
●半月板やじん帯の損傷などの外傷や、慢性関節リウマチ、痛風、偽痛風などの関節炎で、関節軟骨が傷んだ人

その他にも、体質的な軟骨の代謝異常があると、発症しやすくなったり、悪化しやすくなります。また、ごくまれに、遺伝子の影響で起こる家系性の変形性関節症や、先天性要因によって脊椎や多数の関節が変形する疾患もあります。


治療に効果的な運動療法

一度傷んだ関節軟骨は元に戻りませんが、この疾患を理解し、正しく付き合っていけば、進行を最小限におさえて、痛みや腫れなどの症状を軽くすることができます。不自由なく普通に生活できる、つまり“ほとんど治った”と言える状態にすることも不可能ではありません。
補助療法として、痛みや炎症を抑えるために薬物療法や関節注射(ひざにたまった水を抜いたり、薬剤を注入したりする)、物理療法(超音波やレーザーなど)を行うこともありますが、変形性ひざ関節症の治療の基本は、運動療法。太ももの筋力を鍛えるトレーニングを行ったり、ウォーキングやストレッチなどの運動を生活に取り入れて、ひざを使いながら治していきます。ひざの痛みを解消するには、とくに太もものトレーニング(大腿四頭筋訓練)が有効です。太ももの筋力がつくと、ひざの動きを制御できるようになり、関節軟骨に傷がつくのを防げます。更に、変形性ひざ関節症の悪化を防ぎ、確実にひざの痛みを軽減することができます。また、運動療法によって、ひざの関節を適度に動かしていると関節軟骨に栄養が行き渡って、ある程度の傷は自然治癒力で治ってしまうことも。ただし、効果が現れるまで2週間程度の期間が必要なので、気長にトレーニングを続けることが大切です。


 

監修者プロフィール
星川 吉光(ほしかわ・よしみつ)

1947年東京都生まれ。東京大学医学部卒業後、同大学整形外科医員。1977年ニュージーランド・オークランド大学留学後、東京大学医学部整形外科助手。1984年都立台東病院スポーツ整形外科医長、1993年都立府中病院整形外科部長を経て、現職。日本整形外科学会専門医、日本関節鏡学会理事、日本整形外科スポーツ医学会評議員、日本体育協会認定スポーツドクターとして活躍中。著書に『専門医が治す!ひざの痛み』(高橋書店)など



どこでもできる簡単ストレッチ
第8回 「脚」

「老化は脚から」とよく言われます。日常生活で“太ももを高く上げる”、“ひざを深く曲げる”といった動作をすることは少ないので、意識的にストレッチをしないと大腿部やひざのまわりの筋力はどんどん衰えてしまうのです。日頃からこまめにストレッチをして筋力の衰えを防ぎましょう。

ももの前を伸ばす ふくらはぎを伸ばす ももの裏側を伸ばす

▲ 机などの横に、背筋を伸ばして立つ。左手で体を支えながら、右手で右足先をつかんでひざを曲げる。そのまま右のかかとをお尻につけるようにして引き寄せる。体がぐらついたり、腰が反らないように注意。反対の脚も同じように。

 

▲ 柱や壁など固定したものにつかまって、前後に大きく脚を広げる。かかとは床に付けて、ひざをしっかり伸ばす。体重を前脚に乗せながら、後ろ脚のふくらはぎを伸ばしていく。両手で柱や壁を押すような感じで。反対の脚も同じように。

 

▲ 椅子や階段などに片脚を乗せる。息を吐きながら、胸と太ももを近づけるようにして、ゆっくりと上体を倒す。ひと呼吸おいたら、つま先を上に向けて更に上体を倒していく。太ももの裏側からふくらはぎまで気持ちよく伸ばす。反対も同様に。

 

ストレッチ監修/萱沼文子

 
 
イラスト/小湊好治 Top of the page

月刊誌スタイルで楽しめる『COMZINE』は、暮らしを支える身近なITや、人生を豊かにするヒントが詰まっています。

Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2003-2015

[サイトご利用条件]  [NTTコムウェアのサイトへ]