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コムジン診療所 老眼 〜トレーニングで予防できる〜


オートフォーカス機能の衰え

眼には、どんな距離にも瞬時にピントを合わせることのできる、カメラのオートフォーカスのような機能があります。といっても、どんなに若く、近視や乱視、遠視などがなく、眼鏡なしで遠くまで良く見える「良い眼」(正視)であっても、目の前1cmのところにピントを合わせることはできません。が、小学生なら数cm、20歳の青年なら10cm近くのものまではっきりと見ることができます。このように、眼からピントを合わせることのできる一番近い点までの距離を近点距離といいます。正視の場合、近点距離から向こう側はどこでもピントが合わせられますが、こちら側には合わせられません。この近点距離は、20代で10cm前後、30代で15cm前後、40代では20〜50cmと、10代から少しずつ確実に長くなっているのですが、ほとんどの人が、新聞や本を読むとき、30〜40cm離す習慣を持っているため、そこまで近点距離が遠ざかる中年になって初めて気付くことになります。つまり「それまで読んでいた位置から離さないと、新聞や本が読めない状態」が老眼なのです。


ピント合わせのメカニズム

眼のピント合わせは水晶体と毛様体、そしてチン氏帯と呼ばれる組織の共同作業によって行われます。
まず、眼球の前方に角膜(黒眼の部分)がありレンズの役目をしています。角膜の後ろには虹彩(茶色の輪の部分)があります。虹彩は、中央に瞳孔が開いており、眼球内に入ってくる光の量を加減する、いわばカメラの「絞り」の役目を果たしています。その奥にあるもう一つのレンズが水晶体で、ピントの微調整をします。そして、水晶体の周囲を毛様体と呼ばれる組織が取り囲み、クモの糸より細くて強いチン氏帯というヒモ状の組織が水晶体を吊って支えています。

 

 
水晶体は、形を変えられる凸レンズで、厚くなると近くに、薄くなると遠くにピントが合います。この変化をコントロールしているのが、毛様筋という毛様体の中にある筋肉です。遠くを見る時には、毛様筋が伸びてチン氏帯が緊張し、放射状に引っ張られた水晶体は薄くなります。一方、近くのものを見るときには、毛様筋が縮んでチン氏帯が緩み、水晶体はその分だけ厚みを増すため、近くにピントを合わせることができます。
このように、毛様筋と水晶体の共同作業で、ピントをいろいろな距離に合わせることを調節といいます。そして毛様筋が「もうこれ以上縮めない」という限界に達した時、水晶体は最大限厚くなり、最も眼に近い場所にピントが合います。その場所を調節近点といい、目からそこまでの距離が近点距離という訳です。老眼とは、調節近点が年齢と共に遠ざかり、今まで読んでいた距離では活字がぼけてしまうことで「レンズが年齢と共に厚くなれなくなる」ということを意味しています。


老眼を予防・改善するトレーニング

老眼の原因は、加齢による「毛様筋の衰え」と年齢と共に固く大きくなる「水晶体の弾性低下」だと考えられます。ですから、これらを意識的に動かして、いろいろな距離にピントを合わせる「調節訓練」を行えば、ある程度の予防・改善が期待できます。
老眼の症状を自覚したら、まずはトレーニングを試してみましょう。それは足腰の衰えを感じた人が意識的に体を動かす努力をするのと同じことです。毛様筋は、手足の筋肉と違って、自分の意志で直接動かすことができない筋肉ですが、遠くや近くを見ることで、間接的にではありますが、意識的に動かすことができます。その結果、水晶体も自分の意志で動かせるということになります。

このトレーニングの目的は、毛様筋と水晶体を最大限に動かし、調節機能を鍛えることにあります。もちろん普段の生活でも近くや遠くを見ているので、毛様筋や水晶体は動いているはずですが、全身の筋力や柔軟性と同じで、日常生活をしているだけでは衰えてしまいます。その能力をめいっぱい働かせるトレーニングをすることによって、初めて衰えを予防・改善できるのです。ただし、トレーニングの効果はすぐには出ません。最低2ヶ月は続けてみてください。


 

監修者プロフィール
福与貴秀(ふくよ・たかひで)

1952年長野県生まれ。79年東北大学医学部卒業。86年東北大学付属病院眼科講師。88年より都立駒込病院眼科勤務。同病院眼科医長を経て、現在福与眼科医院(東京都北区田端)院長。著書に『老眼、白内障と緑内障』(法研)、『老眼 治らないとあきらめていませんか?』(メタモル出版)がある。



どこでもできる簡単ストレッチ
第10回 「手首」

頻繁に動かすため、意外と疲労がたまっている手や手首は、休ませるのではなく、適度に動かすことで疲労を取り除くのがお勧めです。いつでもどこでもストレッチできる部位なので、日常生活の中で、ほぐしたり伸ばしたりする習慣をつけましょう。

力を抜いて手首を振る 両手を組んで手首を回す 手首と前腕を伸ばす

▲ まず、肩、肘、手首の力を抜き、肩に腕の重みを感じるくらいにリラックス。手首を柔らかくして、上下、左右に振ったり、回したりしてほぐす。腕の重みを軽く振り切るようにブラブラと。小さく振ったり、ゆったり大きく振ったり、変化をつけながら繰り返す。全身のリラクゼーションも兼ねて。

 

▲ 両手を胸の前で組み、指や手首の力を抜く。両肘を寄せるようにして、胸の前で8の字を描くように手首を回す。組んだ手首を折り曲げたり伸ばしたりしながら、手首の内側と外側を交互に伸ばすようにストレッチ。力を抜いてゆっくり柔らかく回し、前腕全体をほぐすように伸ばす。

 

▲ 伸ばす方の手(左手)の甲を包むように、もう一方の手(右手)を重ねる。右手に徐々に力を加え、左手の甲を押す。手首、前腕の外側に心地良い刺激を感じながら伸ばす。次に、右手で左の手の平を押し、手首、前腕の内側も伸ばす。手首を曲げすぎないように注意。反対の手も同様に。

 

ストレッチ監修/萱沼文子

 
 
イラスト/小湊好治 Top of the page

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