国際レスキューシステム研究機構は、去る6月24日に「レスキュー・デモンストレーション」を開催し、プロジェクトスタート以来、約半年間の研究成果の展示や実演を行った。
このように積極的に情報公開する理由を、松野先生はこう説明する。
「レスキューというのは、研究者や自治体、消防といった関係者だけで考えていてはダメ。よく産学官の連携と言いますが、これに民(国民、市民、住民)を加えた“産学官民”の活動にしないといけない」
「レスキューは災害現場のシミュレーションから始まります。火災が3時間後にどこまで延焼するか、そこに災害弱者はいるのか、どこにどんなロボットを投入すればいいのか。建物の構造によって火のつき方、回り方が違うので、正確なシミュレーションを行うには、その建物が何でできているか、耐火/非耐火、築年数などのデータが必要になります。しかし、これらは極めて個人的な固定資産データです。万一の災害に備えるために、個人データをオープンにしてもらえるか?」。そんな点からも、レスキューに対する市民の理解が欠かせないというわけだ。
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東京大学、理化学研究所が開発している「レスキュー用データキャリアによる被災者探索システム」。あらかじめ建物の各階・各所に、呼びかけ・録音機能付きセンサーを設置しておく。通常は電源オフの状態だが、震災時には飛行船を飛ばし、このセンサーの電源を入れ、同時に「誰かいますか?」と呼びかける。センサーの近くで埋もれている人の「助けてくれ」という声を録音し、情報を収集。センサーの場所と録音された声で被災者の位置を特定する。インフラを整え、災害に強いビルを造ろうという試みだ。
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さらに「災害に強い文化を創りたい。災害に対して知らんぷりしたり、脅えて遠ざけるのではなく、レスキューを自分自身のことと考えて欲しいんです。そういった姿勢が、最終的には自分自身を守ることにつながる」と松野先生。
レスキューロボット開発に携わる研究者達の夢は、2050年にロボットの国際救助隊を作ること。目標は、あの「サンダーバード」だ。
世界有数の地震国であり、ロボット先進国である日本が、レスキューロボットを率いて世界各地に被災者を助けに行く――。この大いなる夢を応援したい。
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