A-CATSの導入によって、配送の現場では何がどう変わったのだろう。この点について山本さんは、「実はA-CATSは、開発した当社よりも運送会社、特にドライバーにとってメリットが多いシステムなのです」と語る。
実際のドライバーのオペレーションはこうだ。
ドライバーは毎朝配送に出発する際、記録用のメモリーカードを車載端末に差し込む。そして、端末の出発ボタンを押す。その後の特別な作業は……実は何もない。基本的にデータ収集は全て自動で行われるのだ。
例えば荷室のドアには開閉センサーが設置されており、ドアを開けたことで着店したとみなされ、その時間や位置情報が自動的にカードに記録される。再びドアを閉めれば、今度は出発したと見なされ、その時間が記録される。もちろん、荷室内の温度変化は常時記録されている。
配送センターに戻ってきたドライバーの最後の仕事は、端末のセンター帰着ボタンを押し、カードを抜き取って配送管理者に渡すこと。これで全てが終了する。
店着以外で荷室のドアを開ける場合、そして高速道路を使用する場合のみ、ドライバーが任意で端末のボタンを押す必要があるが、共に滅多にないケース。全てはオペレーションフリーで進行する。
従来の運行管理システムでは、ドライバーが店着時間、出発時間をその都度、日報として手書きで記録しなければならなかった。温度管理記録についても、店着時、出発時にドライバー自身が温度計の数値を確認して記録する必要があった。
これでは、ただでさえ荷下ろしで忙しいドライバーの負担は増すばかり。実際、温度管理ひとつとっても、個々のドライバーの作業レベルによるバラツキが避けられなかったという。
後に、店に着いたら店着ボタンを押し、荷下ろしボタンを押すという簡易的な運行管理システムが登場したが、これとてドライバーに余計なオペレーションを強いるという点では変わりがなかった。
「データ収集をマンパワーで行うには限界があるんです。A-CATSの狙いは、ドライバーの負担を極限まで減らすこと。そのためには、荷下ろし以外のオペレーションを一切意識させないシステムを構築する必要がありました」。
ドライバーの負担が軽減されるだけでなく、A-CATSには、導入した運送会社そのものにも大きなメリットがある。
第一に、A-CATSに搭載された音声警告機能による事故防止効果。あらかじめ会社が車両のスピードを設定しておけば、ドライバーが速度をオーバーした場合、音声による警告が発せられるのだ。実際、ある運送会社では速度オーバーが徐々に減り、事故発生率が大幅に減少したという。事故が減れば車両の修繕費、保険料、賠償費などのコストを抑えることができるし、安全運転が徹底されれば、車両の燃費は向上し、燃料費が節約できる。
第二のメリットは、ドライバーのレベル向上を図れること。データを元に安全運転評価表が作られるので、例えば速度5kmオーバー以上でトータル1分以上走ると大幅減点といったように、客観的なドライバーの評価が可能になる。評価の公開はドライバー間の競争意識を刺激し、全体のレベル向上につながる。
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平成14年がA-CATS導入前、平成15年が導入後。加害、被害件数ともに減少しており、特に加害件数は対昨年比1/6(6件から1件)と激減している。 |
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