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IT大捜査線
特命捜査第020号 肌分析機器で将来できるシミやシワを事前に発見?! 特命捜査第020号 肌分析機器で将来できるシミやシワを事前に発見?!
 
 
  内装デザインにもこだわった未来派カウンター
 
 




若い女性客で賑わう伊勢丹新宿店のヘレナ ルビンスタイン ビューティ ギャラリー。
63平方メートルの広々とした売り場は、ヘレナ ルビンスタインのなかでも世界最大級。他には、大阪のうめだ阪急にも同じコンセプトの売り場がある。
未来的なデザインのソファが並ぶカウンセリングスペース。百貨店のカウンターで、こうした斬新なデザインのソファを見ることは珍しい。

化粧品とIT。そこに接点があるとしたら、商品管理や顧客管理のシステム、店頭の美容部員に携帯端末を持たせる情報共有化戦略、独自のハードやソフトによる肌分析機器などの分野だろう。2002年には資生堂が約7,000人の美容部員にiモード携帯電話を持たせ、カネボウが同じく約7,000人の美容部員にPDA(携帯情報端末)を持たせる“美容部員のIT武装”が話題となったが、先輩の男性捜査員には難しいテーマだからこその任務。今回は新人らしく、ユーザーの立場から(少し実益も兼ねて)、最新の肌分析機器を自ら体験することで、カウンセリングとITを軸に取材することにした。

夕方になると会社帰りの若い女性客で大混雑する伊勢丹新宿店1階の化粧品売り場。化粧品では日本随一といわれるこの売り場の一角に、ヘレナ ルビンスタインのカウンター「ヘレナ ルビンスタイン ビューティ ギャラリー」がある。1902(明治35)年にオーストラリアで誕生し、世界各国で販売されているブランドだが、現在、世界で最も大きいのがこの伊勢丹新宿店の売り場だ。アートとサイエンスの融合をコンセプトにした近未来的なデザインは、売り場の中でも異彩を放っている。

肌分析機器といえば、デジタルカメラで顔を撮影して解析、シミュレーションするタイプや、センサーやカメラでシミやシワを細かく測定するタイプなど、化粧品メーカーがそれぞれ独自のシステムを開発しているが、ヘレナ ルビンスタインの場合はどんなシステムなのだろうか? 案内されたのは「スキンケア カプセル」という部屋。ここで熟練フェイシャル スペシャリストが最新鋭の肌分析機器を用いて科学的に肌を診断し、その結果に基づいてトリートメントをしてくれるという。

 
     
  肌診断とトリートメントを行なうスキンケア カプセルの内部。適度な狭さで、外の喧噪を忘れてゆったり寛げる不思議な空間。
 
 

  スキンケアカプセルで肌データをインプット
 
最初に行うのが肌の水分チェック。今のように肌分析機器でキメやシミなどを測定することが可能となる前から、こうしたモイスチャーチェッカーは多くのブランドで早くから使われていた。
肌の深部まで見えるマイクロスコープ。目の前のモニターに表示されたマイクロスコープの映像を見ながら、肌の状態について詳しい説明を受ける。 “シミの予備軍“も確認できる。

スキン ケアカプセルの中は白一色で統一され、リクライニングソファに座ると宇宙船のコックピットにいるような気分。ちなみに、ヘレナ ルビンスタインでは、トリートメント(エステ)の予約をした人のみ、このスキンケア カプセルの中で肌分析をしてもらえる。
目の前には、肌分析結果を表示するモニターがセットされた。まず初期画面で名前と生年月日を入力。生年月日を明示することに抵抗を覚える人もいるかもしれないが、年代ごと(10歳刻み)の平均肌水分値と比較するためにも入力が必要とのこと。

最初は肌の油分のチェックからスタート。オイルパッドを肌にあてて油分を吸収させ、それをマイクロスコープでモニターに映し出す。油分はわかりやすく赤い色で表示される。乾燥しがちなUゾーンと、油分が多いTゾーン、2つの画像がモニターに並ぶ。「ここで大切なのは、2つのゾーンの油分に差があること。またそれがどの位なのかを認識してもらうことなので、2つの画像を見ながらアドバイスします」と、フェイシャル スペシャリストの工藤明美さん。マイクロスコープでモニターに映し出すことによって、すでにUゾーンとTゾーンの油分レベルのデータはコンピューターにインプットされた。

次に肌の水分量を測定。使用するのはモイスチャーチェッカーという測定器で、これはかなり一般的になっているものだ。水分量がパーセンテージで表示されるので、その数値をキーボードで入力する。次に毛穴のチェック。これもマイクロスコープを当てて拡大映像をモニターに映し出してくれる。工藤さんが、拡大映像の一点をクリックすると、そこに黒い影が付いた。毛穴が開いている箇所だという。「普通にマイクロスコープの映像を見てもらうだけでも、おわかり頂けると思いますが、毛穴に影を付けて表示することで、お客様により、わかりやすい形で説明しています」。

さらに倍率の高いマイクロスコープを使って今度は肌の深部を見ていく。今見えているシミだけでなく、将来的に出てくるであろうシミも見えるのだという。「茶色っぽく見えているのが肌表面に見えているシミ、赤紫や青紫っぽい色でまだらに見えているのが“シミの予備軍”です。ホワイトニング製品はシミが出来てしまってから使うという方が多いのですが、肌のどの部分に“シミの予備軍”があって、将来的にどこにシミが出てきてしまうかが事前にわかっていれば、より的確なピンポイントケア、集中ケアができます」。最後に肌のキメのチェック。再びマイクロスコープで肌を映し出す。モニターの右下には、肌の高低差が波線となって表示されている。波線の高低差が激しいと、それだけ肌に凸凹があるわけだが、高低差がなさすぎる部分は、キメが浅くなっているということで、シワなどの原因にもなるのだそう。

 
 
   

 
  肌の状態を視覚的に伝えるためのツール
 
油分、水分、毛穴、シミ、キメのデータがインプットされ、分析結果が十角形のグラフとなって表示される。このグラフを見ながら、この後に受けるトリートメントコースを選ぶ。データの結果は保存されるので、次の来店時にまた診断を受ければ、肌がどのくらい改善したのかといったこともわかる。
  フェイシャル スペシャリストの工藤明美さん。マウスとキーボード、マイクロスコープを操り、細かな解説を加えながら肌分析をしてくれる。

ここまで、油分、水分→毛穴、シミ→キメの順でチェックしてきたデータは、年代層の平均値などを元に分析され、十角形のグラフとなってモニターに表示される。 ちなみに項目は頂点から時計回りに、水分、輝き、透明度、表情ジワ、ハリ、キメ、シワ、たるみ、油分、毛穴。グラフが外に大きいほど最適の状態で、内側に入り込んでいる項目はお手入れ不足という診断だ。モニターに表示された結果は…。水分、輝き、透明度のあたりは、大きく外に張り出しているが、表情ジワ、ハリ、キメあたりが内側に食い込んでいた。水分量は最適だが、肌表面をシールで覆うような役割を果たす油分が足りないために、水分が蒸発しやすく、シワなどにもつながりやすい、ということが読み取れるのだそう。この結果を受けて、6種類あるトリートメントメニューの中から最適なコースを選ぶというわけだ。

こうした肌診断機器が導入される以前は、いわゆる「カウンセリングシート」に来店客自身が記入する自己申告をベースにした肌診断、もしくは美容部員が直接肌に触れて判断するといった肌診断が一般的だった。実は、何千人もの肌を触ってきた美容部員の触感による診断も極めて精度が高いそうだが、「やはりコンピューター分析ならではの信憑性と客観性、そして分析結果をビジュアルで理解していただける点が、こうした分析機器導入の大きなメリットだと思います。自分の肌の状態を的確にはっきりと認識されている方は、案外少ないですから」。確かに、グラフで見れば一目瞭然。ケアすべき点が明確に見えてくる。

この肌分析機器のソフトはヘレナ ルビンスタインが独自に開発したもので、現在も進化の途中。実際に機器を使ってカウンセリングやトリートメントを行っている工藤さんいわく、「今のところソフトにインプットされているデータは10歳ごとの年代別平均値になっていますが、これがもっと細分化されれば、よりパーソナルな結果を提示することができるのではないでしょうか。それと、お客様の中には、シミが出来るメカニズムを知りたいと言われる方もいるので、肌の組織まで映像化してお見せすることができればいいなと思います」と、話していた。こうした現場の声を反映して、新バージョンの開発が進められているという。

 
 

  タッチパネルでヴァーチャルカウンセリング
 
タッチパネル式のモニターを設置した「スキンケア ステーション」。周りには自由に試せるサンプルがずらり。

ヘレナ ルビンスタイン ビューティ ギャラリーには、もうひとつ化粧品のカウンターには珍しいユニークなシステムがあるので紹介しよう。通常、百貨店の化粧品カウンターでは、美容部員と対面する形で座り、アドバイスを受けながら商品を選ぶことが多いが、なかには自分で自由に選んだり、試してみたいという人、美容部員さんと直接会話をするのが苦手だという人もいる。そういう来店客のために作られたのが「スキンケア ステーション」だ。

使い方は簡単で、タッチパネル式のモニターでバーチャルBA(ビューティ アドバイザー)、ヘレナちゃんのナビゲーションに従って質問に答えていくだけ。ゲーム感覚で自分の肌に合った製品を見つけられる。最終的に、自分の肌に合った製品がリストアップされ、その場でプリントアウトされる。隣に製品サンプルが並んでいるので、プリントアウトされたものを見ながら実際に製品を試してみることも可能というわけだ。

 

現在の化粧品業界では、最先端科学やバイオテクノロジーを駆使して次々に新しいスキンケア製品が開発されているが、そうした優れた製品も、まず自分の肌の実態を認識し、それに合わせて用いられてこそ、より良い効果を発揮する。日進月歩で進化を遂げるスキンケア製品の中から、自分の肌に合ったものを選び出すための手助けをしてくれるのが、こうした簡単便利なタッチパネル式のカウンセリングシステムであり、最新鋭の肌分析機器なのだ。

 
 
「スキンケア ステーション」のモニターでカウンセリングをしてくれるのは、バーチャルBAのヘレナちゃん。   「Tゾーンが崩れてきた」「鼻の頭の黒ずみが気になる」…など、ヘレナちゃんが投げかける質問にタッチパネルでどんどん答えていく。全ての質問に回答し終わると、ヘレナちゃんがマシンに乗り込んで出発。A、B、Cの3段階で肌診断をしてくれて、肌に合った製品が紹介される。かなりスピーディな展開だ。
 

取材協力:ヘレナ ルビンスタイン(http://www.helenarubinstein.jp

 
   

 
  追加調査
 
“秋田美人”を基準に肌診断?!

高解像度デジタルカメラで顔の側面を撮影し、画像データをコンピューターに取り込んで解析&シミュレーションする「BIS(ビューティ イメージング システム)」という肌診断システムを導入しているのがSK−Uだ。最新版の「BIS−PRO」では、キメ、シワ、毛穴、シミをノーマルライト撮影で映し出して分析するだけでなく、フラッシュライト撮影により、通常は目に見えない毛穴の汚れ「ポリフィン」や潜在的なシミまでも映し出す。更に汚れた毛穴の数やシミの総面積などを数値化することで、どの程度のお手入れが必要かを分かりやすく示してもらえる。
「デジタル画像をもとに測定する」という肌診断システムは化粧品業界初で、取り込んだ画像をシミュレーションできるのもBISの大きな特徴。現在の肌トラブルが改善した状態、悪化した状態を自分の顔でシミュレーションし、目指すべき肌の状態を具体的にイメージすることができるようになっている。
ちなみに、「BIS−PRO」システムの診断の基準となっているデータベースは、肌が美しいことで知られる秋田県の女性約380人(5歳〜65歳)の肌データなのだそう。“秋田美人”という言葉があるように、色白の女性が多いとされる秋田県。実際に秋田県の女性の肌は、年間紫外線量の多い他の地域と比べると、スキンダメージの程度が低いことが科学的に証明されているという。

 
 

  特命捜査第020号 調査報告:小林奈知捜査員 特命捜査第020号 調査報告
写真/海野惶世 イラスト/小湊好治 Top of the page

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