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インターネットからココロの世界へアプローチ
日本オンラインカウンセリング協会が提供する「無料相談室」のカウンセラー選択画面
日本オンラインカウンセリング協会が提供する「無料相談室」のカウンセラー選択画面。



疲れた心にメールが効く?

心のケアの必要性が叫ばれるようになって久しい現代社会。「カウンセリング」や「メンタルケア」という言葉はだいぶ耳になじんできたが、国内のサービス提供数はまだまだ少なく、実際にこれらを利用したことがある人はごくわずか。カウンセリング=特別なもの、と考える人もまだ多く、利用者にとっては敷居が高いのが実情だ。

こうした状況を改善し、いつでも誰でも、手軽に悩みや不安を相談できるとして期待されているのが「メールカウセリング」「オンラインカウンセリング」と呼ばれる新しいカウンセリング手法。これは、ホームページ上で相談を申し込むと、以後メールを使ってカウンセラーと1対1で相談できるもので、匿名性が高く、他人に悩みを打ち明ける気まずさを軽減できるほか、遠隔地に住む人や日中忙しくて時間が取れない人でも利用できるといった、従来のカウンセリングにはなかったメリットがある。また、近年深刻化しているひきこもりの若者にとって利用しやすいシステムであることもメールカウンセリングの特徴と言えるだろう。

今回の数字は、そうしたメールカウンセリングの利用状況を示す一つの例。日本オンラインカウンセリング協会がそのホームページの中で提供している「無料相談室」に寄せられた昨年1年間の総相談数だ。2001年10月のスタート以来、01年121件(実質3カ月)、02年855件と年々利用者は増えている。ちなみに、この「無料相談室」で相談に応えているのは、同協会が臨床心理士などの有資格者や研究者を対象に実施している「メールカウンセラー養成講座」の修了試験に合格したインターン・カウンセラー。そのため、相談が集中した場合はカウンセリングの質を保つことを優先して新規の相談受付をいったん停止するシステムになっている。実際、昨年は何度か受付停止期間が発生しており、相談の増加ぶりとともにメールカウンセリングの難しさをうかがい知ることができる。

メールカウンセリングの難しさとは何か? それは“非言語情報”が伝わらないことにある。
通常の対面式のカウンセリングでは、カウンセラーは相談者の言葉以外に、態度や表情、話し方、声のトーン、服装など、さまざまな点を観察し、その人の性格や人間性、生活環境などを分析するのだが、メールのやりとりだけではそれができない。代わりに文章、段落や改行の取り方、ハンドルネームなど、少ない情報を元に類推することになるが、それにはカウンセラーとしての豊富な経験が不可欠となる。また、文章だけのコミュニケーションでは誤解も生じやすい。そのため、相談者に読んでもらうための文章作成力や、送られてきたメールを正しく読み込む読解力といったメールカウンセリング専門の技術も必要になるなど、カウンセラー側には一定のスキルが求められるのだ。

こうした難しさを前にしても、多くの専門家がメールカウンセリングの必要性を説いているのは、やはり、そこに利用者のメリットが見えるからだろう。カウンセリングルームに出向かずに、いつでもどこからでも専門家に相談でき、また、自分の顔も姿も相手に知らせなくていいという安心感。口では言えないことでも文字でなら伝えやすいことがあるし、メールを書くことで自分の気持ちを整理することもできるなど、対面や電話のカウンセリングでは得られないものも多い。

メンタルケア後進国といわれる日本にとって、メールカウンセリングという新しい手法が確立されることの意味は大きい。まだ始まったばかりで乗り越えるべきハードルも多いメールカウンセリングだが、いずれそれらがクリアされ、多くの人に利用される日が来ることは間違いなさそうだ。

   

おすすめサイト
・日本オンラインカウンセリング協会(http://www.online-counseling.org/
・オンラインカウンセリングPeacemind(http://www.peacemind.com/

 
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