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「山あらしジレンマ」は、心理学では有名な用語だ。「山あらし」は、身体中ハリハリだらけのハリネズミ。この山あらしの夫婦(もしくは恋人)は、冬は寒いしお互いに恋しいので、身体を寄り添いたい。しかし寄り添えば「痛い!」。そこで離れる。するとまた恋しいし寒い。そこでまた寄りそう。また痛い。・…と壊れたテープのように延々と繰り返すって話だ。つまりは依存と自立の葛藤を表した言葉だ。勉強はしたくないが成績は一番になりたい。働きたくないがお金は欲しい。しかしそうは問屋が下ろさないのが世の中ってもんで、だから人間はジレンマに苦しんだりするわけだ。もちろん頭の回転スピードがネット社会並になっている諸兄なら気がつくはず。この山あらしは、お互いに針が刺さらない程度まで近づき、あとは暖房器具を用いればすむのだ。(あ、もちろん人間に置き換えて考えると…です)「強く抱き合いたい」という欲求は無理にしても、これならある程度の欲求をジレンマなくして満たすことが出来るわけだ。

「繋がりたい、繋がれたくない」このジレンマを見事に解決したIT技術が、いわゆる無線通信技術だ。この最たるものは携帯電話だ。電話を電話線から開放しながらも話すことが出来るという、山あらしさんもニコニコの技術でジレンマを解消してくれた。更にネットワークにも繋がりたいという欲求にも答えたのがiモードだ。しかも第2世代から第3世代へとまだまだ進化を続けている。そうなってくると、家の中でもオフィスでも配線だらけに繋がれている状態から脱したいと言うのは、当然の欲求だ。そこで台頭してきたのが無線LAN技術だ。これによってかなり物理的な接続からは解放される。(なんだか繋がりたいんだか、繋がれたくないんだか…) 携帯との大きな違いは通信速度。将来的にはこうした無線技術の境界線は曖昧になっていくのだろう。

ビジネスの世界では、もうすでに実用化されているものがたくさんある。
先ずはフレキシブルな組織変更に伴うオフィスのレイアウト変更に自由に対応できる社内無線LAN。オフィスのレイアウト変えというのは意外にあるもんだ。そのたびに配線設備をイチからやり直すのは、経費削減の折り、いかがなものかと言うところだ。そのままのレイアウトで我慢するか…という発想よりは、「攻め」のビジネス発想をするなら、もっと積極的に効率的なレイアウトに投資したいところだ。今からだったら、始めからこの無線LANにしてしまえば、今後組織変更しても、どんなレイアウトにも気軽に対応できるようになるってわけだ。お昼休みに社員食堂でランチを食べながらだって、仕事がサクサク出来てしまう。新時代のモーレツサラリーマンの誕生か?

ところがどっこい。新時代のモーレツサラリーマンは、この技術によって少なくとも通勤地獄からは解放されるのだ。この技術によって在宅勤務が可能になる職種が増えるだろう。もちろんこれまでも在宅勤務はあったが、設備的な課題も抱えていた。特にマンションなどの一定の制約がある家庭では、LAN構築には物理的接続の確保が難しい状況がある。家庭内無線LANにすれば、お年寄りの部屋で介護しながら仕事をしたり、子供の面倒を見ながら、台所に立ちながら、庭にいながらでも仕事をすることが出来るようになるのだ。(う、嬉しいのか?嬉しくないのか?)

さらに身近なところでは、家電の大型店舗でもすでに無線LANが使われている。店頭には並んでいないが裏の倉庫にある(かも知れない)商品を、簡単に無線LANを通じて照会することができる。店頭でできる遠隔倉庫内在庫確認システムだ。実際にこのシステムを導入している大手家電ディスカウントストアに行ってみたが、店員の対応はスマートだ。ドタバタと店内を走り回っている姿を全く見ることがないのだ。お客様は手持ちぶさたになって、ブラブラ店内を歩き回りながら待たされることがない。しかし、あの時間が店員に見咎められず(いや、そんなことはないのだけれど、気が小さいとそんな気がするのだ)、堂々と他の商品を冷やかせる重要な時間だったりもするのだが…。(これもジレンマか?) このシステムの導入によって接客時間が増加したらしいので、かなり無駄な時間を省くことができたといえるだろう。

週休二日制で話題になっている学校はどうだろうか? 最近は学校でもパソコンを教えたり、パソコンを使った授業をしたりするようになってきている。以前は視聴覚室(ちと古いか?)、今はパソコン教室や情報通信室がある。しかし、そうするとどうしてもそれを使った授業は場所が限定されてしまう。無線LANを導入すれば、校舎内だったらどこでも使えるようになる。何でもモバイル化しているのだから、勉強もどこでも出来る環境にするってことは、うん、いいことに違いない。「勉強はどこでも出来るものだ」と立派な先人はおっしゃった。これからは、「そうは言っても・・」といういいわけは通用しなくなるのだ。

これまで技術と言えば、より高次な欲求を実現させ満たしていくものであったが、これからはこうした相反する欲求のジレンマを解決して、共存させるものになっていくのかもしれない。女房に財布のヒモを握られるのは困るが、生活のお金管理はバッチリして欲しい…この相反する欲求を満たすことが出来る技術がやがて可能になるのだろうか。こうしてジレンマもどんどん高次になっていくに違いない。やはりジレンマとそれを解消していく技術も共存していくのか…。
ITウオッチャー 岩永 紀
 
 
見えない糸で繋がるあなたと私。やがて赤い糸の伝説は現実になるのか?・・・・たくさんのご投稿ありがとうございました。皆様とのIT談義が楽しみです。これからもどんどんご意見をお寄せ下さい。
 
新しいニーズの発掘のヒントを発見! (masakiti 40代メーカー商品開発 静岡県)
部下への話しのネタです。 (まさ 50代管理職 東京都)
ジレンマだらけです。 (なまけもの 20代 会社勤務 東京都)
人間のこころに大きな影響を与えるIT (りえぞん 40代 カウンセラー 愛知県) 
おもしろいですね。 (OLDーMOON 管理職)

新しいニーズの発掘のヒントを発見! (masakiti 40代メーカー商品開発 静岡県)

へーーーーーー・…とすごく勉強になります。思わぬ角度からのITの説明に、いつも感心させられます。おもしろいですねえ。ジレンマってのは、たくさん生活の中にありますよね。これまでお客様のニーズと言うと、次にどうしたら良いのかとドンドン先を探していた気がしましたが、これからはジレンマの共存と言う視点で物事を見るという方向があるなと思いました。メーカーに勤めていますが、お客様のニーズを追い掛けることばかりに躍起になっていて、こうした視点の転換と言うか、パラダイムシフトをしなければいけないんだなって勉強になりました。これからも期待しています。おもしろいためになる話をよろしくお願いします。

岩永 ジレンマを解決する新商品市場というのは、とてもたくさんありますね。masakitiさんの周りにはものぐさ君はいないのでしょうか?わがままで理不尽なことを連発するものぐさ君とお友達になるといいかもしれません。あまり真面目で頑張り屋さんで、さらに「いい人」だったりすると、今ある自分の環境に感謝してありがたく生活してしまうのでしょう。進歩は怠惰が母か??

部下への話しのネタです。 (まさ 50代管理職 東京都)

いつも会社のお昼休みに読んでいます。ここで読んだものを部下に話すことがよくあります。助かっています。これからもよろしくお願いします。おもしろい話しをどんどん掲載してください。

岩永 部下の方々との共通の話題になっているようで、何よりです。こうした情報は結構若い方々のほうが早かったり、詳しかったりしますからね。ドンドン情報スピードが加速的になっていますので、興味があるネタは常に情報チェックを怠らないで下さいね。

ジレンマだらけです。 (なまけもの 20代 会社勤務 東京都)

わたしゃ、ジレンマだらけです。「仕事したくないけどお金は欲しい」この部分におおきく共感しました。仕事したくないけど偉くなりたい。勉強したくないけど物知りになりたい。頑張りたくないけど尊敬されたい。修行したくないけど立派な人間になりたい。損したくないけどいい人に思われたい。掃除したくないけど少し机の上を何とかしたい(あ、急に現実的)。つきませんねええええ。誰か何とかしてくれないかな・・・・(藁藁)

岩永 masakitiさんに紹介したいくらいのニーズの塊ですな〜。もっともっと事細かにジレンマを掘り起こしていけば、商品開発担当者になれるかもしれません。(…いや、そんな甘くないか?)ネットリビング生活がもっともっと充実していけば、お風呂掃除はしたくないけどきれいなお風呂に入りたいとか、車の中を掃除したくないけどきれいにしておきたいなどは結構近未来に実現しますよね。そうしたら「なまけもの」さんは更に高度な欲求を出してくださいね。

人間のこころに大きな影響を与えるIT (りえぞん 40代 カウンセラー 愛知県) 

山あらしジレンマ・・・岩永さんよく御存知ですね。私はカウンセラーをやっているのでこうしたジレンマで悩む人をたくさん知っておりますが、なかなか大変です。技術で解決するなら何とかしてやって欲しいと思うこともたくさんあります。IT技術は介護や医療の現場でとても最近進歩しています。人間の心にも大きく影響するものですよね。医療現場や介護をサポートするためのIT技術知識だけではなく、こうしたITが人間に与える影響を示唆するこのコラムが勉強になりますし、とても考えさせられます。

岩永 コミュニケーションツール類の進歩によって、若い人達のコミュニケーションのあり方は大きく変わってきたと言われています。ガチャ切りやドタキャンなどもそれらのひとつと言われていますが、フレキシブルにスピーディに変化に対応する適合力は目覚しいものがあるかもしれません。昔の状態の視点から観察すると一見マイナス要因が目につきますが、視点を変えてプラス要因を見つけていきたいですね。

おもしろいですね。 (OLDーMOON 管理職)

勉強になりました。なかなかいいですねえ。IT技術って結構おもしろいですな。

岩永 今度はぜひOLD−MOONさんが感じたおもしろい点を詳しく聞かせてください。お待ちしております。
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