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 今も昔も人間の根源的クエスチョンといえば、「私は誰?」。アイデンティティ喪失の時代といわれているが、インドに自分探しの旅に出かけるのは、今でも、苦悩する若者の選択肢の一つなんだろうか。自分探しの旅の場合は、その「自分」というものがかなり一人よがりだったりするが、本来アイデンティティというのは、自他共に認めるものでなければならない。自己認識と他者認識が一致してはじめて、そこに確立された自己アイデンティティが成立するものだといわれている。

 この「私は誰?」を自他共に認めてもらうには、自分が自分であることを証明するツールが必要だ。外国へ行ったらパスポートは欠かせない。銀行へ行ったらハンコが頼りだ。最近では通帳を解約するのに、保険証やら免許証などが必要となる。アメリカではIDカードが必需品だ。 でもそれを無くしたらどうなるのだろうか? あるいは、保険に入っていなかったり、免許をもっていなかったりしたら、誰が、何が、私を「私」だと証明してくれるのだろうか?

 警察が、ある人間をその人間であると断定するのに最も知られている識別方法が指紋である。しかし、最近では指紋よりも正確だということで、声紋による識別が用いられるようになっている。「音声識別」である。すでに音声識別システムの登場は、多くの誘拐事件や脅迫事件などの犯人特定に貢献している。ますます精度が高くなれば、こうした事件の検挙率が上がり、同時に犯罪の抑制につながっていけば、ダブル効果だ。

 今年の5月、久し振りにあのTVヒロインたちがDVDで再登場した。「チャーリーズ・エンジェル」だ。3人の美女はTVと異なるキャスティングで、好みの問題はあるかもしれないけれど、結構イケテル女優たちがマトリックス的なアクションをカッコ良く披露してくれた。彼女達の今回のミッションは、盗まれた開発中の「音声識別ソフト」を取り返せ、というもの。これとGPSがドッキングすると大変なことになる、ということから大騒ぎになる。  声で、誰が誰だかわかるというのなら、もう「私は誰?」で悩む必要はなくなるんだけどね。

 音声識別システムは、セキュリティにはかなり効果的な威力を発揮してくれる。私の声じゃなければ、ドアも開かない。金庫も開かない。(お金が入っていようといまいと)もちろん、パソコンも立ち上がらない。大事なものには「鍵掛けろ」ではなくなり、これからは音声識別ソフトを入れろというわけだ。これがあれば、銀行でハンコを忘れても、「この通帳は私のです」「この預金は私のお金です」と頑張らなくてもすむかと思うと、早くもっともっと普及してもらいたいシステムだ。

 世界のトップ自動車会社GMでは、この音声識別ソフトで所有者を確認した後、音声で天気やニュースを知らせてくれたり、メールをチェックしてさらに読み上げてもくれるサービスを開始した。21世紀型の新たな自動車が走り始めている。  携帯電話に、この音声識別ソフトを入れれば、落としても無くしてももう大丈夫というのもある。  さらに声紋を分析して、声の調子でその時の気分を教えてくれる、というのも登場した。まあ、電話している相手に怒鳴っている時に、「あなたは今怒っています。怒り度100%」なんて教えられても、怒りは静まるどころか倍増しそうだけど。殊勝な人はこれで自分の感情をセルフコントロールするかもしれない。

 たくさんの情報が溢れ、自分がわからなくなっていく不透明な時代だといわれて久しいが、こうして情報テクノロジーがこれまでとまったく異なる視点から、自分は自分だと教えてくれるような情報を提供するということもあるのだ。

ITコラムニスト  久保 直
 
 
「音声識別 私は誰?に答えてくれるITがあれば…」には、たくさんのご意見が寄せられました。賛否両論、面白談義を、ここにご紹介します
 
声のいいヤツがモテる ますます僕は不利だなあ (虎オタク)
声変わり、風邪声…でも、金庫は開くの? (もみりん 北海道)
自分自分というけれど、意外に単純なものかもね (みんすけ 北海道)
いつも楽しみ ITフォーラム (ののちゃん 学生 埼玉県)
私の存在証明してくれる 哲学はテクノロジーなしに語れない  (ひなママ 30代 東京都)

声のいいヤツがモテる ますます僕は不利だなあ (虎オタク)

 そうそう、銀行で腹が立つことってよくあるんですよね。誰のお金だ!って叫びたくなる。預ける時にはうるさくないくせに、引き出す時にだけやたらと確認される。そんな嫌な思いをしなくなるなら嬉しいな。でも、僕は声に自信がないんですけど…。いい声、悪い声の違いも、これから明確になるんでしょうか? そうすると困るなあ。だいたい、男は声のいい奴がモテるんだよね。人間は顔じゃなくて、「声」だというのが僕の持論です。

久保 声紋で分析する声と実際に聞く声というのは、また違うもののようです。しかし、モテる声という分析は、また違った角度から出来るかもしれない。こんなタイプの声はモテる、モテないという調査分析結果と測定判定機が誕生したら、うむーーーー、結構哀しいかもしれない。確かにモテる男性は、いい声の人が多いですね。スルドイ。しかし、それがわかっても自分の声を変える事が出来ないのが寂しい話です。

声変わり、風邪声…でも、金庫は開くの? (もみりん 北海道)

これって、風邪をひいたりしたときも大丈夫なの? 声が変わってしまったら心配。男の子が、声変わりをしたときにはどうなるのでしょうか?  なんだか、金庫が開かなくなったらどうしようかと、久保さんが書いたみたいに、お金もないくせに心配してしまっている私です。

久保 風邪をひいたくらいや声変わりでは、声紋は問題無いようですよ。声紋というのは、指紋より精度が高いものですから、風邪をひいたっていうのは、手が汚れたくらいですかね。物まねが上手い人でも声紋ばかりは真似できないようですし、安心して良いらしいのです。しかし、お互いに金庫にお金が欲しいですね。あ、僕のうちには金庫もなかったな。

自分自分というけれど、意外に単純なものかもね (みんすけ 北海道)

自分を探すのって、本当に難しいです。いくつになっても悩んでしまいます。声ねえ。そんなことから人間が証明されるのって、何だか不思議な感じです。「自分自身」というものは、意外に単純なものなのかもしれないですね。

久保 真剣に考えると、夜も眠れなくなる問題です。「僕らしさ」と「僕自身」のあいだには深〜い溝があるような気がします。これまで何度「僕はそんな男ではない!」と心の叫びをあげたことか。家内に言わせると「あなたは自分をわかっていない」らしいのですが、それに逆らうことが出来ないでいるだけで、本当の僕は理解されていないと確信しているのです。

いつも楽しみ ITフォーラム (ののちゃん 学生 埼玉県)

このITフォーラムって、ITを身近に感じることが出来て面白いです。次回も楽しみにしています。

久保 ありがとうございま〜〜す。次回はITウオッチャーの岩永紀氏になります。僕もまた登場しますので、またサイトに来てくださいね。よろしく。

私の存在証明してくれる 哲学はテクノロジーなしに語れない  (ひなママ 30代 東京都)

「私は誰?」という究極の哲学テーマがITに関るコラムで出てきたのには目からうろこです。 高校生のころ、なんともう20年以上前になってしまいますが、「私が私であることを裏づけるものはいったい何だろう」と考えてみたりすることがありました。例えば戸籍や住民票。これによって現代の日本ではどこの誰かが証明され、教育や納税、福祉を受けるときといった社会的な行動の原簿となってます。 けど、それがなくなっていたら? 紙の上で私という人間の存在が消えていたら私は? もちろん、戸籍の抹消とか復活とか手続き的なこと云々じゃなく、まだまだ世間知らずで青臭かった(いまもあまり変わらない?)私は、「私は何によって私なのか」にあれこれ思い巡らせ、いつも最後には「どんなこと言ったって、私はここにいるんだからな」となるのでした。理屈でそれを説明しなきゃいけないこと(誰にもそんなことを要求されてないんだけど。若くて暇だったんですね)のイライラ感にまた思いを深くしたりして。 「私は現にここにいるんだからな」。それは観念的な実存のイメージではなく、具体的な身体性そのもの。しのごの言ったって、ここに私がいるの見えるでしょう? それ以上の何が必要?ってなもんです。すっかりおばさんとなった今では、こう開き直ってますが… 「音声識別」の他にも、「顔識別」の技術も実用化しているという話も聞いています。 声や顔はまさにその人の身体そのもの。とってもダイレクトな確認方法ですよね。これからますます複雑化するであろう世の中。理屈抜きの「私」の存在証明に、テクノロジーが手助けするというのは皮肉といえば皮肉な気もするけど、技術は人間にとって数多くある智恵のひとつであるということをあらためて感じることができて面白いです。みんなが楽チンに幸せに優しく、心穏やかに暮らせるようになるためにこそ、このテクノロジーを使いたいものです。

久保 「顔識別」技術も面白いですね。人相による性格判断やほくろによる人相占いなんかも、データ化することによって、自分自身の証明から、自分の人生の将来までが見通されちゃうとスゴイですね。辛い人生だったら、どうしようか?? 遺伝子情報もデータ化される昨今、どこまで人間の存在はデータ化されて分析されるのか…その情報を活用して僕達は何をするのかが、これからの一番大切な問題ですよね。

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