ITワイド講座




イラスト:小湊好治

専業主婦のIT革命〜ランチ情報は連絡網?!

昼間会社で働いている、ビジネスマン、ビジネスウーマンにとって、専業主婦、女子高生…というと、なんとなく「よく知らない」「もの珍しい」人種、だなんて考えてしまうこともある。 たしかに、私達が毎日仕事をしている間、彼女たちがどんなことをしているか、何を考えているのか、知る機会はほとんどない。自分の身の回りに、たくさんいるはずなのに、なぜかちょっと遠い…そんな彼女たちの生活をのぞいてよう。

専業主婦は、毎日いったい何をしているのだろう−−そんな疑問を、ある主婦に投げかけてみた。彼女の答えは、「そりゃ、いろいろよ(笑)。忙しいといえば忙しい、ヒマといえばヒマ」。こう言って笑う彼女は、幼稚園と小学生3年生の子供を持つ専業主婦。

忙しい、と答える理由は、家事や幼稚園に通う子供の送り迎えなど、やるべきことがたくさんあるから。ヒマ、と答える理由は、そうしたルーティン・ワーク以外にとりたててすることがないからなのだという。

家族の朝食を準備することから始まって、幼稚園への送り迎え、掃除、洗濯…、話を聞いてみると、なかなか忙しそうなのではある。けれど彼女に言わせれば、「慣れれば早くできるようになるし、手を抜こうと思えばある程度は楽になる」。ただ、幼稚園へのお迎えの時間が不定であるため、仕事を持つことは不可能なのだそうだ。「子供の手が離れるまでは、のんびり子育てと自分の生活を両立させるしかない」のが実情のようだ。

ちょっと時間を持て余している彼女が情熱を燃やしていることは、幼稚園や小学校の母親同士、仲良くなったグループでのランチだ。週に2〜3回は、みんなで集まって、近くにできた新しいレストランや、話題のお店に行くという。

「自分のためにお金を使って楽しみたい。でも新しい洋服を買ったらダンナにばれちゃうでしょう? ランチなら、お腹に入れちゃえばわからないもの(笑)」

これは、「御主人に気兼ねはないの?」という質問に対する彼女の答え。家事をどんなにがんばっても誰もほめてはくれない。それならば、自分で自分にご褒美を、というのが彼女の理屈のようだ。

驚くのは、彼女を始めとするお母さんたちの情報網。彼女は関西のとある住宅街に住んでいるが、この界隈ではどのレストランも、ランチタイムは女性でいっぱいだそうだ。多くのレストランを占拠するこの女性たちのほとんどは、彼女のように、時間に余裕のある主婦たちで、新しいお店ができたと聞けば必ずグループの誰かが行ってみて、その感想を報告し合う。それが携帯メールでできるようになってから、情報がめぐる速度は格段に速くなったそうだ。

「美味しいお店を、誰よりも早く見つけ出すことに喜びを感じる」と言う先般の彼女も、御多分に漏れず連絡網駆使組。携帯メールを使えるようになったことで真っ先に情報を流せるので、優越感を満足させるにはうってつけの様子だ。
 他のお母さん達にしても、ランチに行ったその場で感想をメールする。そのメールは連絡網のようにどんどん転送され、あっという間に情報が広がるため、オープンしたばかりで、まだどの雑誌にも紹介されていないようなレストランでも、1〜2週間のうちにとりあえずいっぱいになるらしい。逆に「あそこは美味しくない!」などといった感想が回り始めると、「面白いほど、客足が減る」ということもある。最近はカメラ付き携帯電話を持つ主婦も増え、時には画像付きで感想が飛び回る、というから、情報誌も顔負けだ。

そんな主婦たちを最も恐れているのは、この辺りのレストランのオーナーやシェフ。この界隈で人気のレストランのシェフも「噂が回るのが早いから、評判が落ちると、あっという間にお客さんが少なくなる。毎日気が抜けませんよ…」と苦笑いしている。

生活をめぐるすべてにおいて、スピードが増している今、井戸端会議や噂話もスピード化しているようだ。といっても、「毎日同じことの繰り返しに、少し退屈しているかも」と笑う彼女たちのおしゃべりの内容は、今も昔もそれほど変わらない気もするのが…。

ところで、今日、あなたの昼食は何だったろうか?
(2002.12.25)

堀田ハルナ

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