ITフォーラム





【第4回】
韓国のメディア多様化とコンテンツ政策

■ブロードバンド、ケーブルテレビ、世帯普及率が7割以上

韓国の放送関連メディアは、現在、地上波テレビ、ケーブルテレビ、ブロードバンド・インターネットの、3つの媒体が中心となっています。ここで特筆すべきことは、ケーブルテレビの加入者数が、約980万加入と、世帯普及率が、約7割に達していること、そして、既にご承知のとおり、ADSLを中心としたブロードバンド・インターネットの加入者数も、約1,000万加入(2002年9月現在)と、世帯普及率が、7割に達していることです。

■規制の多い地上波放送

このように、ケーブルテレビや、ブロードバンド・インターネットが普及した背景には、@全国ネットの地上波テレビ局の数が4局と少なく、そのうち民間資本100%の放送事業者は1局に留まること、A平日の昼間の時間帯(午前11時頃から午後4時頃)は放送されないこと、B地上波放送番組の内容規制が厳しいこと、外国番組、なかでも日本番組に対する規制が厳しいこと、加えて、C広告に関しては放送前に規制当局による事前審査が義務付けられていることなど、韓国の地上波放送が政府の厳しい管理下にあり、様々な規制がかけられていることと大きく関係しています。つまり、たとえ民放であっても、放送局である限り、公共放送としての役割が期待されているために、視聴者の「見たい、聞きたい、知りたい」という素朴な欲求が、地上波放送では十分に満たされていないという韓国の放送メディア事情を挙げることができます。そのため、地上波テレビに飽き足りない視聴者が、ケーブルテレビに加入し、海外の衛星放送番組を視聴し、ブロードバンド・インターネットで、既存のテレビメディアにはない、娯楽性の強い映像コンテンツを楽しむというのが実情といえます。

■デジタルメディア間の競争が熾烈に

そして、メディアの多様化という点についていえば、昨年、2001年10月より、地上波デジタル放送が開始され、今年の2002年3月には、衛星デジタル放送が開始されました。韓国の放送関連メディア業界は、地上波、ケーブルテレビ、ブロードバンド・インターネット、衛星と、いずれもデジタル放送の時代に入り、加えて、メディア間の競争が熾烈化する時代に突入しました。
メディアが多様化する中で、各メディアが、どのような戦略をとるのか、そして一方の、視聴者は、多様なメディアの中から、何を選択するのか、あるいは、それらをどのように使い分けるのか、今後の動向が注目されるところです。

■政府主導によるデジタルコンテンツ産業振興政策

こうしたメディアの多様化にともなって生じるのが、コンテンツ、つまり、映像ソフト不足の問題と、映像ソフトの円滑な流通を促進するための著作権の問題です。
韓国では、国内のコンテンツ産業の底上げを図り、国際競争力を有する産業に育てるために、独立系のプロダクションに対する融資制度を定め、その海外市場進出を支援したり、また、放送事業者に対する放送番組の外注比率を上げ、財閥企業など大企業上位30社の放送事業への参入規制を緩和するなど、様々な政策を実施しております。
中でも、デジタルコンテンツ産業発展に向けて、文化観光部(放送・映画・音楽・アニメ・マンガ・キャラクター等の産業振興)、及び、情報通信部(デジタルコンテンツ産業振興)は、毎年数百億円規模の予算を投じて、デジタルコンテンツの技術開発とその流通基盤の整備、デジタルコンテンツ専門企業の支援とクリエーターの育成、国内外での新規市場開拓を担うデジタルコンテンツプロデューサーの養成など、各種支援策を策定しています。

■オンライン・デジタルコンテンツ産業発展法による著作権保護

また、デジタルコンテンツ製作者の権利を法的に保護するために、オンライン・デジタルコンテンツ産業発展法を制定し(2002年1月)、オンライン上で商用コンテンツを発表した日(製作表示日)から5年以内に、違法に複製又は伝送が行われた場合には、著作権侵害が適用され、製作者に対して損害賠償請求権が与えられるとともに、違法行為者に対しては1年以下の懲役、又は、2,000万ウォン以下の罰金に処されることになっています。

■現行の著作権法の全面改正が進行中

更に、現行の著作権法の全面改正も進められています。従来「創作性」の有無によってデジタルコンテンツの保護が判断されていたものが、@創作性のないデータベース製作者についても保護の対象とする、Aコピープロテクトされたデジタルコンテンツに対するハッキング行為に対して制裁措置を講じる、B第三者による著作権等の侵害に対して一定の要件を満たした場合にはISPの免責を認める、Cコンテンツ製作者に「電子送信権(日本の送信可能化権に相当)」を認めるなど、著作権の保護対象を広げるともに、著作権者の保護を確実にし、かつ、デジタルコンテンツの円滑な流通を実現するための著作権法の改正が議論されているところです。
(2002.10.8)
国際通信経済研究所 上席研究員 飯塚留美


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