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メール達人たちの「CC・BCC」に学ぼう

メールならではの、便利な送信機能に「CC」「BCC」機能があります。
通常のメール送信先「TO」に加えて「CC」「BCC」欄に他の人たちのアドレスを追記することで、同じ内容のメールを同報することができるのです。

CC:(カーボンコピー=「TO」の送信先にも一緒に送る宛先を明らかにした同報)
BCC:(ブラインドカーボンコピー=「TO」の送信先に宛て先を伏せた同報)

例えば、社内や仲間内で情報共有をしたいメールがあったら、関係者全員に「CC」で送ることが多いでしょう。プロジェクトの進捗状況、お勧めの本やお店、会合の召集などの用途で活用されていることと思います。

また、大量の関係者に一斉同報する時などは、プライバシー、関係者間の人間関係、メールヘッダの軽量化を考えて「BCC」に全員のアドレスを入れて送ることが多いはずです。「CC」で送りますと、誰に同時に送ったか、全員のアドレスが表示されてしまうからです。

しかしながら、実際は半ば無意識に、もう少し細かく使い分けているような気がします。そこで、メール達人に「CC」「BCC」の使い分けの方法を尋ねてみました。

ケース1:当事者(TO)と、関係者(CC)を明確にする意図〜山内さんの場合
 

eメールマーケティングの専門家、カレン社長の山内善行さんは、その案件の当事者と関係者を明確に色分けするために「TO」と「CC」とを使い分けるとおっしゃっています。
最近は、プロジェクトメンバーと業務情報を共有する場合に、メーリングリストを使う場合も多いと思います。しかし、便利なメーリングリストは、時として「集団無責任体制」に陥りがちです。
そこで、責任者あるいは当メールの指示を実行すべき担当者を「TO」にして、それ以外の関係者を「CC」にするようにしているそうです。


●山内善行さんからの一言  

「CC」は本来の使い方(進捗状況の共有、参考情報、「受動的に参画しておいてください」といった含みなど)もありますが、むしろ「TO」を意識するため、あるいは「TO」の人を引き立たせるために「CC」を使う場合が多いです。

例えば「これだけ関係者(CC)がいますが、あなた(TO)が当事者ですよ」というメッセージを明確に伝える意図がある場合です。

逆に、そのような意図や心配りがない場合は、無造作に宛先の全員を「TO」に入れます。
メーリングリストのアドレスを「TO」に使うことが多い弊社の事情もあるかもしれませんが、ややもすると誰が責任を持って返答・実行しなければならないのか、が曖昧になりがちだからです。

なお僕は「BCC」が嫌いないので、使ったことがありません。

 
ケース2:むやみに「CC」攻撃をするのは能力が無い証明〜雨宮さんの場合
 

ネット広報戦略の専門家、クロスメディア・コミュニケーションズ社長の雨宮和弘さんは、2つの外資系IT企業での勤務経験から、安易に部下や同僚に「CC」でメールを同報することに警鐘を鳴らしていらっしゃいます。

優れた企業では「メール一つでも、その目的を熟慮する」企業文化が出来ているとのことです。そして優秀な上司ほど、それを徹底して実践しているそうです。


●雨宮和弘さんからの一言  

私が最初に働いていた外資系半導体メーカーでは、米国本社の上司は「情報の共有」と称し、彼宛に来たメールをバンバン転送してきました。もしくは他の部署に投げるメールの「CC」にいつも僕らを入れ、それをきちんとトレースしていないとならないので、非生産的でした。部下もそれが癖になり、何かメールでアクションを起こすときには、上司や同僚に「CC」を入れるようになっていました。

その後転職した、これまた外資系の半導体メーカ−で、米国本社に出張した際、面白いことがありました。社長のスピーチライターの男性に「社長が一日に受け取るメールの数は何通ぐらいだと思う?」と聞かれたのです。世界中の支社に3万人以上の社員を抱える企業ですから、さぞかしすごい数だろうと思ったのですが、これが逆で驚くほど少ないのだそうです。セクレタリーがフィルターを入れてさばく、ということも無いそうです。

彼が言いたかったことは、この会社では「メール一つ打つのにも、本当に伝えるべき人は誰か、何を伝えるのか、メールが一番良い手段か」を相当考えて出すマナーができているので、無駄なトランザクションが少なく、それぞれもメールで仕事を邪魔されることが少ない、ということでしょう。

全社的にどこまで浸透しているかどうかは個人差もあり定かではありませんでしたが、前の会社よりはメールの数が少なかった(反して仕事はダイナミック)のは確かです。

ケース3:告げ口や秘密の薫りがするBCCは使いたくない〜山口さんの場合
 

コンサルタントの山口憲和さんは「BCC」がお好きでないので、あまり使いたくないそうです。
たしかに「TO」や「CC」先に知られたくないことが前提となる「BCC」は、どこか「告げ口」それも「密告」に使われそうなイメージがつきまといます。
しかし、どんなメールソフトにも、BCC機能がついていることを考えますと「BCC」を多用している人も少なくないということでしょう。インターネットの世界では、誰かの悪口を言うと、必ず、その誰かに伝わると考えた方が良いと言われるのも、この「BCC」と転送機能の所以でしょう。
だからこそ「BCC」はむやみに使わない方が良さそうです。どうしても使うなら、例えば「素晴らしい内容のメールを信頼できる身内に伝えて、そのメールの主をひそかに褒めたたえる」といった、善意に基づく「BCC」だけとした方が、精神衛生上も良いでしょう。


●山口憲和さんからの一言  

私の場合、同報メールでアドレスを見せない配慮で使うなら別ですが、
あまり使いたくない「BCC」さん
ビジネスでは、上司がその一連のメールの脈絡の中に登場しない場合、その上司に「BCC」。

ポリティカルな場面では、告げ口的な使い方。知っておいて欲しいが、告げ口したことは「TO」さんや「CC」さんに知られたくない相手に。

プライベートでは「言い訳」です。ビジネスの約束を家族に伝えるといったもので「ごめん、今度の日曜は接待ゴルフで」という証拠(?)に。

★「TO」さんにとっての「BCC」さんとは?
知らないはずなのに知っている。
壁に耳あり障子に目あり。
「From」さんて信用できるのかしらん?
と、どうもいけません。暗いイメージがつきまといます。

と思ってしまうのは私だけでしょうか?

ケース4:縁結びのために「CC」を有効活用したい〜私の場合

私自身は、互いに面識がないものの、きっかけがあれば仲良くなりそうなメール縁者同士の縁結びに、CCメールは最適だと考えています。

最近『orkut.com』や『GREE.jp』といった「友だちの輪」形式の出会い系サイト=ソーシャルネットワーキングサイトが話題になっています。しかし、わざわざ、見掛け上の友だちの多さを自慢したり、交友関係を暴露したりせずとも「CC」を使えば、縁者と縁者がメール一本でつながるお手伝いをすることができるでしょう。

 


●私からの一言

私は、一日一通、心に残るメールを選び、許可をいただいた上で、コメントを添えて、メールマガジン「縁尋奇妙」として配信しています。

例えば、Aさんから「社長のためのウェブログの活用法」というメールをいただき、それが役立つと感じたら、その要点をまとめ、コメントや関連リンクを加えて「社長のためのウェブログの活用法〜Aさん」という題名で、メールマガジン仕立てにして、配信するのです。

このメールマガジンに、Bさんから、嬉しいご感想メールをいただいて、Bさんにお礼の返信メールをする時は、情報発信元のAさんのアドレスを「CC」に加えるようにしています。
そうすれば、Bさんからいただいた感想を、発信元のAさんと共有できて、お互いに喜んでいただけるからです。

また、必要であれば、当事者同士でメール交換をしていただいて、交遊を深めていただくこともできるでしょう。

CC:ひとつでちょっとした縁結びができるわけです。

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このように、毎日何気なく使っている「CC」「BCC」も、使い方によっては、企業の生産性を高めることや、発信者の人柄を伝えてネットワークを広げることにもつながります。
その基本は「目の前の役立つ情報を分かち合いたい人は誰か」を常に意識して、必要な人が、必要な時に、必要な情報だけを手にすることができるように心配りをすることでしょう。

 
久米信行(くめ・のぶゆき)プロフィール

1963年

東京都墨田区生まれ

1987年

慶應義塾大学 経済学部卒業

1987年

イマジニア株式会社入社 ファミコンゲーム開発

1988年

日興證券(株)入社 資産運用・相続診断システム開発

1991年

久米繊維工業(株)代表取締役に就任

1995年

ティーシャツ・ギャラクシー(株)設立 代表取締役
(現ティーギャラクシー・ドット・コム(株))

 

このほか、(社)ソフト化経済センター客員研究員、(社)東京商工会議所 IT推進委員会委員、(株)カレン 社外取締役などを務める。

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イラスト/小湊好治 Top of the page

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