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メール達人たちの「明解!結論術」に学ぼう!

メール道のワークショップで「嫌なメール」のアンケートを取ることがあります。
すると、「結論がわからない」「ダラダラと長すぎる」メールが嫌いとの回答が、必ずと言っていいほど上位を占めています。
一方で、「結論だけで冷たい」「理屈っぽい」メールも「嫌なメール」として挙げられるのが、難しいところです。

これまで「メール道」では、結論を分かりやすく伝えるために、
 ・結論を題名に盛り込もう
 ・本文は結論から書こう
 ・結論→理由→データの順番で書こう

 と、3点セットでお薦めしてきました。

何度もスクロールをしなければ読めない長文の、最後の最後になって結論を書くと、相手をイライラさせることになります。また、大切な結論が見落とされることさえあるでしょう。それどころか、分かりにくく要領を得ないメールを書いたことで、発信者の能力や人柄まで疑われるかもしれません。
かといって、冒頭でいきなり短く、それも、まるで英語のように「紋切り型」で結論を書くのも考えものです。伝えたいことは非常に明解かもしれませんが、印象を損ねて人間関係がギスギスしそうです。一歩間違えば、「智に働けば角が立つ」の言葉そのままに、クールでドライな人と見なされ「孤高の人」になってしまうかもしれません。
そこで今回は、メールの中で結論を「分かりやすく」しかも相手に「やさしく(易しく+優しく)」伝えるための方法を、達人と一緒に考えてみましょう。

ケース1:嬉しくない結論を言う前の一言が大切〜和田さんの場合
 

ベストセラー『アフィリエイト徹底活用術』の著者で、コンサルタントの和田亜希子さんは、簡潔に結論を伝えることを心がけながらも、それを読んだ時の相手の気持ちに心配りをされています。
特に嬉しくない結論を伝えなくてはいけない場合に、いかに相手の気分を害さないかが大切です。そんな場合は、言い訳がましくならないように、相手をイライラさせないように、結論を告げる前に、短い「共感の一言」を添えるそうです。


●和田亜希子さんからの一言  

自分も、実践はできていないながらも(すぐ冗長なメールや、きついメールになってしまう)、より短時間で“クリア”に理解してもらえるビジネスメールを心がけています。

・結論
・結論に至った理由
・その結論を受けての次の一手
 ─相手にお願いしたいアクション
 ─自分の動き

ただ、長く詳細に書こうと、短く淡白に書こうと、どう工夫しても相手の気分を害することは避けられない時があります(時間をかけた長いメールで、思いを込めて依頼をしていただいたのに断る場合など)。
その場合には、相手をがっかりさせないようにすることはあきらめ、先に「正直なところ、このメールであなたを落胆させてしまうことを考えると、自分は非常に心苦しい」という率直な気持ちを、冒頭に、かつ手短に(2行ほどで)書くようにしています。

▼結論の位置によって…
先に結論でずばっと言い切られた後に「ご期待に添えなかったことは本当に心苦しく…」と続けられると、何だか妙に言い訳っぽく聞こえてしまい、落胆が腹立ちになってしまうことがあります。自分の気持ちを率直に添えて結論を伝えれば「こっちもがっかりさせられたけど、相手もホントに心苦しい思いをしてるんだな」と感じられ、相手に対して苛立ちではなく親近感を感じることすらあります。

▼嬉しくない結論の前に長い文章が来ると…
それが、申し訳ないというお詫びの言葉であっても、理由であっても、長いと読んでいてイライラしてきてしまいます。それは期待していた結論とは違うらしいことがだんだん濃厚になってゆく感触が決して気持ち良いものではないのと、どこか「逃げ腰」で「潔さに欠ける」相手の姿勢を感じてしまうからかな、と思います。



和田さんの技を実際の例で見てみましょう。

事例)
【〇〇企画案】残念ながら今回は不採用になりました。素材選択が決め手でした。

Aデザイン社 〇〇〇〇さん
CC:弊社商品開発部 ◇◇部長

 こんにちは!◇◇社 商品開発部の久米です。
 〇〇の企画案をありがとうございました!
 さっそく部長以下、一同、素晴らしいご提案に見入っておりました。
 しかしながら、コンペの他の3案とも秀逸で、選ぶのは困難をきわめました。

 諸々を検討した結果、他部門からの強いリクエストもあり、今回は残念な結果となりました。
 力及ばず申し訳ありません。

 ================================================
 結論■残念ながら他の案が採用となりました!
 ================================================
 理由1 新素材を活用した、斬新なデザイン
 理由2 見た目の美しさ、手に取った時の持ちやすさ
 理由3 工場の生産のしやすさ
 ================================================

 採用案は、弊社の関係会社が新開発した素材の美点を盛り込み、これまでにないデザインと質感を 実現しております。

 今後の〇〇さんのデザインワークにも役立つと思い◎◎◎のサンプルを入手して、お送りしました。
 よろしければ、お手にとってお試しください。

 上司の◇◇ともども、〇〇さんのお仕事を敬愛しておりますので、ぜひ、次の機会に、またお知恵をいただきたく存じます。

 今後ともご高導のほどよろしくお願いいたします。

 
ケース2:結論明解なビジネスメールと、雑談メールを区別して書く〜高木さんの場合
 

メールマガジン「足助(ASUKE)からの便り」で知られるタカキ工業の高木伸泰さんは、メールの目的ごとに、書き方を変えているとおっしゃっています。
まず、高木さんは、日常的な「結論無用の雑談メール」で、親しい間柄を築くことを実践されています(私も、そんな雑談メールで高木さんと親しくなった1人です)。
こうした「無用のメール」のおかげで、いざと言う時に出す「何かを伝える目的」のメールが、多少事務的で冷たくなっても、良好な人間関係を壊さずに済むのでしょう。
一方で、伝えたい結論が明解なメール、特にビジネス関係のメールでは、冒頭に結論を書き、箇条書きを多用し、時に罫線なども活用して、分かりやすくしているそうです。


●高木伸泰さんからの一言  

「やさしく分かりやすい結論術」は、難しいテーマですが、それぞれのメールの目的によって違うような気がします。

雑談のやりとりを楽しむようなメールだと、結論はなくても良いかなと思っています。そういう雑談メールのやりとりを許容してくれる相手かつ間柄でないと迷惑かもしれませんが。

こちらから何かを伝える目的のメールの場合は、やはり最初に結論を書くようにしています。特にビジネス関係のメールは、多少事務的であっても、確実に言いたいことが伝わるようにします。
そういう場合は、補足説明がしやすいように番号付きの箇条書きも多用します。

(1)○○のスケジュールについて
(2)○○の詳細設計書の疑問点

罫線については、メルマガほど凝ることはないですが、シンプルな罫線は、時々使っています。

ケース3:分かりやすい例え話でイメージを広げる〜明賀さんの場合
 

マネジメントゲームを通じた経営者研修のスペシャリスト、経営総合研究所の明賀義輝さんは、例え話を使って、メールを受け取った人のイメージを広げることを心がけているそうです。
結論の裏に秘められたメッセージは「伝わらなくて当たり前」という前提に立てば、より分かりやすいコミュニケーションを心がけようとするでしょう。その結果、言葉足らずで、要らぬ誤解を受けて、せっかくの縁を失うこともなくなります。
例え話の引用は、コミュニケーション全般に役立つお話で、まさにメール道の応用編とも言えます。真似をするには、豊富な人生経験や読書が求められそうですが、明賀さんを見習って、分かりやすくも味のある例えを使ったメールを出したいものです。


●明賀義輝さんからの一言  

「人はイメージでわからないと行動に結びつかない」という言葉がありますが、文字だけで綴るメールは、まさしくイメージの伝わりにくいツールと言えます。
そこで私は、相手がイメージしやすいように例え話を使い誤解のないように心がけています。
そしてメールを発信するときには「自分は潜水艦のようなもの。相手には見えていないし話しかける声も聞こえていない」つまり「相手は自分を理解していない」という前提で謙虚に、メールを発信しています。

潜水艦はじっとしていては、自分の位置も敵の位置もわからず動きが取れません。
メールも同様、自分から発信し、自分の立ち位置を測ることで相手との意識のギャップも埋まるのでしょう。

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三達人の教えにあったように、情報量が限られたメールで、結論を「やさしく分かりやすく」伝えるためには、「題名・冒頭に結論を書く」「その後、理由やデータを箇条書きにする」といったメール書式の工夫だけでは不十分です。
メールで端的な結論を読んだ時の、相手の心中を察し、共感できる一言を添えることが大切です。更に、相手の想像力に働きかけて、理解を深める例え話や引用もできれば、メール道の達人と言えます。

 
久米信行(くめ・のぶゆき)プロフィール

1963年

東京都墨田区生まれ

1987年

慶應義塾大学 経済学部卒業

1987年

イマジニア株式会社入社 ファミコンゲーム開発

1988年

日興證券(株)入社 資産運用・相続診断システム開発

1991年

久米繊維工業(株)代表取締役に就任

1995年

ティーシャツ・ギャラクシー(株)設立 代表取締役
(現ティーギャラクシー・ドット・コム(株))

 

このほか、(社)ソフト化経済センター客員研究員、(社)東京商工会議所 IT推進委員会委員、(株)カレン 社外取締役などを務める。

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イラスト/小湊好治 Top of the page

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