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メール道の先にあるもの「ビジネスコミュニケーション5つの予測」

長らく連載を続けてまいりました「メール道」も、いよいよ今回が最終回となります。これまでのご愛読、本当にありがとうございました。
最後に心からの感謝をこめて、私自身が考える「メール道の先にあるもの」についてお伝えして、この連載の幕を閉じたいと思います。COMZINEを愛読されているビジネスパーソンの3年後のコミュニケーションスタイルを意識しながら、5つの予測をしてみましょう。

1.名刺・履歴書代わりの実名個人ブログを持つのが常識になる
 

どなたか初対面の方と面談をする前には、私は必ずお名前でGoogle検索いたします。キーパーソンならば、必ずGoogleに数多くヒットするので、その量と質で社会的影響力が想像できるからです。さらに、個人ブログが見つかれば、そこで詳しいプロフィール、最近の行動や関心事、さらには価値観を知ることもできます。たとえ初対面であっても、ブログの話題に触れることで、コミュニケーションの質を一気に深めることができるのです。
そのためにも、実名個人ブログを、名刺代わり、履歴書代わりに持つことが、できるビジネスパーソンの必須条件になると考えています。ブログ縁者が増えれば増えるほど、みなさんのブログをご紹介・リンクして下さる機会も増えるでしょう。その結果、検索でヒットする件数が増え、ご自身のブログが検索上位に表示されるはずです。だからこそ、一刻も早く実名ブログを始めることをお勧めします。

2.勤務先・関連先、主力商品のブログウォッチャーとなって情報収集する
 

Google検索を通じて、自分がどう見られているかを知るばかりでなく、勤務先・関連先や主力商品の風評も知ることができます。ご存知の通り、多大な予算をかけた公式サイトよりも、無料サービスを使った人気の個人ブログの方が、検索エンジンの評価では上位に来ることが少なくありません。私も、むしろ、広告目的の公式サイトよりも、個人ブログでの評判を気にする機会が増えました。つまり、お金をかけた広告も、カリスマ主婦の直言ブログで、逆効果になることさえあるわけです。資力や権力を持つ団体と、一個人が、情報発信力で互角になるのは、歴史上、初めての事かもしれません。
しかしながら、官公庁や自治体のみならず、多くの大企業でも、社内のパソコンからのブログ閲覧を禁止しているようです。もちろん、仕事のふりをして遊ぶ人がいるのが最大の問題点で、組織の規律のためにやむなしというところでしょう。ところが、結果的に、会社に対するネット上の良い評価も悪い評価もキャッチできなくなってしまう可能性があります。ブログウォッチャーを置いている団体ならまだしも、誰もチェックをしていないとしたら恐ろしいことです。なおさら、自分自身でチェックしなければなりません。
情報がガラス張りとなる時代、お客様や取引先が、ネット上でどんな情報を得ているか知らないで、交渉することは難しくなるでしょう。孫子の兵法を現代流に読み替えるならば「敵を検索で知り、己を検索で知れば、百戦あやうからず」ということになりましょう。

3.デジカメセンスや図解センスが、メール&ブログコミュニケーションの鍵
 

ブログ記事を読み書きしていると、静止画1枚で百語に勝る表現力を持つ可能性があると感じる事があります。ですから、カメラ付ケータイやデジカメを常に持ち歩いて撮影しては活用することが、ビジネスシーンでも大切になりそうです。相手に、直感的にメッセージを伝えられるばかりでなく、長いメールを書く時間も節約できる事になるからです。重要な写真は個人ブログに説明つきでアップしておき、テキストメールで随時リンクするようにすれば、表現力と生産性を両立できるでしょう。
同時に、わかりやすく図解するセンスも重要になるはずです。マインドマップなどの図解術もビジネスパーソンの間で流行していますが、何も特殊なツールを使う必要はありません。ホワイトボードやノートに書いたものを、デジカメなどで撮って、そのままメールに添付しても良いのです。何十枚にもなるパワーポイントなどのプレゼンデータよりも、A4用紙1枚にまとめた図解の企画書の方が、これからの「光速」ビジネス社会にはふさわしいものかもしれません。

4.動画通信時代は、カメラ前でのショートプレゼン能力が大切
 

いよいよスカイプやポッドキャスティングといった動画通信も広まりつつあります。3年後には、メールやブログと動画の組み合わせも当たり前になっているかもしれません。有能なビジネスパーソンならば、ジャパネットたかたの社長CMや、小泉首相のワンワードポリティクスを、もはや他人事のように見てはいられません。いかに短い時間で、伝えたいことを、効果的に伝えるかが大切になるからです。
私も、テレビやビデオ出演で、カメラの前で話したことがありますが、実際には数百人を前にした講演よりも難しいものです。味気ないデジタル文字の羅列=メール=に心を込めるのにも似た「気合の入れ方」が必要になりそうです。米国の大統領には、イメージコンサルタントがついて身振り手振りや話し方までコーチしていることは周知の事実ですが、その初歩の初歩でも身につけたいものです。もちろん、こうしたプレゼンの素養は、実際の面談にも大いに役立つはずです。
また、デジカメも動画が撮れる機種が増えていますので、動画の方が表現力に富む素材については、今から撮り貯めておくと良いでしょう。整理して、パソコンに保管しておけば、きっと近い将来役立つはずです。

5.最後はオールドメディア、手書きの封書や面談会食で心が動く
 

とはいえ、新技術ばかりが重要になるとも思えません。メールに限らず、どんなに便利な新メディアが現れようと、人の心は変わらない部分があるはずです。人と人とがコミュニケーションを通じて「喜怒哀楽」を繰り返す、その「こころ」は、未来もずっと変わらないのではないでしょうか?
ですから、手書きの手紙といった古いメディアもなくなるとは思えません。むしろ、重要性が高まると思います。私も、毎日山のように届く、メール、印刷されたDM、ワープロの手紙、ファクスは、来たそばから捨ててしまいますが、筆文字の封書などは、じっくり読んだ上で保管することが多いのです。
また、逆説的ではありますが「大切な時は実際に会いたい」という人も益々増えるでしょう。お互いにネットでの会話が怖いことを百も承知しているからです。何より、顔を合わせて食事など一緒にした方が、なぜか話も弾むことを知っているからです。

「メール道」連載の最後に、今後3年で変わるビジネスコミュニケーションのあり方を予想してみました。誰もが予想する通り、メールの先にはブログがあり、その先には動画通信の世界が広がっています。しかし、一方で、感動的なメール、手紙、電話などを下さった縁者の笑顔や、優しいお言葉を思い出すと、コミュニケーション力とは、その人の魅力に尽きるとも感じます。最後は「人間力の勝負」という大原則は、どんなに新しいメディアができても、変わることはないでしょう。

私も日々、新たなメディアに柔軟に対応しながらも、心新たに言葉を受け取り、共感し、言葉を返したいと思います。そして心に残る言葉の数々を、インターネット経由で縁者に広めることを、これからもライフワークとして続けていきたいと思います。

長らくありがとうございました。

 
久米信行(くめ・のぶゆき)プロフィール

1963年

東京都墨田区生まれ

1987年

慶應義塾大学 経済学部卒業

1987年

イマジニア株式会社入社 ファミコンゲーム開発

1988年

日興證券(株)入社 資産運用・相続診断システム開発

1991年

久米繊維工業(株)代表取締役に就任

1995年

ティーシャツ・ギャラクシー(株)設立 代表取締役
(現ティーギャラクシー・ドット・コム(株))

 

このほか、(社)ソフト化経済センター客員研究員、(社)東京商工会議所 IT推進委員会委員、(株)カレン 社外取締役などを務める。

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次回から、「未来への目」をテーマに新連載がスタートします。メールの達人、久米信行氏の縁者の目を通じて、久米氏の心に響いた「小さな現実」と「大きな未来への予感」を毎月ご紹介していく予定です。

イラスト/小湊好治 Top of the page

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