日本人俳優の渡辺 謙が「ラスト サムライ」でゴールデングローブ賞や第76回アカデミー賞の助演男優賞候補に、「たそがれ清兵衛」が外国映画賞にノミネートされるなど、ここ数年、映画・テレビ界では時代劇が見直されている。
刀はもちろん、着物を着る、畳に座るなどの生活様式さえ過去のものになりつつあるが、言葉の中にはかすかにサムライのころの名残を見ることができる。例えば「しのぎをけずる」「つばぜりあい」「さやあて」といった言葉だ。
「しのぎをけずる」は「鎬を削る」と書くが、鎬とは刀身の背と刃の境にある、少し盛り上がった部分のこと。この部分がこすれて削れてしまうほど、激しく打ち合う様をいう。今は「優勝争いにしのぎを削る3チーム」といった使い方をする。同じような意味の言葉に「つばぜりあい(鍔迫合)」がある。互いに打ち込んだ刀を鍔で受け止めたまま押し合うことで、これも激しくせり合う様を表現している。
同様に「さやあて(鞘当)」も刀に由来する言葉だ。途上で行き合い、互いの鞘尻が当たったのをとがめ立てしたことが転じて、「つまらないことで起こるいさかい」という意味になった。また、歌舞伎で二人の男が一人の女性を争って鞘当したことから、恋敵の争いという意味でも使われる。
また、時代劇のことを「髷物(まげもの)」というが、これはもちろん当時の髪形によるもの。江戸時代には「ちょんまげ」とは言わず、単に「髷」と言ったそうだ。ちょんまげという言葉は明治になってからのもので、束ねた髪を前方に曲げた形が文字の「ゝ(ちょん)」に似ているところからきている。
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