近年、食品を取り巻く環境は大きく変化している。
世界各国の食品が食卓に並ぶようになった半面、病原性微生物が世界中に広まりやすくなっている。また、腸管出血性大腸菌O-157のように、昔はいなかった危ない菌が出現。実際、国内の食中毒発生状況を見ても、従来の三大食中毒菌(サルモネラ菌、腸炎ビブリオ、黄色ブドウ球菌)に加え、O-157や、鶏に起因する「カンピロバクター」、生ガキなどで発生する「小型球形ウイルス」など、新型食中毒菌(またはウイルス)による食中毒が増えている。さらに、低糖、低塩、防腐剤無添加など、消費者がよりフレッシュなものを求める傾向が加わり、従来の方法では十分な安全性が確保できなくなってきているのだ。
このような状況に対して、食品業界が導入を進めているのが「HACCP」という衛生管理システム。HACCPとは「Hazard
Analysis and Critical Control Points」の略で、「危害分析に基づく重要管理点方式」のこと。読み方は「ハサップ」、あるいは「ハシップ」。元々は1960年代、米国の宇宙開発計画(アポロ計画)の一環として、宇宙食の安全確保のために開発されたシステムだ。
従来のシステムとの違いは、これまでが最終製品の抜き取り検査(微生物の培養検査)だったのに対し、HACCPでは材料の入荷から製造、加工、調理などの各過程で発生する危害を分析し、その危害を抑え込む対策を決め、継続的にチェック・記録することで、安全性を確保する。
現在、北米やEUのほとんどの国でHACCPの導入が義務付けられている。日本でも厚生労働省が「食肉製品」「水産加工品」「乳及び乳製品」「惣菜」「弁当」など18品目をHACCP承認品目と定めているが、日本の場合は義務ではなく自己申告制。
HACCPの基本は食中毒菌を「付けない、増やさない、殺す」の3点。暑くなるこれからの季節、家庭でも毎日の食事作りには十分気を付けたい。 |