デジカメの進化が目覚しい。一家に一台の時代は過ぎて一人に一台の時代になったデジカメだが、新製品の投入は相変わらず活発で、1年経つと旧機種になる状況が続いている。今年に入って発売された新製品では、コンパクトデジカメでも画素数は700万画素が一般的になり、1000万画素も珍しくなくなった。画素数だけでなく、画像処理や画像転送速度、手ぶれ防止機能など、使いやすくメリットのある機能がどんどん強化され、進化スピードは更に速くなっている。この3月に開催された米国最大のカメラショウ「PMA2007」でも、大型一眼レフからコンパクトタイプに至るまで、すべてのデジカメ分野での大きな成長が明らかになった。
従来の銀塩フィルムカメラが、フィルムに画像を映すのに対して、デジカメはCCDなどのイメージセンサに画像を映すという基本的な違いはよく知られている。フィルムの場合、光が当たった部分が化学変化を起こして画像となるが、イメージセンサの場合は、光が当たった部分が電気信号を発生する。そもそもデジカメが実用化されるようになった理由も、コンピュータへの直接入力が目的で、この電気信号をデジタル化すればそれが可能になる。しかしデジカメが商品化され進化するにつれて、従来のフィルムにはないイメージセンサのメリットが明らかになり、デジカメの運命も大きく変わっていく。
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キヤノンが1996年に発売したPowerShot600は57万画素。この頃から高画素競争が始まった |
光を電気信号に変換することがイメージセンサの役割だが、変換した電気信号を送り出せばイメージセンサはすぐにもとの状態に戻る。半永久的に使用できるイメージセンサと、消耗品であるフィルムとの違いは明らかで、イメージセンサは、感光を受け持つパーツとしてデジカメに組み込まれることになる。銀塩フィルムカメラでは、写真の2大要素である、光をフィルム表面に映す機能と、映像を再現するという機能が、カメラ本体とフィルムによって分担されている。しかしデジカメが登場してフィルムがイメージセンサに置き換わると、光の入力から画像の再生まですべてがデジカメの役割になる。
2000年以前のコンパクトデジカメのイメージセンサは、フィルムで描画されていた画像の精細度に比較してはるかに劣っていた。そこでまず精細度をどこまでフィルムに近づけるかが重要なテーマとなり、イメージセンサの精細度つまり画素数が、デジカメの能力を判断する大きなモノサシとなった。周知のように写真は、映像がくっきりと鮮明に映ることが基本だ。ボケ味の魅力なども、シャープな描画があってこその話で、こと描画能力を考えるなら、精細度は高ければ高いほど良い。
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ニコンが1998年に発売したCOOLPIX900は140万画素。光学3倍ズームレンズ搭載で11万円だった |
ここで画素数の変遷を見ると、デジカメ普及のきっかけとなった1995年のカシオ計算機の普及型デジカメ「QV-10」は25万画素(1/5インチCCD)で登場した。その翌年には富士写真フイルムが35万画素の「CLIPT-IT
DS-7」を投入、同年7月にはキヤノンが57万画素の「PowerShot600」を、同年10月にオリンパスが81万画素の「CAMEDIA
C-800L」を投入、この頃からデジカメはCCDの高画素競争に突入する。そして翌1997年にオリンパスが2/3インチサイズの140万画素CCD搭載機種を発売、これがプロカメラマンからも高い評価を得て、それまでプロの目からはオモチャに過ぎなかったデジカメの見方が一変した。当時はADSLによるブロードバンドの普及と時期が重なったこともあって、たちまちインターネットの世界でデジカメ画像が氾濫するようになった。その後のデジカメの普及は言うまでもなく、今やフィルムを凌駕する高画質がごく一般的になった。もはやデジカメの画像が粗いとは感じる人はいないだろう。 |