今から50年以上も前に始まった地上テレビ放送は、カラー化とハイビジョンという2つの大きな進化を遂げてきた。そして第3の大きな進化となるのがデジタル化だ。すでに指摘されているように、デジタル放送は従来のアナログ用受信機そのままでは見ることはできないので、デジタルチューナーを買うか、新たにデジタル用受信機を購入する必要がある。更に放送局側としては、デジタル用の中継局を全国に何千箇所も新設しなければならない。
このようにデジタルへの移行には視聴側、放送側の双方に新た な出費が必要だが、それでもなお国を挙げてデジタル化を進める理由は何だろう。
テレビ放送のデジタル化による新たなメリットはさまざまに伝えられているが、テレビ放送をデジタル化する大きな理由は、「放送サービスの高度化と電波の有効利用、情報化の恩恵をすべての人に、そして日本経済の活性化」(社団法人デジタル放送推進協会・広報担当専任部長・稲本茂利夫氏)の4点だという。
この4つの大きな理由の中で、情報インフラ整備の面から日本にとって緊急の課題となっているのが「電波の有効利用」だ。電磁波は一般に周波数の低い(波長の長い)方から順に、電波、光、X線、ガンマ線などと呼ばれている。電波は電磁波の中でも波長が長く、進行方向に多少の障害物があっても進むことができるので、放送や通信など長距離の情報伝達に利用されていることは周知の通りだ。日本の電波法では3000GHz以下の電磁波を電波と定義しているが、実際に放送や通信に使えるのはその中のごく一部の周波数に限られる。技術の進化によって電波の中でも次第に高い周波数帯が利用できるようになってはきたが、実際に利用できるという意味では、もうこれ以上のスキ間がないほど過密状態にあるのが日本の電波状況だ。 |