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新IT大捜査線 特命捜査 第13号 Nike+iPod「三日坊主で終わらせない!ランニングの強力助っ人」
 
  ランニングの苦しさを解消する新製品が登場
 

今、ランニング人気が高まっている。ランナーの「聖地」といわれる皇居の周回コースでは、週末ともなると多くのランナー達でにぎわうし、2007年2月18日に行なわれた「東京マラソン2007」は、約3万人もの市民ランナーが参加して成功を収めた。走ることの目的はストレス解消やダイエットなどが多いのだが、最近ではメタボリック症候群に対する予防・対策といった健康意識の高まりも人気の背景にあるようだ。
だが多くの人にとって、走るというのは誰にでもできる簡単な行為なのに、それを一定期間継続して行なうとなると、そう簡単なことではないだろう。体育の授業や部活動で強制的に走らされていた学生時代ならいざ知らず、仕事や家事に忙しい毎日の暮らしの中で、合間を縫ってランニングを習慣として続けていくのはよほど強い目的意識がないと、なかなか続けられない。ランニングに限らず、運動をしようと決意してウェアを揃えたところで、結局「三日坊主」になってしまったという経験を持っている人も少なくないはずだ。
そんな状況を知ってか、06年10月に、ランニングを楽しく行なえ、しかも継続できるようにしようというプロダクト&サービスが登場した。世界有数のスポーツメーカーであるナイキと、MacintoshやiPodのメーカーであるアップルが提携して発表した「Nike + iPod」である。

 
 
 
  走行中のデータをリアルタイムで表示
 
Nike + iPod スポーツキット

『Nike + iPod スポーツキット』(税込価格:3400円)

Nike + iPod スポーツキット センサー

センサーは対応シューズの内部にセットする

Nike + iPod スポーツキット レシーバー

レシーバーはiPod nanoに装着して使用する

Nike + iPodは、センサーをシューズにセットしてレシーバーをiPod nanoに装着することにより、ランニング中に音楽を楽しむことに加えて、ペース(速度)や距離、時間、消費カロリーなどのデータを音声とiPod nanoのディスプレイで確認することを可能にするプロダクト&サービスだ。ユーザ向けサイト『nikeplus.com』も用意されていて、ランニングやウォーキングの長期目標の設定やデータの蓄積・管理はもちろん、コミュニティ内でのバーチャル競争やランキング確認なども可能になっている。
さて、Nike + iPodを始めるのに必要なものは3つだ。まずiPod nanoが音楽を聴くのに必要となる。次に、Nike + iPod対応シューズ。これはランニングに必要だ。そして「音楽とランニングをつなぐ」役目を果たすのが、センサーとレシーバーがセットになった『Nike + iPod スポーツキット』だ。
センサーには「圧電型加速度計」と「無線送信機」が組み込まれているが、この圧電型加速度計とは、ウォーキングやランニング時に足が地面を蹴る強さを感じ取り、それによって接地時間を計るものだ。そして、この接地時間を元にしてペースを判断する仕組みとなっている。
無線送信機は、圧電型加速度計で計測したデータをリアルタイムで送信するためのもの。使用する周波数帯は2.4GHz帯で、これはワイヤレスLANやBluetooth、PCのワイヤレスキーボードやワイヤレスヘッドホンなどに使われている。家庭用のコードレス電話で使われることもある。他の機器と同じ周波数帯を使用するということで電波の干渉も懸念されるが、これについては独自のプロトコル(通信方式)を採用することで回避されている。
センサーを取り付ける場所はNike + iPod対応シューズの内部だ。左足側のインソール(中敷き)を外すと、その下に専用のポケットが用意されている。ここにセンサーをはめ込むだけで準備完了!
センサーのサイズは34.8×24.1×7.6ミリで、重量も6.5グラムと軽い。毎回、電源をオン、オフする必要はなく、シューズ内部にセットしたままでも問題ない。長い期間使わないような場合には、スリープにしておくこともできる。シューズに取り付けても重さを感じたり違和感を覚えたりということはなく、その存在を忘れてしまうほどだ。
一方、無線受信機であるレシーバーは、iPod nanoとセットで使用する。役割は、センサーから送信されてくるデータを受信すること。このデータをiPod nanoのソフトウェアで処理して、ペースや距離、消費カロリーなどをリアルタイムでディスプレイに表示するわけだ。こちらも小型・軽量で、サイズは26.2×15.7×5.6ミリ、重量は3.4グラムとなっている。

 
 
 
  音楽と目標設定により、走ることが楽しくなる
 

iPod nanoのメニューにある「Nike + iPod」を選んで、ワークアウトを開始

では、実際にランニングをする際の流れを見ていこう。と言っても、特に難しい操作は必要ない。センサーとレシーバーをそれぞれシューズとiPod nanoにセットして、iPod nanoのメニューから「Nike + iPod」を選び、ワークアウト(運動)を開始するだけだ。
ワークアウトを開始すると音楽が再生され、iPod nanoのディスプレイには再生中の曲についての情報のほか、距離・時間・ペースといったワークアウト情報がリアルタイムで表示される。ワークアウト情報は、センターボタンを押すことで音声フィードバックによっても知ることができる。目標を設定している場合は定期的に音声フィードバックが行なわれ、「ワークアウトは残り10分です」など、目標の到達状況を声で教えてくれる。ワークアウトの開始や終了のアナウンスもあり、パーソナルアシスタントが一緒に走ってくれているような気分を味わえる。
面白いのは「PowerSong」という機能。iPod nano内にある曲の中から1曲を登録しておいて、センターボタンの長押しでいつでも呼び出せるようにするものだ。たとえば、聴くとテンションの上がるお気に入りの曲を選んでおいて、ワークアウト終了間際の苦しい時に再生して気合いを入れ直す、というような使い方が考えられる。
ワークアウトは目標を設定しない基本タイプと、目標を設定して行うタイプのどちらかが選択可能だ。設定できる目標は「走行時間」「走行距離」「消費カロリー」の3種類から選べ、それぞれのプリセットの数値を選択しても良いし、自分で数値を指定しても良い。たとえば「前回は20分間走ったから、今回は30分間走り続けることを目指そう」とか「今日は食べ過ぎちゃったし、今から300キロカロリーを消費するぞ!」というような使い方ができるわけだ。もちろん、目標を設定した場合でも、目標到達前にワークアウトを終了することは可能だ。
なお、消費カロリーを算出させるためには、自分の体重をiPod nanoに登録しておくことが必要となる。「Nike + iPod」メニューの「設定」の項目から登録できる。より正確な消費カロリーを算出するために、常に最新の体重にアップデートしておくと良いだろう。

データの取り込みなどには『iTunes』を使用

更に「Nike + iPod」では、ペースや距離、消費カロリーなどiPod nanoに記録されているデータをPCに取り込み、インターネットと連動させることで、今までとは異なるワークアウトの楽しさが用意されている。もちろんデータの取り込みに難しい作業はまったくない。iPod nanoに付属のケーブルを使用してPCに接続するだけで、アップルの音楽ソフト『iTunes』が自動的に起動し、ワークアウト・データを取り込んでくれる。そして、そのデータをnikeplus.comに送信することで、自身のデータ管理はもちろん、世界中の仲間と一緒にワークアウトを楽しむ事が出来るのである。

 
 
 
  毎回のデータを専用サイトに蓄積。コミュニティ機能も用意される
 

ワークアウトのペースはグラフで表示される

自分のランキングを確認できる

有名アスリートのインタビューも掲載

nikeplus.comはNike + iPodのユーザ向けにナイキが提供しているサイト。「My Runs」「Community」「Sport Music」のセクションが用意され、ワークアウト・データの自己管理や長期的な目標設定、コミュニティへの参加、コンテンツの購入などが可能だ。
「My Runs」セクションでは、自分のワークアウト・データが蓄積されており、過去のものも簡単に確認できる。日々行ったワークアウトで記録されたペースは、グラフで表示され、自分の走りがどうだったのかが一見して分かるようになっている。たとえば、走行ペースが一定でない場合はグラフは山あり谷ありのものとなり、逆にペースが一定であれば平坦なグラフとなるといった具合だ。単に「何km走った」とか「累計で何時間走った」という数字が出てくるだけではないので、「なるほど自分の走りはこうだったか」とか、「この時は区間タイムがずば抜けて速かった」など、ランニング自体への興味が一層沸いてくる。こうして自分の状況を、客観的に把握する事で、次回のワークアウトへのモチベーションアップにもつながるというわけだ。

「Community」セクションでは、世界中のランナーたちとバーチャルで競い合うことも可能だ。現在、nikeplus.comを利用しているのは、日本や米国、ヨーロッパ、ニュージーランド、香港など計14の国と地域。このセクションの「RUN WORLD」というコーナーでは、ユーザがサイトにデータを送信する度に、そのユーザが住む国の地図上にリアルタイムでユーザ名などが表示される。次々に表示されるさまを眺めていると、nikeplus.comというサイトの向こうに広がる「世界」が感じられ、あたかも世界中のランナーと一緒にランニングをしているような気分にさせられてしまう。
また「Community」セクションの「LEADERBOARD」コーナーでは、「距離」「時間」「5kmの最速タイム」などといった項目における自身の(Nike + iPodユーザ内)世界ランキングを確認することができる。また、たとえば「男性で、30〜39歳で、日本のユーザ」という具合に、性別や年齢、地域を指定してランキングの範囲を絞り込むこともできるので「まだまだイケる!」と自信を深めることも、「もっと頑張ろう」と決意を新たにすることもあり、一人でランニングをしているよりも、はるかに楽しい。
「Sport Music」セクションには、有名アスリートやアーティストたちとのコラボによるコンテンツなどが用意される。「POWERSONGS」コーナーでは、陸上の為末大選手や格闘家の宇野薫選手などが、インスピレーションを受ける曲やランニング時に聴きたい曲などをセレクト。インタビューも掲載されている。「WORKOUTS」では、スピードアップや持久力アップなどを目的としたワークアウトに合わせて、アーティストがオリジナルミックスを提供している。そして、この「Sport Music」セクションで提供されている楽曲は、アップルの音楽配信サービス『iTunes Store』で購入可能だ。

 
 
 
  誰でも簡単に世界中の仲間と走れる
 
竹澤崇さん

今回、お話をうかがった株式会社ナイキジャパンの竹澤崇さん

「音楽はスポーツと密接な関係にあり、テンションを良い状態に持っていったり、あるいは高ぶった心を落ち着かせたりと、メンタル面で非常に重要な役割を果たします。Nike + iPodでは、音楽とランニングを結びつけることをベースに、それ以上のプラスアルファの価値を生み出したいと思いました。苦しくて孤独な作業になりがちなランニング中には、パーソナルトレーナーと一緒に走るような感覚を加え、更にnikeplus.comを通してコミュニティに参加することで、ランナーは走ることへのモチベーションを維持することができます。こうした形でナイキがランニングに携わることによって、今までになかったような世界観を目指したのです」(株式会社ナイキジャパン・竹澤崇さん)
Nike + iPodの一番の魅力は、このプロダクト&サービスが誰もがテクノロジーを意識しないで利用できるからに他ならない。センサーとレシーバーをセットするのはすぐにできるし、ランニング中に使う操作ボタンも少ない。iPod nanoの操作はシンプルで、iTunesもインターフェースが考慮されたソフト。nikeplus.comには、取り込んだデータは自動で蓄積され、それを使って他のユーザと比較したり、あるいは紹介されている楽曲を購入したりするのも、非常に簡単だ。「道具を使いこなす」という点で、ほとんど、どこにもストレスが存在しないというのは、大切な事だろう。Nike + iPodで、三日坊主ランナーが減り、お父さん達のメタボリック症候群も減るかもしれない。

 

取材協力:

株式会社ナイキジャパン(http://nike.jp/

 
 
田島洋一 0010 D.O.B 1976.2.3
調査報告書 ファイルナンバー013 Nike+iPod「三日坊主で終わらせない!ランニングの強力助っ人」
イラスト/小湊好治 Top of the page

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