無線LANに接続できる機器が増加中だ。最近のノートパソコンはほとんど無線LAN機能が標準で搭載されているし、ソニーのパーソナルコミュニケーター「mylo」やロジテックのSkype専用電話端末「LAN-WSPH01WH」のように、無線LANでの通信に特化した携帯端末も登場した。また、任天堂の「ニンテンドーDS」や「Wii」、ソニーの「PlayStation
3」や「PSP」といったゲーム機にも無線LAN機能が搭載されており、ネットワークを利用した新しい遊び方が可能になっている。
だが、数年前に比べれば飛躍的に増えたとはいうものの、自宅外で無線LANに接続できる場所はまだまだ限られている。空港やホテル、飲食店などだけでなく、道ばたや住宅街などにも接続エリアが広がって、携帯電話のようにどこでも無線LANに接続できるようになれば、我々の生活はますます便利なものになるはずだ。そして、それを実現するサービスとして期待されているのが、無線LAN共有サービスの「FON(フォン)」だ。
FONは、サービス加入ユーザが自分の無線LANアクセスポイントを他のユーザにも開放することで、相互にアクセスポイントを共有するサービス。創始者はスペインの起業家マーティン・バルサフスキー氏で、2005年11月に最初のサービスがスペインで開始されている。開始直後の06年2月には、検索サービスのGoogleやインターネット電話サービスのSkypeなど、有力企業が1800万ユーロを投資して話題となった。その後、ヨーロッパと米国を中心にユーザ数を増やし、現在では世界約150ヵ国にユーザが存在する。07年7月12日現在のユーザ数(全世界)は42万5,469名で、アクセスポイント数(全世界)は17万8,390箇所に上る。
日本では、06年8月に日本法人のフォン・ジャパン株式会社が設立され、06年12月にサービスが開始された。以来、ユーザ数は順調に伸びており、07年7月12日現在のユーザ数(日本国内)は3万3,824名、アクセスポイント数(日本国内)は1万8,795箇所となっている。
FONに参加するには、自宅がブロードバンドの常時接続環境であることが条件となる。その上で、まずFONのサイトから無料のユーザ登録を済ませ、「Fonero(フォネロ)」と呼ばれるユーザになることが必要だ。ユーザの種類は3種類あり、それぞれ「Linus(ライナス)」「Bill(ビル)」「Alien(エイリアン)」と呼ばれている。
Linusは、自宅にFON専用の無線LANルータ「La Fonera(ラ・フォネラ)」を設置してアクセスポイントを無料開放することを条件に、他ユーザが開放しているアクセスポイントを無料で利用することが可能だ。Billは、La
Foneraを自宅に設置してアクセスポイントを有料で開放するが、他ユーザーの開放したアクセスポイントを無料で利用する。Alienはアクセスポイントの開放はせず、他人のアクセスポイントを有料で利用するタイプのユーザだ。
現在、フォン・ジャパンはLinusのサービスのみを提供している。というのも日本では、営利目的で他人にネット回線を提供する者は電気通信事業法の適用を受けるため、Billのサービスを提供するとなると、非常に煩雑で高度な知識を要する手続きをユーザに強いることになる。そのためフォン・ジャパンではこのBillのサービス提供を行なっていない。またAlienは、現在は提供していないが、今年の秋頃にはサービス開始を予定しているそうだ。 |