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新IT大捜査線 特命捜査 第17号 携帯GPSサービス「位置情報を利用して便利と安心を手に入れる!」
 
  携帯電話へのGPS搭載は当たり前の時代に
 

人工衛星からの電波を利用して、人や物の位置を割り出す事ができるGPS(Global Positioning System:全地球測位システム)。元々は軍事用に開発されたシステムだが、民間に転用されたその技術はカーナビゲーションや登山用のハンディGPS端末などにも使われている。そして、最近、この機能の搭載が最も進んでいるのが携帯電話だ。
携帯電話へのGPS搭載が進んだのは、総務省の判断によるところが大きい。2004年5月、総務省は携帯電話から緊急通報をした際に通報者の位置情報を自動的に警察や消防などに通知するシステムの有効性に着目。今後は、3G携帯電話へのGPS搭載を原則的に義務づける方針を打ち出したのだ。その後、携帯電話キャリア各社はGPS搭載端末の数を増やし、2007年4月にはGPSを利用した「緊急通報位置情報通知」機能が開始されている。

KDDIは、他社と比べても早い段階から、「au」の携帯電話端末にGPSを積極的に搭載してきた。2001年12月にはGPSを利用したナビゲーションサービス「ez navigation」を開始し、その後も着々と機能を拡大。現在では「EZナビウォーク」と「EZ助手席ナビ」に分かれてナビゲーションサービスの提供が行なわれているほか、位置確認サービス「安心ナビ」や災害時の行動支援サービス「災害時ナビ」も提供している。

 
 
 
  現在地確認とルート案内ができる歩行者用ナビゲーションサービス
 
ルート案内画面

ルート案内画面では、進むべきルートと自分のアイコンが地図上に表示される。
【提供:KDDI Navigation Engine by NAVITIME JAPAN 地図 :昭文社 / 住友電工】

「3Dナビ」機能

歩き始めや曲がり角などで立体的な3D地図を自動的に表示してくれる「3Dナビ」機能。
【提供:KDDI Navigation Engine by NAVITIME JAPAN 3Dデータ:ゼンリン/ジオ技術研究所 Z06A-第2137号】

「声de入力」機能

文字を入力する代わりに、音声だけで検索を行なう条件を入力できる「声de入力」機能。

「EZナビウォーク」は、GPS搭載端末で利用できる、歩行者用のナビゲーションサービスだ。自分の現在地を地図で確認する事ができ、周辺の天気情報や交通情報なども手に入れられる。また、目的地を設定して電車の乗り換えなどのルート検索を行ない、その前後の徒歩部分までを含めた目的地へのルートを案内してくれる。目的地周辺の店舗や施設の情報を見る事もできる。道に迷ってしまった時に、自分が今どこにいるのかを知りたい場合にも役立つし、仕事や遊びなどでどこかに外出する際にも使えるサービスなのだ。
現在地を確認するのは簡単だ。「EZナビウォーク」のアプリを起動し、「地図を見る」から「今いる場所の地図」を選択すれば、GPSを利用して得られた位置情報が地図に表示される。地図は拡大縮小が自在なので、詳細地図で路地の一本まで確認できるし、広域地図で自分の居場所を知る事もできる。また、道に迷ってしまった場合は、自分の位置情報を記したメールを送信して、友だちや家族に自分の居場所を正確に知らせる事も可能だ。

外出の際の目的地設定では、「銀座 ラーメン」などのフリーワードの他、訪問先の電話番号や郵便番号から検索する事ができる。検索結果が一覧で表示されるので、その中から一つを選択して「ここへ行く」を選べば、現在地を出発地にしてルート検索が行なわれる。更にそこで表示された経路の候補から一つを選べば、その経路でのルート案内が開始される仕組みだ。
目的地を設定する際には「声de入力」機能も利用できる。文字通り、検索を行なう条件を文字で入力する代わりに音声だけで入力するもので、携帯電話に向かって「六本木」などのように行き先を言うだけで良い。通話でもないのに携帯電話に向かって声を出すというのは、実際に街中でやるとなるとちょっと人目が気になるかもしれない。だが、携帯電話で通話しているのであれば誰も気にはしないのだから、最初は戸惑うかもしれないが、慣れてしまえば非常に効率的な機能だと言えるだろう。

さて、ルート案内を開始すると、地図上には進むべきルートと自分の現在地を表わす人の形をしたアイコンが表示される。このアイコンは、自分が移動するのに伴って地図上でも移動し、地図も自動でスクロールされる。電子コンパス対応機種では、自分が向いている方向に合わせて地図も回転。進行方向が常に画面の上になる「ヘディングアップ」機能にも対応しており、地図を読むのが苦手な人でも迷いにくい。また、曲がり角や目的地の近辺では、携帯電話のバイブ機能と音声を使って知らせてくれるので、画面を見つめ続ける必要はない。そして、もしも道を間違えて表示されたルートから外れてしまっても、「リルート」機能によって新しいルートが設定できるので安心だ。

迷いやすいポイントで効果を発揮するのは「3Dナビ」機能だ。歩き始めや曲がり角などで立体的な3D地図を自動的に表示してくれるもので、現在、提供エリアは、東京23区内および政令指定都市の一部で主要交差点から50メートル程度の道沿いに限られているが、非常に直感的で分かりやすい機能だと言える。ルート案内中には、メニューから周辺の情報も検索できる。駐車場やコンビニ、銀行ATMなどがカテゴリーから探せるほか、「ラーメン」「書店」などのフリーワードでも検索する事ができる。訪問先に向かう途中でお金をおろす必要があったり、食事がしたくなった時などに便利だ。「EZナビウォーク」の情報料は、24時間使えて95円(税込み)の「お手軽!24時間コース」と月額210円・315円(税込)の「使い放題!月額コース」から選択できる。315円の「使い放題!月額コース」では、道路情報や鉄道運行情報、リアルタイムバス運行が利用可能になる。地図を見る、あるいは乗換検索(一部メニューを除く)をするだけなら、無料での利用で充分事足りるだろう。

 
 
 
 
 
ガイドモード

「ガイドモード」では、サービスエリアの空き情報や周辺施設情報をアイコンで表示。

ターンモード

「ターンモード」は、曲がり角などの案内ポイント情報を分かりやすく表示。
【上記二点提供:KDDI Navigation engine by NAVITIME JAPAN 地図:昭文社/住友電工 交通情報:VICS/JARTIC】

クルマで出かける時には、同乗者向けナビゲーションサービス「EZ助手席ナビ」を利用する。「EZナビウォーク」と同じく、目的地を設定してルート検索を行ない、その後のルート案内も行なってくれるもので、天気や店舗・施設などの周辺情報を見る事もできる。目的地を設定する際には「声de入力」機能が利用できる。なお、クルマの走行中に携帯電話の操作は同乗者が操作するか、安全な場所にクルマを停止させてから操作する事が必要だ。情報料は、24時間使えて157円(税込み)の「お手軽!24時間コース」と月額315円(税込み)の「使い放題!月額コース」から選択できる。

ルート案内は画面表示のほか、音声案内によっても行なわれる。画面の表示モードは、自分の好みのものに切り替える事ができる。「地図モード」はカーナビでおなじみのスタイル。進むべきルートが示された地図上の現在地には自分のクルマのアイコンが表示され、「ヘディングアップ」機能にも対応している。また「ガイドモード」では、サービスエリアの空き状況の他、レストランやガソリンスタンドなどの情報をアイコンで表示。高速道路の料金所では、高速料金の表示もしてくれる。更に「ターンモード」は案内ポイントの情報を分かりやすく表示していて、地図から曲がり角や道路の名前などを読み取る事が苦手な人には、お勧めのモードだ。

走行中に重宝するのは、全国の渋滞情報や道路情報をリアルタイムで入手して、自動でルートの再検索を行なってくれる「リアルタイムオートリルート」機能だ。渋滞情報は、カーナビでも使わていれるVICS(Vehicle Information & Communication System)によるもの。刻々と変化する交通情報を反映させたルート検索を行なうため、渋滞の回避が可能となる。また、道を間違えたりルートから離れたりした際に自動的にルートを再検索する「オートリルート」にも対応。駐車場やガソリンスタンドなどの施設情報の検索や目的地の天気情報が入手できるのは、「EZナビウォーク」と同様だ。

 
 
 
  目的に合わせたガイドマップをダウンロード
 
おすすめスポットのアイコンを表示
おすすめスポットの詳細情報

ダウンロードしたマップ上には、グルメや観光などのおすすめスポットのアイコンを表示。

おすすめスポットの詳細情報も見られる。そのまま目的に設定してルート案内を開始する事もできる。

【提供:KDDI Powered by SEC】
【(C)2002 GOURMET NAVIGATOR INC. All rights reserved. /(C)昭文社】

今夏からは、アウトドアやグルメ、タウン情報、観光スポットなどのジャンルの情報をマップとともにダウンロードする「EZガイドマップ」のサービスも開始された。2007年9月現在では、グルメマップの「ぐるなび」(提供:ぐるなび)やタウン情報の「日刊ウォーカー」(提供:角川クロスメディア)、釣りマップの「スポニチ釣りMAX」(提供:スポーツニッポン新聞社)など、9サイトからダウンロードが可能となっている。情報料はサイトごとに異なるが、1回のダウンロードにつき31円〜315円(一部月額課金サイトあり)。ダウンロードしたマップは携帯電話のデータフォルダに保存され、その後何度でも閲覧できる事を考えると、リーズナブルな価格だと言って良いだろう。

「EZガイドマップ」の使い方は至って簡単だ。ダウンロードしたマップ上には、自分の現在地のほかにおすすめスポットのアイコンも表示される。それらをクリックすれば詳細な情報が表示され、そのスポットに行きたければ「EZナビウォーク」や「EZ助手席ナビ」でルート案内を開始すれば良い。

幡容子さん

今回お話をうかがった、KDDI株式会社 コンシューマ商品企画本部 auサービス本部 ライフサポートビジネスグループリーダーの幡容子さん。

「『EZガイドマップ』の地図は、規格が公開されているベクターグラフィックスの標準形式『SVG形式』のものを使用しているので、コンテンツプロバイダ(CP)さんに自由にカスタマイズしていただく事が可能です。すでに興味を示していただいているCPさんもいらっしゃいますし、魅力的なコンテンツをお持ちのCPさんには、是非、提供をお願いしたいと思っています。ユーザにとって有益なコンテンツがどんどん登場し、この市場全体が盛り上がるのを期待しています」(KDDI株式会社 コンシューマ商品企画本部 auサービス本部 ライフサポートビジネスグループリーダー 幡容子さん)
現状では、CP側はこの市場の規模を計りかねている部分もあり、様子見の状態になっている会社も多いそうだ。しかし、人々は多様なレジャーを楽しんで、さまざまなニーズを感じているのだ。ちょっと想像するだけでも、例えばフットサルコートやリラクゼーション施設、夜景スポットなど、さまざまなジャンルのガイドマップが頭に浮かぶ。ユーザに対してこのサービスの認知を徹底できれば、すぐさま普及が進む可能性は非常に大きいのではないだろうか。さまざまなコンテンツが「EZガイドマップ」のラインアップに並ぶのは、それほど遠くない時期になりそうだ。

 
 
 
  もしもの時に備えて安心を提供するサービス
 
安心ナビ

特定の人の居場所を確認したり、指定したエリアへの出入りをメールで通知してくれる「安心ナビ」。

帰宅支援マップ

勤務先から自宅までの帰宅ルートがわかり、いざという時に安心な「帰宅支援マップ」。
【地図:昭文社/調製:アジア航測】

さて、上記のサービスは主に外出を楽しくする「便利」系のサービスだが、日常生活での「安心」系サービスも忘れるわけにはいかない。
「安心ナビ」は子供などの居場所を確認したり、指定したエリアへの出入りをメールで通知したりするサービスだ。これは、GPSの位置情報を利用したものとしてはイメージしやすいサービスだろう。居場所の確認はPCからも行なえ、月額利用料は315円となっている(無料機能もあり)。

更に、今夏から提供開始されたのが「災害時ナビ」だ。携帯電話端末内に全国の広域避難所や主要道路の地図があらかじめセットされており、災害時にこれを参照できるサービスだ。他に有料のマップも用意されており、勤務先から自宅までの帰宅ルートが分かる「帰宅支援マップ」(315円/ダウンロード)や、建物などの詳細な様子が分かる「航空写真マップ」、土地の高低差が分かる「立体防災マップ」、指定地域の詳しい避難所情報が分かる「地域避難所マップ」(各210円/ダウンロード)がダウンロード可能だ。

この「災害時ナビ」でも、地図上に自分の現在地アイコンが表示されて移動をサポートしてくれるのだが、面白いのは「太陽アイコン」の表示だ。これは自分から見た太陽の方角を表わしたもので、例えば「太陽が自分の左後方で、進むべき方角は右前方」といった具合に、実物の太陽と自分との位置関係から自分の進むべき方角を正確に割り出すことができるのだ。災害時には建物の崩壊などによって、地図と実際の風景にギャップが生じ、目印になるものが見つからない事がある。あるいは、ふだん地下鉄で通勤している人などは、自分の勤務先からどの方向へ歩き出したら自宅に着けるのかまったくわからない人もいるだろう。もちろん日中しか使えないが、そのような場合には非常に重宝すると思われる機能だ。

ところで、「災害時には携帯電話が使えなくなってしまうのでは?」という疑問が浮かぶ人もいるのではないだろうか。だが、その心配は無用だ。この「災害時ナビ」では基地局からの電波を使わないでも、GPS衛星からの電波だけで測位が可能な「StandaloneGPS」機能に対応している。大地震などで基地局にダメージが与えられ、通信が困難になってしまっているケースでも位置情報を取得できるのだ。ただし、通常の基地局を併用した仕組みよりは、初回の測位に時間がかかる(約2〜3分)ことには留意しておきたい。
このサービスは、災害という「良くない事」が起こった時にその実力を発揮するものであり、平常時にはなかなかそのメリットをが実感できないかもしれない。だが、いざという時にパニックにならない備えをしっかりしておけば憂いもなくなるというもの。時間に余裕がある時などに災害時の帰宅シミュレーションを行なってはいかがだろう。

携帯電話に搭載されたGPSは、単に迷った時に役立つというだけではなく、より効率的で便利な外出を楽しみたいという目的や、日々の暮らしでの「安心」を守る方向にシフトしてきている。総務省による「お墨付き」をもらった事で、今後ますます搭載端末の数は増えるだろうし、ユーザの使用率も高まる事が予想される。市場としての規模が大きくなれば、提供されるサービスの質も量も高まるのは当然の流れであり、しばらくはこの分野では活発な動きが展開されそうだ。

 

取材協力:KDDI株式会社(http://www.au.kddi.com/

 
 
坂本剛 0007 D.O.B 1971.10.28
調査報告書 ファイルナンバー017 携帯GPSサービス「位置情報を利用して便利と安心を手に入れる!」
イラスト/小湊好治 Top of the page

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