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三洋電機の従来型ニッケル水素電池「2500シリーズ」とeneloopの容量残存率の比較。 |
eneloopにおける一番の技術的な特長は、自己放電を抑制した点だ。これにより、従来のニッケル水素電池に常に付きまとっていた「充電しても放っておくと使えなくなってしまう」という弱点が解消されている。
化学電池では、内部に充填された電解液中で正(+)極と負(−)極という2つの電極が化学反応を起こし、そこで生まれたエネルギーが放電される仕組みで、ニッケル水素充電池の場合は、正極に水酸化ニッケルを、負極には水素吸蔵合金(金属結晶内に水素をとらえる合金)を使用している。自己放電とは、実際に機器につないでいなくても、放置しておくと電池内で化学反応が起き、電池の容量が減ってしまう現象だ。原因はいくつかあるのだが、そのいずれも電池内で自然に起こる化学反応で、充電池だけでなく乾電池でも起きている。ただ特に充電池で顕著な現象で、フル充電されていても長い時間放置されていると徐々に残りの電池容量が減ってしまうため「充電池は放っておくと使えなくなってしまう」という弱点につながるというわけだ。
eneloopではこの自己放電を抑制するために、まず負極の材料として使用されている超格子合金を高性能化した。超格子合金は三洋電機独自のテクノロジーが使われた素材であり、03年に世界に先駆けて実用化されて04年には市販用ニッケル水素電池に初採用された。現在、同社のニッケル水素電池の製造では、重要な核となっている素材だ。その他、電池材料の構成技術や極板材料の製造技術等を向上させた事で、電池容量の減少を抑える事につながったのだという。
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充電直後と放置後の充電池における電池電圧の低下を表わしたグラフ。 |
具体的に、同社の従来型ニッケル水素電池「2500シリーズ」では半年後の容量残存率が約72%であるのに対して、eneloopでは約90%という結果が出ているそうだ。同様に、1年後には約64%だったものがeneloopでは約85%に、2年後には0%だったものが約75%まで向上しているのだという。驚異的な進歩と言って良いだろう。
また、一般的なデジカメ等では電池残量を電圧で推測するシステムを使っているが、従来の充電池は放置しておくと実際の電池残量が十分に残っていても「電池残量小」と表示されることがあった。この弱点を解消するため、eneloopでは電圧を若干高くした。電圧が高くなっても、電池残量が低下する割合は同じなのだが、「電池残量小」の表示のタイミングが、実際の電池残量により近いものになり、結果的に電気を無駄なく使い切れるというわけだ。
こうした技術の開発によって「買ってすぐ使える」「パワフルで長持ち」「約1000回繰り返し使えて経済的」という、乾電池の特性も兼ね備えた充電池が実現した。従来の充電池は、使い勝手の部分ではどうしても乾電池に劣ってしまうところがあった。例えば、テレビのリモコンの電池が切れた時、替えの電池がすぐに使えないのでは困る。だから、替えの電池をコンビニまで買いに行った時に、これから充電しなければいけない充電池を選ぶ人はまずいなかっただろう。しかしeneloopなら、自己放電が低く抑えられているので、充電池でありながら、充電された状態で販売する事ができるようになった。
更に言えば、リモコンのように毎回の消費電力が小さく電池を取り替える頻度が少ない製品には、そもそも充電池は向いていなかった。これは、実際に電池容量を使い切るよりも早く自己放電が進んでしまったためだ。だがeneloopは、リモコンも含めたいろいろな機器で使用できる。充電池と乾電池の使い分けを考えなくてもいいのは、利用する側には非常に便利だ。 |