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災害対応型自動販売機。本体上部の電光掲示板には、災害情報やニュース等を表示することができる。 |
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2007年4月の能登半島地震の際には、輪島市内2ヵ所でフリーベンド機能により飲料の無償提供が行われた。 |
「日本は地震が多い国」というのは、今さら言うまでもない常識だろう。震度3程度の揺れは頻繁に経験するし、テレビの緊急地震速報にも慣れっこになってしまう。地震の少ない国から来日した外国人が非常に驚く(中にはパニックになる人もいるとか)事柄の一つには、この地震の多さ(とそれに対する日本人のリアクションの薄さ)があるそうだ。
もう一つ、外国人が日本にやってきて驚く事柄としては、街中に設置された自動販売機の多さも挙げられるだろう。日本国内の自動販売機の普及台数(2006年末時点、日本自動販売機工業会調べ)は約550万台。飲料用だけに限っても、その半数近くの約265万台だという。総数では米国より少ないそうだが、人口や国土面積を考慮に入れると体感での設置数の多さは世界一だろう。しかし日本人には自動販売機の多さはそれほど気にならず、生活の中に当たり前にある景色の一つになっている。
さて、「唐突に関係のない話題を並べて、いったい何のつもりだ?」と思われたかもしれない。しかし「日本国内で遭遇する頻度が高いもの」という共通項目しか持たないように思われるこの二つの事柄をつなぐのが、今回のテーマである「災害対応型自動販売機(地域貢献型自動販売機)」なのだ。
災害対応型自動販売機というのは、日本コカ・コーラと全国12のボトラー社等からなる企業体コカ・コーラシステム(以下、コカ・コーラ社)が、設置先の自治体等との間に締結する災害支援協定に基づいて共同で設置しているもので、大地震などの大規模な災害が起こった時に遠隔地からの無線操作により自動販売機内の飲料を無償で提供できる機能(フリーベンド機能)が搭載されている。この機能が稼働すると、自動販売機のボタンを押せば、自動販売機内に残っている飲料がどれでも無料で入手できるようになるのだ。また電光掲示板機能も備えているため、災害時には災害情報を提供することが可能。この電光掲示板機能は、平常時にはニュースや時報、自治体からの地域のお知らせ等を配信するメッセージボードとして利用される事が多く、日常的に地域におけるインフラの一つとして機能している。
設置場所は、災害支援協定を締結している地域の役所庁舎を始めとして、市民体育館や自治体関連施設等、災害時に避難場所となり得る公共性の高い場所が中心となっている。全国で初めて設置されたのは埼玉県上尾市の市役所。これが2003年3月の事で、その後、設置台数は自動販売機の社会的な価値の高まりに合わせて伸張傾向を示している。全国の様々な地域に設置されており、2008年1月現在では約4000台だ。
災害時にフリーベンド機能が役立った事例も既にある。2004年10月の新潟県中越地震では新潟県長岡市役所に設置された災害対応型自動販売機のフリーベンド機能が実際に稼働した。また2007年4月の能登半島地震の際にも、輪島市内に設置された2ヵ所で稼働し、地域の住民に緊急時の飲料を提供して支持を得た。 |