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新IT大捜査線 特命捜査 第29号 ITだから継続できる健康管理「スポーツクラブの健康管理システム」
 
  マシンをネットワーク化して自動記録
 
コナミスポーツクラブ 全景

コナミスポーツクラブ武蔵小杉は、東横線武蔵小杉駅から徒歩1分。

e-XAX 個人認証キー

腕時計のように手首につける個人認証キー。電子ロッカーの鍵にもなっている。

e-XAX カロリーマスター

個人トレーニングの履歴が確認できる「カロリーマスター」。

今回取材に伺ったのは、神奈川県川崎市中原区にあるコナミスポーツクラブ武蔵小杉。2008年6月にオープンしたばかりのスポーツクラブだ。武蔵小杉駅から徒歩1分。トレーニングマシンのほか、5コースの25mプール、2つのスタジオなど充実した設備を有している。こちらで提供しているのは、ITを使ってクラブの外の運動をも含めたトータルなトレーニングサポートだ。同施設のマネージャー、西村吉弘さんに、IT健康管理システムについて聞いた。

「コナミスポーツクラブでは、メタボ対策やダイエットをきっかけとして入られたお客様にも、生涯スポーツとしてのジムトレーニングや水泳などを提供して、健康維持に役立てていただくことを考えています。週に1度か2度のジム通いであっても、お客様の要望に沿った効果的なプログラムを提供したいのです。健康維持のためには、家庭でのトレーニングもやられたほうがいいですし、トレーニングの経過を正確に記録しておくことも大切です。そのために、ITを活用すれば非常に効果的なのではないか。こうした考えに基づいて、開発されたITシステムがe-XAXです」

e-XAX(イー・エグザス)とは、コナミスポーツ&ライフが開発、コナミスポーツクラブに随時導入し、全国約60施設で稼働しているITシステムだ。これはスポーツクラブ内にあるほとんどのトレーニングマシンをネットワーク化している。ユーザはデータ管理を行う情報端末「カロリーマスター」をつなぐことで、自分のトレーニング成果を時系列で見られるようにと考えられた「個人トレーニング履歴管理システム」といえる。

e-XAXの利用の流れは次のようになる。

1)ユーザは、チェックイン(入館)時に「個人認証キー」を受け取る。「個人認証キー」はe-XAXの個人データとひも付けされ、それぞれのマシンにキーをかざすだけで、本人であることが認証される。

2)「個人認証キー」は電子ロッカーのキーにもなっているので、ユーザはロッカーで着替えてマシンジムに向かう。

3)マシンジムの入り口には、ユーザ用の情報端末「カロリーマスター」があるので、ここで「個人認証キー」をカロリーマスターにかざして、本人であることを認識させる。続いてその日の体重と血圧を測る。それぞれの数値は自動的にセンターサーバに記録され、カロリーマスターで確認することができる。

4)マシンジムには、有酸素運動マシンや筋肉トレーニングマシンが設置されている。マシンを使う際は、やはり「個人認証キー」をセンサーにかざすことで、そのマシンが使用できるようにセットされる。筋肉トレーニングマシンの場合、前回使用した負荷データが記録されているので、前回と同じ負荷をかけてトレーニングすることが可能だ。

5)ユーザは、トレーニング結果を記録することを意識せずにトレーニングに専念することができる。ただし、プールとスタジオのトレーニングは、当然のことながら、マシンにつながっていないので、トレーニングの最後に自分で入力する必要があるが、これらも画面をタッチするだけで簡単に行うことができる。

6)トレーニングが終了すると、ユーザは再びカロリーマスターに、個人認証キーをかざし、プールやスタジオのトレーニングを入力する。体重と血圧を測定して、後はシャワーを浴び、着替えれば、トレーニングは終了だ。

こうしたITシステムが導入されていないスポーツクラブでは、受付で渡される個人カードに、それぞれがトレーニングデータを記入するようになっており、データの記入も、累積計算やカロリー計算も人の手(多くの場合、本人かトレーナー)で行わなければならない。

スポーツクラブのITシステムの1番目のメリットは、こうした手入力や計算の労力を省き、見やすく活用しやすいデータにすることにある。

西村さんによると、マシン同士をネットワーク化してデータを自動的に記録するシステムは、他のスポーツクラブでも行っているところがあるというが、コナミスポーツクラブのe-XAXはこれだけに留まらない。自分のトレーニングのデータを、単独のスポーツクラブの中だけで完結させてしまうのではなく、外出先や家庭でのそれもトータルで管理できてしまうのだ。

 
 
 
  外出先や家庭のトレーニングもトータルで
 
e-XAX ネットワーク図

e-XAXのネットワーク概念図。

「外出先や家庭でのトレーニングもトータルで管理する」ために、コナミスポーツクラブでは、次の2つの方法を用意した。

1)全国のコナミスポーツクラブをネットワークで結び、センターサーバを設定
2)家庭でもデータを記録する手段と、センターサーバへのアクセス手段を用意

各クラブのデータは、1日1回、夜間に、本社が管理する「センターサーバ」にアップされる。このデータは各クラブからアクセス可能なため、e-XAXを導入した外出先のスポーツクラブでも、ユーザは同じデータを使用し、記録を追加していくことができる。
例えば、平日は勤務先の会社の近くのスポーツクラブでトレーニングし、週末だけ自宅近くのスポーツクラブを利用するということも可能だし、日本国内の出張先でトレーニングした場合にも使うことができるのだ。

e-XAX イーウォーキーライフ2

ウォーキングとランニングを認識できる歩数計「イーウォーキーライフ2」。

e-XAX 健身計画2 PC用ソフト

スポーツクラブの外でも運動履歴が確認できる専用ソフト「健身計画2」。

家庭でデータを記録するためにコナミスポーツクラブが用意した手段が「イーウォーキーライフ2(e-walkylife2)」という歩数計だ。
歩行とランニングを認識できるので、自宅でのランニングや通勤などで歩いた歩数、消費カロリーなどを、歩数とカロリーに分けて、2週間分の履歴を表示し、1年間分のデータを記録することができる。
イーウォーキーライフ2に記録されたデータは、専用ソフトをインストールしたパソコンから、クラブのサイト経由で、センターサーバにアップすることもできるし、ユーザがスポーツクラブに来たときに、クラブ内にあるパソコンから、センターサーバに転送することも可能だ。

最近では、家庭用ゲーム機でフィットネスに対応したものがブームだが、こうした運動をデータに反映することも可能だ。それには、ゲームをする際に、イーウォーキーライフ2を携帯しておくだけでOK。その運動量が消費カロリーとしてイーウォーキーライフ2に記録されるのだ。

つまりイーウォーキーライフ2を使用することで、クラブでのトレーニングだけでなく、家庭や職場の休憩時間などのトレーニングもトータルで管理することが可能になるというわけだ。

 
 
 
  データ管理によってもたらされるものとは?
 
e-XAX カロリーマスター トップ画面
e-XAX カロリーマスター 身体グラフ
e-XAX カロリーマスター カロリーグラフ
e-XAX カロリーマスター 目標

トレーニングの最初と最後にチェックするカロリーマスターの画面。目標に対して、どれだけ達成できたかが一目で確認できる。

e-XAX ボディスキャン

より詳しい身体のデータを計測するための「ボディスキャン」。筋肉量や水分率、骨量、体脂肪や内臓脂肪断面積指数、基礎代謝量など12項目を計測。こちらは別途有料。

それでは、e-XAXによるデータ管理が、ユーザにどのような効果をもたらすのだろうか。西村さんは次のように言う。

「スポーツクラブのお客様の最大の問題は、トレーニングを継続することがなかなか難しいということです。そのために、データをきちんと記録し、それを見るということはお客様の“意識付け”になり、モチベーションを高めるために役に立つのです」

昨年、ベストセラーになったダイエット本に、毎日食べるものをひたすらメモすることで痩せられたという体験を書いたものがあるが、自分の行動を改めて目に見えるようにすることで、人は意識と行動を変えることができるということなのだろう。

これだけ運動をしたから体重が何キロ痩せたとか、こんな運動をしたから脚やウェストが細くなったという成果や達成感、あるいは逆に、ここでさぼったことがリバウンドにつながったなどということが、客観的なデータによって本人に自覚され、それがトレーニングの継続につながっていくようだ。

「スポーツクラブを上手に利用するコツは、トレーナーを利用することです。トレーナーは、専門知識を持っているので、トレーニングにあたって、いろいろ相談すると自分にあったトレーニング方法を聞くことができ、トレーニングの成果も上がるし、クラブに来ることが楽しくなるのです。ところが、残念な事に、トレーナーが話しかけても敬遠するお客様や、トレーナーに何を聞いたらいいかわからないという方も多いのです。そういう時に、客観的なデータがあると、トレーナーも声をかけやすいし、あるいはお客様にとってもそのデータを話のきっかけにすることができるんです。そういう活動を通じて、お客様のモチベーションを高めることにつながります」

家庭でのトレーニングがイーウォーキーライフ2でデータ化されることについては、どうだろう。

「実際問題として、毎日クラブに来られるというのは、一部の自営業の人や引退した方に限られます。平日、仕事をしている方の場合は、週に1度か2度、あるいは月に2〜3回という方も多いわけです。そういうお客様の場合には、スポーツクラブだけのトレーニングの履歴を見ても、あまり面白くない。むしろ毎日のトレーニングの履歴のほうが励みになりますね」

そうした意味で、イーウォーキーライフ2で家庭でのトレーニングを継続的に記録し、スポーツクラブでのトレーニングと合わせて見ることができるのは画期的といえる。更にそれをベースにトレーナーと話すことで、適切なアドバイスをもらうことも大きな意味を持ってくる。

だが、家庭でのトレーニングまでスポーツクラブで管理することについては、ユーザになかなか理解されないことも多い。そこでコナミではまず、イーウォーキーライフ2を普及させるための販促キャンペーンに努めており、その成果も次第に上がっているそうだ。北京オリンピックの際には「がんばれ!ニッポン!ウォークラリー」と題して、東京から北京までの2100km、大阪から北京の1500km、大連から北京の800kmを選んで、チャレンジするといったキャンペーンを行った。エントリーしたユーザは、特別価格でイーウォーキーライフ2を購入、クラブで履歴を登録すると、自分がどこまで歩いたかをホームページ上で確認することができる。更に、クラブの上位5名はキーホルダーをもらえたり、完走者はTシャツをもらえるなど、ご褒美も満載だ。まずユーザに使ってもらおう、そしてその良さを認めてもらって、楽しさを分かってもらいたいと西村さんは言う。

 
 
 
  楽しいクラブライフをユーザに提供するための工夫
 
コナミスポーツ ランニングマシン

休日には予約が必要になるという人気のランニングマシン。30分、60分で自動的に切れるように制御可能。

コナミスポーツ クロストレーナー

クロストレーナーは、階段登りとランニング要素を持ったトレーニングマシン。モニタに「観光ガイド」や「クイズ」「パズル」などを表示しながら有酸素系の全身運動を行う。

コナミスポーツ プール

25mが5コースもある競泳用プール。トレーニング後はカロリーマスターに自分で入力する。

e-XAXのメリットは、各マシンからデータを吸い上げて、個人データとして集計することにあるが、一方で管理者側から集中管理できることから、付随的なメリットも出てきている。
それは、一部のユーザがマシンを独占するという状態を解消するということだ。

どこのスポーツクラブにもハードユーザがいて、一つのマシンを長時間独占してしまい、他のユーザが使えないということが起こる。
これが、ユーザが長続きしない原因の一つにもなっているのだが、e-XAXを利用することで、マシンごとに使用時間を制限することもできる。

そのため人気の高いランニングマシンでは、エリアごとに30分と60分に使用時間を制限し、時間が来るとマシンが止まるように設定。ホワイトボードの予約パネルに名前を記入し、ユーザが平等に使用できるようにルールが決められている。

初心者でもマシンを自由に使用できる環境を提供する。こうした努力もスポーツクラブの運営では大事なことで、ITはこうした場面でも役立っているのだ。

もう一つ。e-XAXに接続されているマシンにはすべてモニタが接続されており、そこにはテレビ、観光ガイドマップ、クイズなどをユーザの選択によって映すことができるようになっている。
ランニングなどのトレーニングの場合、屋外なら景色が次々に変わっていくが、室内のランニングマシンでは単調さだけが際だってしまう。そこで単調なトレーニングであっても、できるだけ楽しく行ってもらうための工夫がモニターに映し出される映像というわけだ。

ネットワークでトレーニングマシンとコンピュータをつないだことによって、実現したこうした楽しいトレーニング環境と、トレーニングデータの有効活用。ITで実現した、新しいトレーニング環境で、地味なトレーニングも楽しく継続できそうだ。

 

取材協力:コナミスポーツクラブ(http://www.konamisportsclub.jp/

 
 
神山 恭子 0012 D.O.B 1966.7.3
特命捜査 第29号 ITだから、継続できる健康管理「スポーツクラブの健康管理システム」
イラスト/小湊好治 Top of the page

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