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「まちのシンボル鐘撞堂」の1/5模型。一般的な博物館と違い、パネルでの解説は少ない。 |
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展示解説端末にICカードをかざすと、サーバ側で自動的に個人が認証される。 |
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お気に入り登録が終わったら、館内のパソコンで自分だけのCD-ROMを作成可能。 |
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膨大登録情報をストックするため、館内にはサーバルームが置かれている。 |
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PDAを使った宝探し的な情報検索。子供たちに人気があるという。 |
まずは数多くの常設展示がある5階へ。このフロアには、「まちのシンボル鐘撞堂」「岡山情報宝庫」「岡山の自然」など、多くの見どころがある。インフォメーションで、長いひもが付いたカードを渡された。はて、これは?
「それは入館の際、皆さんにお渡ししているICカードです。カード自体にICタグが埋め込まれていて、それぞれに個別の識別番号が記録されています。使い方は中に入ってからご説明しましょう。それと、PDA(携帯情報端末)もお持ちください。こちらは希望者の方に利用料金300円でお貸ししているものです。ちょっとした仕掛けがありますので、お楽しみに」と森館長。入る前からITの存在を意識させられるところがデジタルミュージアムらしい。ちなみに、ICカードは正確な入館者数を把握するためにも利用されているという。
入ってすぐの場所にあるのが、まちのシンボルでもある鐘撞堂(かねつきどう)の大型模型。一般的な博物館なら模型のそばに詳細な解説が書かれたプレートがあるが、ここにあるのはごく簡単なものだけ。詳しい情報を得るためにはどうしたらいいのだろう?
と思って辺りを見回すと、近くに展示解説端末らしきものがあった。「モニタ画面の下に読み取りセンサーがありますので、ICカードをかざしてみてください」と森館長。言われたとおりにすると、カード内のICタグで個人が認証された。
ここからが面白い。画面を操作して端末内の情報をお気に入り登録することができるのだ。例えば鐘撞堂に関する情報は約170もあるが、小中学生の学習にはそんなに必要ないかもしれない。そこで、自分が必要だと思った情報だけをお気に入り登録しておく。この段階でICタグと登録情報がひも付けされ、館内のサーバにそのデータが記録される。お気に入り登録した情報は、最後にまとめて館内のコンピュータでCD-ROMに焼き、持ち帰ることができる(記録用CD-ROMは持参または1枚100円で販売)。
このシステム、例えてみれば展示解説端末はパソコンのモニタ、サーバが離れたところにあるパソコン本体のようなイメージだろうか。自作のCD-ROMは自分専用の資料ファイルということになる。
各コーナーに置かれた展示解説端末は全部で19台。全ての端末でお気に入り登録できるわけではないが、この試みはなかなか興味深い。サーバで管理しているので展示物に関する膨大な情報を漏れなくストックしておくことができるし、来館者は受け身の状態で情報を得るのではなく、能動的に情報を取りに行く事が求められる。「そんなの面倒」と感じる人もいるだろうが、ここに新しさを感じる人も少なくないはず。岡山市デジタルミュージアムは、情報に対するアプローチの仕方が従来の博物館とは大きく異なっているのである。
では、PDAはどのように使うのだろう? 身近な自然を再発見し、環境について考える「岡山の自然」コーナーで、森館長がその使い方を教えてくれた。「展示室の壁にたくさんの箱がありますね。その中に、蓋に小さなカードが貼られた箱があるでしょう。カードにPDAのアンテナ部分をかざしてみてください」
すると、中に入っている昆虫についての詳細なデータがPDAの画面に表示された。カードに埋め込まれたICタグが、PDA内の情報とひも付けされているのである。箱の蓋を開けると、中にはその昆虫の標本が入っていた。仕組みは単純だが、ここにはICタグそのものを探して中に入っているものを想像するという、宝探しのようなドキドキ感がある。好奇心に満ちた子供には喜ばれそうだ。
「こちらはPDAの中の情報を利用者の操作に応じて自動的に表示するシステムです。子供の利用を想定しているので、生き物をテーマにしたゲームを楽しむこともできますよ」と森館長。実際、岡山市デジタルミュージアムは、地元小学校の社会科見学の人気コースとなっているという。確かに今の子供たちにとって、テレビゲームや携帯電話、パソコンはあって当たり前の存在。ここではデジタルツールを通して、岡山市の文化や自然、伝統に触れることができる。子供にとっては、実物展示が中心の既存の博物館より親しみやすいのかもしれない。
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