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データはすべてサーバで一元管理されるため、整理が格段に楽になった。
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デジタル化されて、紙が減り、すっきりした製作現場。
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フィリピンの子会社との打ち合わせはテレビ会議で。
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光やグラデーションなどは、デジタル得意の表現の1つ。
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アニメーションの製作がデジタル化されたことで、作業の効率が格段に上がったという。具体的には、
(1)セル、絵の具、フィルムがいらなくなった
(2)途中段階のデータの保存が容易で、データの再利用も簡単
(3)動画の確認が楽で、作業のやり直し、修正が容易
(4)サーバでデータを一括管理するため、データの整理が容易
今では、絵の具もほとんど製造されておらず、実際のところセルを使用したアニメ製作はますます難しくなっている。また、使用したセルを倉庫などに保管管理する必要がなくなったことで、それらに関わるコストや手間も大幅に削減された。
また、アニメでは、背景を変えて同じ動画を使用することがあるが、デジタルの場合、保存も流用も格段に楽になった。
更に、デジタル化ならではのメリットもある。
まず、3次元CGやグラデーション、炎や光の表現などの特殊効果を取り入れることが簡単になった。そこで、例えばキャラクターの動きをコンピュータが自動的に生成する3次元CGを2次元のアニメーションの中に取り入れることで、今までにないリアルな雰囲気を表現することも可能になった。また、キャラの輪郭の部分にグラデーションを用いることで、キャラ全体を光らせるような「空気感」を表現するなど、絵の表現の幅が広がったとも言える。
次に、早い段階からアニメーションの動きを確認できるというのも、製作現場では有り難い。以前は、彩色する前の段階で動きを見ようとすれば、紙に描いた線画をパラパラ漫画の要領で確認していたが、デジタル化されたことで、最終段階と同じように画面上で動きを確認しやすくなった。これによって、アニメーターは、自分の意図したように仕上がっているか、彩色前に見ることができるというわけだ。早い段階で修正を加えることができるようになったのは、作業の効率を上げるという点でも、またキャラクターに、より完成度の高い動きを与えることができるという点でも、大きなメリットと言える。
更に、データ化され、ネットワークでやりとりができるようになったのは、アニメのデジタル化の中でも最大のメリットと言えるかもしれない。クリエーターのパソコンはすべてサーバに接続され、一元的にデータが管理されるため、データのやりとりや整理も簡単で、進行状況の把握も容易だ。これは何人かのクリエーターで手分けをしながら作業を進める際には必須のIT環境といっていいだろう。
東映アニメーションでは、一部の工程を外部のスタジオに依頼しているが、ここでもデジタル化が効いてくる。
「国内の場合、約3500枚のセルを車で運んでいたのですが、それがネットワークならあっという間に送ることができるようになりました」
約3500枚のセルが物理的になくなったことでスペースに余裕ができたことも大きいが、時間的な制約がなくなったことも大きなメリットだ。
更に、東映アニメーションにはフィリピンにも製作現場があり、そこともネットワーク経由でデータをやり取りしている。
「セルの時代には飛行機を使っていましたが、今は専用線でやり取りしています」
電子メールやFAXでのコミュニケーションに加え、打ち合わせはテレビ会議という、まさにIT環境。ネットワーク化によって、日本とフィリピンという距離さえも以前ほどには感じなくなったわけだ。 |