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マイデスクトップポータルのトップ画面。自分の時間割が表示される。
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担当教員別の画面。クリックすると授業で使用する資料や課題もダウンロードできる。
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資料の中には授業の映像も。「映像ももっと増やしていきたい」と西山教授。
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マイデスクトップポータルにアクセスするには、専用のUSBメモリが必要になる。これがあれば、世界中どこからでもアクセス可能。
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「マイデスクトップポータル」は、九州大学法科大学院の学生と教職員、そして修了生だけが使用できる、ある種のイントラネットだ。セキュリティを保つために、各学生・教職員はそれぞれがIDと専用USBアクセスキー(ハードキー)を持ち、これがなければポータルサイトにアクセスすることができない。
ポータルサイトを開くと、始めに各自の当日の時間割や大学からのお知らせなどが表示され、その日の行動予定をこれによって決めることができる。コンテンツの内容は、学修支援、コミュニケーション、外部ネットワークとの接続など24項目ものメニューが並ぶ。
例えば、教職員のメニューを見ると、教授の一覧があり、担当教授の写真をクリックすると、その教授が出している課題や資料を閲覧することができる。論文を書くにあたって必要な判例や文献のデータベース検索も2つの外部データベースを検索することができ、資料を効率良く収集して、論文の執筆に集中することが可能だ。
また、メール、ビデオチャットやグループでのディスカッションなど、コミュニケーションツールも用意されている。
更に、データはパソコンやUSBメモリに保存されるのではなく、サーバに保存されるので、USBアクセスキーだけ持っていれば、どのパソコンからでもデータを取り出し、学修を進めることができる。
「自修室の自分専用のデスクや教室のデスクにもLANポートがあるので、自分のノートパソコンを接続すれば、いつでもこうした情報にアクセスでき、課題やレポートの提出もすべてこの中で行うことができます」
米国に留学中の教授がこのネットを使って、担当する学生の指導を彼の地から行っている例もある。グループでチャットを使って文字情報を保存しながら行う授業もあるのだという。
教職員専用メニューでは、教職員は学生からの問い合わせに際して、学生の成績などを参照しながら、的確な助言を行うことができるようになっている。
パソコンの操作方法も、テクニカルスタッフとのビデオチャットでサポートしてもらうことができる。
「IDとUSBアクセスキーは、大学院修了後も返却の必要はありません。このポータルには修了生もアクセスすることができるので、司法試験に合格できなかった修了生もこのサイトを通じて、勉強を続けることができます。また、司法試験合格者ももちろんアクセスできます。法律の世界は、毎年新しい法律ができたり、改訂が行われたりします。それをしっかりと把握しながら仕事を進めていかなくてはいけません。そうした時に、このポータルを利用することができます。しかも、USBアクセスキーがあれば、自宅からはもちろん、世界中どこにいてもアクセスすることができるのです」
このシステムは同大学院が独自に開発したもので、西山教授によればその開発費は「遠隔授業システム」を上回るという。それほどまでに力を入れた理由について、西山教授は次のように言う。
「法律の勉強では、授業も教職員もあくまでもサポート役、フォロワーでしかありません。法律家の基本はやはり『自学自修』。自分で資料や判例を調べ、自分で論文を書き、論旨をまとめなければなりません。それは司法試験の勉強だけに限らず、法曹の職についてからも同じです。その『自学自修』を支援するためにITを最大限に活用したかったのです」
九州大学法科大学院では毎年30〜40名ほどの合格者を出してきた。こうした先輩たちが今後、実際に法曹の現場で活躍を始めるわけだが、その人数が増えて行くにつれ、弁護士会の中でも大きな勢力となってくるはずだ。九州・沖縄エリアの法曹と、法曹の教育機関であると同時に、研究機関でもある法科大学院が協力して「マイデスクトップポータル」をベースに様々な協力体制を築いていくこともできるはずだ。さまざまな可能性を感じさせる取り組みといえるだろう。
法律の世界はIT化が遅れていると言われてきたが、九州大学院の「遠隔授業システム」と「マイデスクトップポータル」といった取り組みによって、ITに親しんだ法律家が今後増えていく。それが九州エリアの法律の世界を、一気にIT化する可能性もある。エリア内の法曹の人たち、特に修了生との「マイデスクトップポータル」を使ったリンクがそのトリガーとなりそうだ。 |