最初は、私も、パスワード一覧表をエクセルの表計算ファイルにまとめておきました。もちろん、その表計算ファイルには、安全のためにパスワードをかけておきました。ところが、ある日、気づいたのです。「このパスワードが分かれば、全部が分かってしまう」という、ごく当り前の事実に…。これは、最近のブラウザやパスワード管理ツールが用意する「マスターキーワード」機能でも同じことです。マスターキーワードは、個別に設定したキーワードをいちいち憶えていられない人のための便利な機能です。たった一つのキーワードで、あらかじめ記憶したサービス別のキーワードをすべて自動入力してくれるのです。しかし、これを便利だと感じるのは、本人だけではないはずです。悪意のあるハッカーも同じでしょう。もちろん、一度入力したキーワードを憶えていて自動入力してくれるオートコンプリートも、便利さと裏表の危険をはらんでいます。パソコンごと盗まれた日には、どうなるでしょうか?多くのサービスでログイン名に活用しているメールアドレスを入れただけで、パスワードが自動入力され、多くのサービスが利用できてしまうのです。だからこそ、パソコン起動時や、バックアップ用のハードディスク読み込み時にも、いちいちパスワードをかける必要が出てきます。これぞ、パスワードを守るためのパスワード。ますますパスワードが増えてしまうという逆説の象徴でしょう。
昨今は、カギ代わりになるUSBメモリも出てきました。それをUSBポートに差した時だけパソコンを使える便利な仕組みです。私も、思わず飛びつきそうになりました。中には、指紋認証装置つきの商品もあり、これでパスワード地獄からも解消されるのではないかと、淡い期待を抱きました。しかし、忘れていました。私は、雨上がりには必ず傘を無くしてしまうような、忘れ物キングだということに。私が、うっかりそのカギとなる小さなUSBメモリを無くしたら…パソコンは永遠に開けなくなってしまうかもしれません。恐ろしいことです。