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ITの逆説 パラドックス日記 久米信行 逆説その5 「人と出会うほど人づきあいが辛くなる」

みなさんは、mixiやGREEに代表されるSNS(Social Networking Service)を楽しんでいますか?何人のお友だちとつながっていますか?友だちの友だちは何人増えたでしょうか?友だちが増えて幸せですか?それとも…?

私のもとに、SNSの元祖orkutの招待状が届いたのは、もう何年前になるでしょうか? 当時は非公開だったので、何となく「選ばれた一人」になったような気がしたものです。そこで、しばらくは、この新しい「お友だち増殖システム」に熱中したのです。
そして国内でもSNSがはじまり、招待状が次々に届くようになりました。お世話になっている縁者からの強い勧めで、私も始めてみたのですが…。楽しいのは、最初のうちだけでした。

来る日も来る日も紹介文にお誕生日メール

SNSを使っている方はよくご存知の通り、仲間が同じSNSの会員になって「お友だちサークル」に入ってくださるのは嬉しいものです。今日も1人、明日も1人、今日は誰が来るかな…。
私も、最初は、インターネットならではの素晴らしいサービスに感動したものでした。ですから、お友だちの紹介文を書くのも苦になりませんでした。むしろ何を書こうか迷ったり、書ききれないとさえ思ったのです。

これが間違いでした。親しい友人や縁者の紹介文を心を込めて思い入れたっぷりの長い紹介文を書いてしまったのです。ごく仲良しの何人かだけで楽しくやるなら、それでも良かったでしょう。しかし、皆さまよくご存知の通り、SNSは友だちの友だちを巻き込んでネットワークを広げていきます。その結果、次から次へと見知らぬ「友人の友人」が行列を作り、「お友達に入れて」とメールをいただくようになりました。そこでやむなくプロフィールを拝見するわけですが、概ね、親しい人にしかわからないような具体性に欠けた記載があるだけです。ますます困惑を極めつつ、お仲間に入っていただくかどうか判断しなくてはなりません。
よせばいいのに、妙に律儀で気の弱い私は、親友たちに心から捧げた長文と「同じ量と質の紹介文」を書こうと、その方のブログや会社のWEBサイトまで見ながら、何とか行を埋めようとするのです。一度しかお会いしたことがない方のための厳しい修行…一体、私は何をやっているのでしょうか。

更には、お友だち登録をした方々の誕生日が到来するたびに、「〇〇さんに誕生日メールを送ろう」というお知らせメールが届くのです。
私もお誕生日メールをいただいて感激したことがあります。その時、友人のメッセージを並べて、ついつい誰の文章が一番面白いか、心が動くか、無意識に比べている「イヤらしい自分」に気づきます。ですから、ウカツに安易な誕生日メールを出すわけにはいかないのです。
この文面がまた実に難しい。毎日、大量の文章を書いては発信している私でも、思わず考え込んでしまいます。気が付くと、また時計の針は容赦なく進んでいきます。ああ…。
もちろん、お友だちが増えれば増えるほど、大変です。ほとんど毎日、誰かの誕生日になってしまいます。来る日も来る日も「お誕生日メールを送りましょう」メールが届く恐怖。

私の理想のパソコン環境は、エコでスローでヘルシー

そして、ある日、気づきました。
「私は毎日お誕生日メールを書くために生きているのではない!」
そうです!誰しも一日24時間しか使えないのです!
一見すると友だちが多いほど人生は楽しく幸せに見えるので、私もメルマガ、ブログ、SNSでご縁を広げたいと思った時もありました。でも今は、大切な家族や同僚に使う時間、ライフワークや自分の趣味に使う時間こそが一番大切だと気づいたのです。
ですから、SNSは大切な人だけで小さく小さく使いたいと思うのです。

久米信行(くめ・のぶゆき)プロフィール

1963年

東京都墨田区生まれ

1987年

慶應義塾大学 経済学部卒業 イマジニア株式会社入社 ファミコンゲーム開発

1988年

日興證券(株)入社 資産運用・相続診断システム開発

1991年

久米繊維工業(株)代表取締役に就任

現在

久米繊維工業(株)代表

受賞歴に日経インターネットアワード、経済産業省IT経営百選。日経パソコン、経営者会報、日経IT-Pro等で連載中。

著書に「メール道」「ブログ道」(共にNTT出版)

イラスト/小湊好治 Top of the page

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