女の幸せはお金！ 面倒なタテマエや道徳をすっ飛ばし、気持ちいいほど自分の欲望にストレートに突っ走る美しい母マックスと娘ペイジ。誰もが振り向く美貌とナイスバディを持つ二人は、華麗なテクニックで次々と男を落としては、慰謝料をガッポリ稼ぐ結婚詐欺師。が、いつも作戦の主導権をママのマックスに握られ、自立したいペイジは、最後に大物を狙ってコンビを解消しようと提案。そこで二人は大富豪の住むパーム・ビーチを訪れ、今にも死にそうなタバコ会社のオーナーをカモに選び、2,000万ドルの遺産をせしめようとするが……。
気品あふれる身のこなしと天性の機転の良さを持ち合わせ、圧倒的な美しさで迫る母マックスを演じるのは、シガニー・ウィーバー。一方、完璧なボディと何事も体当たりで切り抜ける度胸のよさで男を悩殺するペイジ役は、ジェニファー・ラブ・ヒューイット。だまされた男にとっては煮ても焼いてもあまりある二人だろうが、彼女たちの美しさ、詐欺師としてのプロ根性にはほれぼれするし、お金のために男をだましはしても、自分の本音や気持ちに絶対に嘘をつかない潔さは痛快。次から次へと予測外のアクシデントが起こる展開も小気味よく、ハッピーな気分になれるラブコメディーだ。

「ソーシャルエンジニアリング」という用語をご存知だろうか？ 巧みな話術や盗み聞きなどで、個人情報やパスワードなどセキュリティ上の重要な情報を手に入れるテクニックのことである。作者であるケビン・ミトニックは「FBIが最も恐れた」史上最強のハッカーであり、ネットワーク犯罪で史上最初に有罪判決を受けたソーシャルエンジニアの天才と呼ばれた人物。彼は出所後、米国で企業セキュリティのエキスパートとして活躍しているが、本書では、その「欺術」に関する豊富な事例を紹介し、解説している。
この本を読むのにITの専門知識はほとんど不要だ。セキュリティの最も重要なポイントである、「結局はすべて人間が管理している」という基本を理解する上で、フィクションとしてさまざまな手口＝ストーリーが展開される。読み進むうちに、先ほどかかってきた電話の内容を頭の中で反すうしてしまうほど、疑心暗鬼にとらわれてくる。まるで推理小説のテクニックのようでもあるが、そのほとんどが実話であり、ネットワーク社会の欠陥を描いている。IT社会におけるセキュリティの教科書として利用してほしい反面、ベストセラーにはなって欲しくないという現実を私達は生きている。

エンターテイメントの重要な要素がだますというテクニック。手品やイリュージョンはその代表だろうが、美術、芸術のジャンルでも視覚の錯覚を表現したものは古くからある。ヨーロッパの宗教施設に描かれた絵の空間表現に驚かされるのもそういった技法のひとつだ。歌舞伎の大道具などはその演目に引き込まれていくうちに、平面に描かれた世界が3DCGの映画以上の効果を発揮し、リアリティとは何なのかを改めて考えさせられる。
最近では日本各地にこの「目の錯覚」を使ったトリックアート＝だまし絵をテーマにした施設が増えている。東京八王子の高尾山口駅前にある「トリックアート美術館」は実際に作品に触れることができ、写真、ビデオでの撮影も可能でトリックアートの持つ楽しさが２倍楽しめる。自分が絵の中に入り込んだり、立つ位置によって絵の大きさが変わる不思議さは一般の美術館では持ち得ないエンターテイメント。７月17日（土）にはリニューアルオープンして新作が加わる。高尾山のハイキングや登山の帰りに是非訪れてみてはいかがだろうか。