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COMZINE BACK NUMBER
Vol.017 旅
 
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販売元: ポニーキャニオン/3990円(税込)

ダークでエキセントリックな作風が持ち味のデビット・リンチ監督が、それまでと打って変わって文字通り「ストレート(まっすぐ)」なヒューマン・ドラマを手掛けたことで世界を驚嘆させた話題作。とはいえ、従来のリンチファンからも熱い支持を得、数々の賞にノミネートされ、NY批評家協会賞男優賞などを受賞した。
アイオワ州ローレンスに娘のローズと暮らすガンコな老人、アルヴィン・ストレイトは73歳。ある日、仲違いしたまま10年も音信不通だった兄が倒れたと聞き、会いに行こうと決心する。が、兄の家はローレンスから560kmも離れたウィスコンシン州。杖2本でようやく歩ける程度のアルヴィンに車の免許はなく、考えたアルヴィンは、周囲の反対を押し切り時速8kmのトラクター(!)に乗って旅に出ることにする。
旅につきもののトラブルや出会いも盛りだくさん! 一つ一つのエピソードが笑いとペーソスに満ち、アルヴィンの放つ名ゼリフには深く感動する人も多いことだろう。アルヴィン役を魅力たっぷりに演じたリチャード・ファーンズワースは当然のごとく高い評価を得たが、娘ローズ役のシシー・スペイセクはじめ、脇を固めるキャスト陣も素晴らしい。いつまでも心に留めておきたいロード・ムービーの傑作。

   
 
山口由美 著
新潮社/1300円(税別)

箱根の老舗ホテルの曾孫にして旅行作家である著者が、パプアニューギニア、ボルネオ、ナミビア、コスタリカ、イースター島など、海外の、観光旅行としてはあまりスポットの当たらない国ばかり8カ国を巡った旅行記。タイトルで「マニアな」とうたわれているように、普段雑誌などでも特集されることのなく、地図でもなかなかすぐに見つけることの難しい国々を、冒険・探検という視点ではなく、嗜好で旅する態度がそれらの国を身近にしている。
著者は本書で「珊瑚礁と熱帯雨林と砂漠に心惹かれる」と自分の嗜好を分析しているが、ボーナスフライトのチケットが余っているからスロヴェニアに飛ぶ理由を「イメージが湧かないから」「スロヴァキアと混同されがちだから」と述懐するように、すべては自身の好奇心に委ねられている。ウツボカズラの群生地を求めてボルネオへ、砂漠を求めてナミビアへ、とテーマを挙げるとエコツーリズムのガイドのようだが、冒頭に簡単な旅行情報が記載されているものの、ここで語られるエピソードは旅行業界紙やホテルジャーナリストとしての自身の経歴から離れた旅の印象をまとめた物が中心。
高級ホテル、ブランドショッピング、グルメ、エステという女性向け海外旅行ガイドが目立つ中、消費から距離を置いた本来の旅の楽しさを知る1冊。

   
 
「ニュー・ハイロンサム・サウンド」/
ロンサム・ストリングスvol.1
/2800円(税込)
「ニュー・ロストシティ・ランブラーズ」/
ロンサム・ストリングスvol.2
/2500円(税込)
共に発売元:ミディクリエイティブ

日本人がバンジョーという楽器を最初に目にしたのは、1854(嘉永7)年、ペリー2度目の来航時に当時の幕府の関係者を黒船に招いて催したミンストレルショーだったという史実をご存知だろうか? カントリーミュージックに欠かせぬ白人を代表する楽器と思われがちなこのバンジョーも、そのルーツは黒人がアフリカから持ってきたもので、音楽の歴史はまさに旅と密接に絡み合っていることを知らされる。
ロンサム・ストリングスは戦前のアメリカンミュージックをベースに弦楽器だけで演奏する日本のバンド。音楽評論家のピーター・バラカン氏が昨年NHK-BS2の番組で取り上げたことでご存知の方もいるかも知れない。メンバーはギターの桜井芳樹、ペダルスチールの田村玄一、コントラバスの松永孝義、5弦バンジョーの原さとしというそれぞれの楽器の腕利きばかり。インストゥルメンタル主体で、カントリー、ブルース、ブルーグラス、クレズマー、トラッドフォーク、ハワイアンなどを実に洒脱にシンプルに自分たちの音として聞かせてくれる。オリジナル曲と共に演奏される曲はアメリカンミュージックのルーツ探しの旅であると共に、タンゴのアストル・ピアソラ、ライブではキース・ジャレットの曲などもカバーしており、バラカン氏の言葉を借りると「日本人の感性でなければ出来なかったサウンド」。2000年10月にリリースされたデビューアルバム、2003年10月に発表されたセカンドアルバム、2枚共に年齢、趣味を問わず聴いて欲しいロード・ムービーならぬロード・ミュージック。

   
 
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