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Vol.019 天災
 
CINEMA 『そして人生はつづく』
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DVD発売元:IMAGICAエンタテインメント DVD発売元:ジェネオン エンタテインメント 価格4995円(税込)

前作の『友だちのうちはどこ?』(1987年)、後の『オリーブの林をぬけて』(94年)とともに、ジグザグ道三部作と呼ばれる92年に製作された第2作目。90年、『友だち〜』の撮影現場だったイラン北部の村を大地震が襲い、監督は息子を伴い、主演の少年二人の安否を気遣って村へ行く。その様子をフィクションとノンフィクションの狭間で淡々と描く。被災地に近づくに従い、生々しく現れる災害の爪あと。だが、瓦礫の山にはまぶしいほどの陽光が注ぎ、そこで人々は力強く生きていた。地震で身内を亡くしながらも翌日には結婚式を挙げたという若者、ワールド・カップの試合見たさにアンテナを立てようとする少年、いつものように子供をしかりつけ、家事に精を出す母親。人生は日常の累積であり、何があろうともこの日常なしには生きていけない人間の性を、A・キアロスタミの温かで誠実な眼差しが捉えてゆく。
一見ドキュメンタリーのように見えながら、「監督」をキアロスタミ自身ではなく、役者に演じさせているように、そこここに緻密な演出があるのだが、虚実は判然としない。事実の重さにひしげることなく、カメラを回した、かの国の真摯な映像作家の仕事は、一見の価値がある。本気で感動する1本。

   
 
WEB 『レスキューナウ・ドット・ネット』
http://www.rescuenow.net/

「備えあれば憂いなし」とは決して言えないのが天災の恐ろしさだが、こうも災害が多発すると、せめて情報面での備えは普段から怠りなくしておかねばと、改めて思わされる。
ネット上でも行政、民間、教育機関などの様々な危機管理サイトが運営されているが、本サイトは大災害から身近な事故まで、24時間情報配信を行っている。台風や地震など国内の災害の被害状況、交通情報、ボランティア情報など地域別に知ることができ、リンク先も消防、防災、気象、地震&火山、ボランティア、救命/救急、防犯、災害関係法令集などに分けられ、ジャンルも多岐にわたる。防災用品、非常食、緊急キットなどの販売もHPから行われており、商品のレポートも詳細。防災という観点から、疫病に対する危機管理、実際にボランティアに参加する時の安全衛生対策マニュアル、災害時のペット対応など、いざとなると調べるのが大変な事柄も充実している。
登録が必要だが、災害・事故の速報と、気象情報、鉄道情報など携帯メールに速報で提供するサービスも、同サイトが運営している。

   
 
BOOK 『アースクエイク・バード』
スザンナ・ジョーンズ 著  阿尾正子 訳
発行 早川書房/1600円(税抜)

2001年度の英国推理作家協会(CWA)の最優秀新人賞受賞作。タイトルの「アースクエイク・バード」は、あくまでも本作の象徴的なモチーフであり、直接的に地震や災害をテーマにした物語ではない。日本で英語教師として数年にわたる生活経験を持つ著者らしく、異邦人の視点で描かれた現在の日本、東京を舞台とした心理サスペンスは、その語り口に様々な罠が潜んでいる。
翻訳の仕事で東京の会社に勤める主人公ルーシーは、ある日、弱い地震と共に同郷の友人殺害の容疑で連行される。活火山である鹿児島県桜島出身の恋人・禎司と、その友人との間に巻き起こる出来事と、歪んだ感情。主人公が運命的に背負う暗い過去と、日本の風土や習慣を織り交ぜながら、大学で日本文化を学んだ著者が、静謐な筆致で描いていく。本作が処女作とは思えないストーリー展開は、微震を感じなくなってしまった日本人の生活スタイルをクールに見つめつつ、ミステリーサスペンスというジャンルだけでは語れない不思議な魅力を持っている。
昨年秋に発表された第2作目「睡蓮が散るとき」も、日本人と英国人が船の中で遭遇したことから始まるスリルに富んだ作品。こちらはインターネットもストーリーにからみ、『アースクエイク〜』に劣らぬ心理サスペンスに仕上がっている。

   
 
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