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「トータル・カウリスマキ
DVD BOXセット」(DISC.2に『白い花びら』と共に収録)
DVD発売元:ビデオメーカー |
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往年の名優、名画からイメージされたカクテルが数あるように、映画とお酒は不滅の関係。『カサブランカ』のシャンパン・カクテルや、『凱旋門』のカルヴァドス、ジェームズ・ボンドのマティーニのように、映画の人気とともにポピュラーになったお酒も数知れない。男と女のロマンティックな時間を演出したり、友情を育む絆となったり、お酒は名ドラマを生む粋な小道具でもある。
フィンランドの巨匠アキ・カウリスマキの場合は、ウォッカがお約束。酒豪で知られるカウリスマキのこと、映画には必ずといっていい程登場するのだが、この作品では何とボトル一気飲みの男が登場する。しかも、男の相棒はコーヒー中毒。妙なおかしさと哀しみをたたえた40代独身男の二人は、わけもなく車で旅に出、会話らしい会話もなく、ただひたすら一人はウォッカをグビグビ、一人はコーヒーをガブガブとやる。道中、異国の女性二人組が現れ、港まで送ることにするも、不器用な彼らになす術はなく、旅は終始無言、無表情のまま。何もドラマティックなことは起こらず、グビグビ、ガブガブ。が、やがて、ウォッカ男のぎこちない恋心が見えてくる。ちょっとしたしぐさや目配りのドキドキすること! そして、いつの間にか男の手からボトルが消え、意外な結末がやってくる。わずか62分の作品だが、寒い冬の晩にキュッと効くウォッカのような純愛映画だ。
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