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Vol.022 ジャーナリズム
 
CINEMA 『ヴェロニカ・ゲリン』
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DVD発売元/ブエナビスタ ホーム 
エンターテイメント 3.990円

1996(平成8)年6月26日、ダブリン郊外の路上である女性記者が凶弾に倒れた。享年37歳。夫と幼い息子を残しての死だった。実話に基づいたこの映画は、彼女自身だけでなく、アイルランドについてケルト音楽や風光明媚な場所としてのイメージしかなかった私たちに、当時この国が抱えていた社会問題やジャーナリズムを取り巻く環境についても生々しく伝えてくれる。
理不尽な法律や深刻な就職難を背景に、犯罪組織が跋扈し若者はドラッグ漬けに。現状を知った大衆紙「サンデー・インディペンデント」の記者ヴェロニカ・ゲリンは、麻薬組織を糾弾すべく取材を開始した。度重なる脅迫に屈することなく、体当たりで組織に切り込んでいくヴェロニカだったが、ある日、自宅で何者かに脚を撃たれる。だが、彼女はその事実をも自身の取材が核心に迫っている証拠だと考え、自らメディアに登場し、大々的にキャンペーンをはっていく。
ヴェロニカ役には、『エリザベス』のケイト・ブランシェット。オーストラリア出身の彼女だが、アイルランド訛りを克服したその演技は素晴らしいの一言! DVDには特典としてヴェロニカ本人によるCPJ(NYに本部を置くジャーナリスト保護委員会)の受賞スピーチの実録映像が収録されているので、それと比較すれば、いかにケイトが本人になりきっていたかがよくわかるだろう。この映画を契機に考えさせられることは多い。

   
 
BOOK 『もの食う人びと』
辺見庸 著  
発行 角川文庫/686円(税別)

共同通信の北京特派員、ハノイ支局長、外信部次長などを歴任した辺見庸氏が、在職中の1992(平成4)年末から94(平成6)年3月に執筆。地方新聞に週1回配信され、94(平成6)年の講談社ノンフィクション賞、JTB紀行文学賞を受賞したルポルタージュの傑作。世界で人々は何を食っているのか?食えないでいるのか?を、旅を通してリアルに伝えていく。
ダッカの残飯屋台から、チェルノブイリのボルシチ、ドイツの囚人食、ジュゴンの歯の粉末、エチオピアの塩コーヒー……。登場するメニューだけをみれば奇食ガイドか、と思ってしまうが、紛れもなく報道の現場からのルポルタージュである。そしてそこにあるのは著者自らがあとがきに記しているように「飽食の日本に向けて」「警世の書」という“高邁”“傲岸”な意識は排除されている。旅人の独白として、「食うこと」を通してそこに暮らす人々を描く。取材現場の臭いが伝わる精緻な文体は、新聞連載時から大反響を呼び、単行本化後、ベストセラーとして話題を集めた。また、文庫化に際してはカラー写真が加わっている。
発刊後10年経った今でも、本書が描くリアリティは我々に多くのことを伝えてくれる。

   
 
WEB 『ワンダーアイズプロジェクト』
http://www.wondereyes.org/

時代を切り取る1枚の写真は、なにも報道カメラマンだけの特権ではない。そこに暮らす子供たちの日常の視線が多くを語る場合もある。本サイトではレンズ付きフィルムを世界の子供たちに渡して、ワークショップを開き、彼らが撮った写真を現地と日本で展示するプロジェクトを公開している。
写真家の永武ひかるさんが2000(平成12)年5月に東ティモールを訪れたことをきっかけに同年8月に東ティモールの3箇所で開催されたのが第1回目で、以降、ウズベキスタン、オーストラリア、台湾の緑島、蘭嶼島、ブラジル、モザンビークでプログラムが実施され、日本では東京・銀座、鹿児島・徳之島の子供たちも参加した。
機関銃を手に笑うアボリジニの少年、機織りをする東ティモールの少女など、ギャラリーにアップされているその地域ならではの写真は、文字を必要としないままその国の姿を映しだしている。土と空と海を背景に遊ぶ子供たちの写真の中で、土と空と子供の姿がフレームに入ってこない東京の子供たちの写真に複雑な思いにかられてしまう。

   
 
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