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佐野藤右衛門 著
小田豊二 聞き書き
発行 集英社/2100円(税抜) |
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京都の「桜守」といえばこの佐野藤右衛門さん。飾らない口調で愉快に繰り出される京都弁のお喋りを、テレビなどでご存知の方もいるかもしれない。京都・御室の仁和寺出入りの庭師として仕える1832(天保3)年創業の「植藤造園」16代目であり、日本のみならず世界中の桜の名医として知られている。
今年で77歳となるこの桜の名医の話は実に豪快で、機知に富む。30代の頃に彫刻家のイサム・ノグチ氏と世界中の日本庭園を造り歩き、彼の死後も毎年海外に出掛け、その手入れを怠らないという行動力に敬服するが、「花見は一人でするもの」「満開になる時期は桜に聴け」などと一見乱暴な言葉が、1年365日桜守として生きる男から、お花見シーズンだけ桜に思いを馳せる現代人への警鐘に満ちている。
各章は春夏秋冬に分かれ、祇園の枝垂桜、鴨川の染井吉野など京都の名所から根室の千島桜、広島の被爆桜、金沢兼六園の冬桜まで日本全国の桜の話をテーマに聞き書き形式で話が進み、独特の陽気な京都弁が桜の艶やかさと変わらぬ著者の人柄の魅力を伝えてくれる。
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