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Vol.023 桜
 
CINEMA 『四月物語』
DVD発売元/ビデオメーカー 3,990円

「期待と不安に胸をふくらませ…」。フレッシュマンのあいさつによく登場するこの言葉を、進学で上京してきた女子大生に託し、彼女の新生活をみずみずしく描いた映画。初めての土地、初めて会う人々。そんな初めてづくしに緊張を覚えるのも、桜の花同様ほんの短い間で、そのうちすぐに慣れてしまうのだろうけど、その一瞬を丹念に切り取ったこの映画は、誰にでも経験のある淡い思い出を呼び起こしてくれる。
故郷の北海道・旭川を離れ、東京の武蔵野にある大学に進学するため、ひとり暮らしを始めた楡野(にれの)卯月。おとなしい性格の卯月は、少しよそよそしい隣人、ちょっと無愛想な店員、個性的な同級生に戸惑いを感じながらも、少しずつ心を開いていく。が、彼女には人に言えない、この大学を選んだモ不純な動機モがあった。
卯月の初々しい心の揺れ動きを見事に体現したのは、松たか子。卯月を送り出す北海道の家族に、彼女の実際の家族である松本幸四郎一家が総出演しているのも心憎い。
桜が乱舞するシーンから始まり、ラストの雨のシーンへと続く岩井俊二監督の演出と篠田昇(昨年、享年52歳で逝去されました)のカメラワークは、一枚一枚を額ぶちに収めたいほど、ため息ものの美しさ。春を堪能してほしい。

   
 
BOOK 『櫻よー「花見の作法」から「木のこころ」まで』
佐野藤右衛門 著
小田豊二 聞き書き
発行 集英社/2100円(税抜)

京都の「桜守」といえばこの佐野藤右衛門さん。飾らない口調で愉快に繰り出される京都弁のお喋りを、テレビなどでご存知の方もいるかもしれない。京都・御室の仁和寺出入りの庭師として仕える1832(天保3)年創業の「植藤造園」16代目であり、日本のみならず世界中の桜の名医として知られている。
今年で77歳となるこの桜の名医の話は実に豪快で、機知に富む。30代の頃に彫刻家のイサム・ノグチ氏と世界中の日本庭園を造り歩き、彼の死後も毎年海外に出掛け、その手入れを怠らないという行動力に敬服するが、「花見は一人でするもの」「満開になる時期は桜に聴け」などと一見乱暴な言葉が、1年365日桜守として生きる男から、お花見シーズンだけ桜に思いを馳せる現代人への警鐘に満ちている。
各章は春夏秋冬に分かれ、祇園の枝垂桜、鴨川の染井吉野など京都の名所から根室の千島桜、広島の被爆桜、金沢兼六園の冬桜まで日本全国の桜の話をテーマに聞き書き形式で話が進み、独特の陽気な京都弁が桜の艶やかさと変わらぬ著者の人柄の魅力を伝えてくれる。

   
 
WEB 『遺伝研の桜』 『日本さくらの会』
http://www.genetics.or.jp/Sakura/

http://www.sakuranokai.or.jp/

桜の種類、開花時期、日本全国桜の名所などを伝えるサイトはweb上でさまざま展開されているが、今回は財団法人が運営する2つの公式サイトをご紹介。
「遺伝研の桜」は静岡県三島市にある財団法人遺伝学普及会の日本遺伝学研究所内にある桜の品種をデータベース化したもので、1995年に小冊子として出版され、桜の愛好家から貴重な資料として支持されてきたものをWEB用として公開したサイト。同研究所には染井吉野の起源の研究で有名な故竹中要博士が、全国から収集した260種類の桜の品種が保存されており、本サイトでは学術目的として写真、細かなデータが公開されている。
「日本さくらの会」は今月のBOOKでも紹介した佐野籐右衛門氏も理事に名を連ねる財団法人の公式サイト。日本全国の109箇所の桜の名木、巨木の紹介や、桜の植え方・育て方などを紹介している。
デジカメで撮影した桜がどの品種なのか調べたい、接ぎ木で桜を育ててみようと考えている人は一度訪れてみてはいかがだろうか。

   
 
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