本書によると1999(平成11)年と2000(平成12)年に高級ブランド業界で50件以上の合併と買収が行われたという。その背景は95(平成7)年から00年にかけて誕生した「ウルトラHNWI(ハイ・ネット・ワース・インディビジュアルス)」と呼ばれるインターネットや新しい技術革新によって、相続ではなく個人の成功によって3000万ドル以上の資産を獲得した人々の消費行動に支えられている。地球規模でみると高級ブランドの売り上げは1000億ドルに達し、武器取引の2倍の数字だという。
世界一の高級ブランド消費国でありながら、日本ではなかなかその内幕が見えにくいこの高級ブランド業界の引き抜き、買収、裏工作、スパイ合戦などを、フランスの大手新聞「フィガロ」の副編集長で、主に国際問題と経済問題を担当している著者が、冷静に分析する。雑誌やウェブ上で毎シーズン、高級ブランドの新製品情報は、欧米と時間差なく手に入れられるようになったが、そのブランドの背景にある国際的な政治情勢、経済状況を踏まえた情報は、日本では大手新聞でもなかなか取り上げられることがない。その後ろにうごめく人間模様は、IT企業の企業買収ニュースより、熾烈で残酷。
次々に都心にオープンする高級ブランドのブティックに関心のない人も、本書を読むと消費とは違った観点でファッションを楽しめる。 |
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ステファヌ・マルシャン 著 |
大西愛子 訳 |
発行:駿台曜曜社 /1,800円(税別) |
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