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今月のテーマ:「雨」

雨が多いはずの6月ですが、なぜか水無月。これは田植えが済んで「皆尽き」るからという説もあります。うっとうしいシーズンですが、夕方になると雨も上がり晴れ間を見せるという意味の「梅雨の宵晴れ」という言葉もあります。古来、嫌なことを雨できれいに流して欲しいと願うのは変わりありません。今月のテーマは「雨」です。


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CINEMA:ラブストーリー

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監督・脚本/クァク・ジェヨン
出演/ソン・イェジン、チョ・インソン、チョ・スンウ
DVD発売元/レントラックジャパン
©2003Cinema Service
母娘二世代にわたる、せつない純愛物語

映画での降水確率は高い。別れのシーンで、決闘のシーンで、ドラマのあるところに雨は絶妙なタイミングで登場し、感動を盛り立てる。日本同様、湿潤気候のアジア映画となれば、雨はもはや常連役者。ここ数年、大ブームとなっている韓国映画でも、印象的な雨のシーンが本当に多い。本作は、そんな中でも「美しい雨のシーン」満載の一本だ。
演劇部の先輩サンミンに密かな恋心を抱く女子大生ジヘ。だが、彼女は同じくサンミンに憧れる友人にラブレターの代筆を頼まれ、引き受けてしまう。そんなある日、ジヘは、母が大切に保管していた手紙や日記の木箱を紐解く。そこに綴られた母の叶わぬ恋。母の秘めたる想いに、ジヘは不思議な運命のようなものを感じ、自分の恋をも重ね合わせていく。そして、思いもかけない奇蹟が……。
母と娘、二世代にわたる恋物語の立役者となるのが「雨」。母の思い出の中に、ジヘとサンミンの淡い恋心が発露する瞬間に、雨は降り続ける。とりわけ美しいのは、ジヘがサンミンに傘を届けに行くシーン。胸をしめつけられるような至福の雨に、きっと誰もが涙するはずだ。
監督は、日本でも大ヒットした『猟奇的な彼女』のクァク・ジェヨン。母と娘の二役を演じるのはソン・イェジン。またサンミン役に、韓国のラブ・ストーリーには欠かせないチョ・インソン。ちなみに、チョ・インソン主演の『マドレーヌ』も素敵な雨のシーンが続出。興味のある方は、こちらもぜひ。

 
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BOOK:空と海と大地をつなぐ 雨の事典

雨尽くし、心尽くしのフルコースあますことなく、雨を味わう

タイトルに事典と書かれてはいるが、延々と語句説明をしているわけではない。雨と文学・言葉・歌・映画等の関わりに始まり、日々の暮らしや歴史・科学に至るまで、雨のすべてを凝縮した一冊。本書の編著者であるレインドロップスとは、雨水利用を進める全国市民の会による「雨の事典」プロジェクトチームの名称。営利目的とは遠いところで、多くの人々が携わっているためか、話の起伏に富んでいて、丁寧に作られた印象を受ける。
ぽつぽつ・ぱらぱら・しとしと・ざーざー……という雨の擬音語。日本人が聞き分けるその数は、百を超えるという。雨に関する言葉も数多くあるが、例えば天気雨のことを「狐の嫁入り」と呼ぶのはなぜなのか。従来は日が射しているのに雨が降るという不思議な現象が狐に化かされているかのようだというのが通説であったが、それでは「嫁入り」の説明にはならない。この疑問には文化人類学の観点から考えると、答えが見えてくるという。雨降らぬ砂漠の哺乳動物ラクダは一度に115リットルもの水を飲むことができ、その水が海水より濃い塩水でも耐えられる程の濾過装置が体内についているなど、雨にまつわる、不思議に満ちた物語。
一つひとつの話は短く、“雨“に光を当てる角度を少しずつ変えることで、全く異なる姿を見せてくれる本書はまさしく、雨の万華鏡。引き立て役として雨が登場する本は数あれど、ありそうでなかなか見つからない、雨が主役のこの一冊。降り続く長雨に倦んだら、本書を開いて遥かな昔から私たちの体に流れる、雨の記憶を感じてほしい。

BOOK
編著者 レインドロップス
発行:北斗出版/2500円(税別)
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