一覧に戻る
COMZINE PICK UP

今月のテーマ:「七夕」

現行暦では7月7日ですが、旧暦で行われることも多い日本各地の七夕の伝統行事。今年は8月11日が伝統的七夕の日と国立天文台は報じています。願いをかけるのにどちらの日を選ぶか迷ってしまいますが、年に一度の逢瀬というラブストーリーは、情報伝達の手段が変化した時代だからこそ新鮮な気がします。今月のテーマは「七夕」です。


frame
CINEMA:チルソクの夏

No image
DVD『チルソクの夏 特別版[初回限定生産2枚組]』/4935円(税込)
発売/アスミック
販売/角川エンタテインメント
© 2003 『チルソクの夏』 製作委員会
七夕の再会を夢見る、日韓高校生の恋と青春のドラマ

舞台は1977(昭和52)年、下関。高校の陸上部で活躍する17歳の郁子は、毎年、夏に行われる姉妹都市・釜山との親善陸上競技大会を通じて、韓国人高校生の安と出会う。その年の開催地は釜山。郁子たちの帰国前夜、安は戒厳令中にも関わらず、郁子に会いに宿舎までやってくる。二人の間にそっと芽生えるほのかな恋。「一年後の陸上競技大会で再会しよう」。二人は固く約束をする。そう、まるで織姫と牽牛のように……。
「チルソク」とは韓国語で「七夕」のこと。当時は、日韓の関係も現在ほど親密ではなく、携帯電話もメールもない時代。両国をまたぐ17歳の恋には、さまざまな障害が立ちはだかり、友人たちもなんとか郁子の恋を実らせようと懸命に応援する。少女たちのまっすぐで強い想い。30年たった今では、こんなピュアな青春ドラマも、もはや七夕と同じようにおとぎ話になってしまったのかもしれないが、だからこそ深く感動する。
高校生たちのまぶしいほどの躍動感、下関のノスタルジックな風景をみずみずしく切り取ったのは、『陽はまた昇る』『半落ち』の監督で、下関が生まれ故郷の佐々部清監督。いつか故郷を舞台に映画を作りたいと語っていた監督の10年来の思いが結実した。また、作中では70年代後半の懐かしいヒット曲も随所に挟まれ、この時代に青春を過ごした人はもちろん、誰の胸にもいとおしい記憶の断片がひたひたと湧き上がってくるに違いない。

 
frame

BOOK:あまの川 宮沢賢治童謡集

没後70年を経て届いた星の光 優しく、懐かしい歌が聞こえる

天の川は英語でミルキー・ウエイと呼ばれる。ギリシャ神話に登場する天の大神ゼウスの妻、ヘラの乳が天に流れ出したものとされているからである。本書からどこか懐かしいミルクの匂いが漂ってくるように感じるのは、きっと歌の背後に広がるノスタルジックな童話の世界が垣間見えるからかもしれない。無数の星々が白く煙って見えるほどに重なり合っている様は、確かに何か「物語」を感じさせる力がある。
本書は、『十力の金剛石』『風の又三郎』『かしわばやしの夜』といった宮沢賢治作品中に見られる数々の童謡を、それぞれ独立したものとして味わおうと一冊にまとめた、初めての試み。『あまの川』とタイトルに冠されたこの本に収められた歌は、その名の通りひとつひとつがきらきらと輝く星のようだ。
IT化が進み、伝達される情報量が以前に比べ圧倒的に増えた現在、一方でネット上を行き交う言葉が無機質な「記号」化してしまった向きもある。近年の「音読」ブームの中で、宮沢賢治の作品が特に注目されているのは、その独特な音の響きやリズム、血の通った言葉が、耳に親しみやすく、じんわりと心に沁みるからであろう。冷たい雨がザァザザザと降り注ぎ、月がツンツンツンと夜の闇を照らす中、ピッカリコとひかる星。そんな宮沢賢治の世界から飛び出してきた歌は、楽譜などなくとも自然と口ずさんでしまえるものばかり。言葉を「口に出す」ことの楽しさをあらためて感じさせてくれる。また、おーなり由子さんの描く淡く優しい挿絵は、頭に浮かぶイメージを邪魔せずに、そっと支えてくれることだろう。 
巻末には歌をより深く味わうための出典とコメントが記されている。気に入った歌があれば、是非原作の童話も読んで頂きたい。

BOOK
『あまの川 宮沢賢治童謡集』 
天沢退二郎 編   
おーなり由子 絵
発行元:筑摩書房/1300円(税別)
frame

Top of the page
COMZINE PICK UP B COMZINE PICK UP  C

月刊誌スタイルで楽しめる『COMZINE』は、暮らしを支える身近なITや、人生を豊かにするヒントが詰まっています。

Copyright © NTT COMWARE CORPORATION 2003-2015

[サイトご利用条件]  [NTTコムウェアのサイトへ]