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監督・脚本:レオス・カラックス
撮影:ジャン=イヴ・エスコフィエ
出演:ジュリエット・ビノシュ/ドニ・ラヴァン/クラウス=ミヒャエル・グリューバー/ダニエル・ビュアン
初公開:1992年 |
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一度観れば決して忘れることのできない花火のシーンといえば、この映画において他にないだろう。これはフランスの奇才レオス・カラックスが、資金難のため幾度となく撮影中断の憂き目に遭いながら、3年がかりで完成させた愛の神話である。
パリで最も美しいと称されるポンヌフ橋で出会った天涯孤独の青年アレックスと、失明の運命にある女子画学生ミッシェル。互いの孤独を確かめ合うかのように惹かれあい、橋の上で暮らし始めた二人は、革命200周年で街中が花火で彩られる夜、その愛を爆発させる。だが愛が深まれば深まるほど、日に日に目が見えなくなっていくミッシェル。ある日、ミッシェルの両親が出した捜索願から目の治療法が見つかったと知るものの、彼女を手放したくないアレックスは、街中の捜索願ポスターに火を付けてまわる。
ポンヌフが仏語で「新橋」を意味しながら、その実パリ最古の橋であるように、愛せば愛するほど、その相手が見えなくなるという、愛が持つ根源的なパラドックスを描いてみせた本作。アレックス役には、カラックスの分身ともいうべきドニ・ラヴァンが扮し『ボーイ・ミーツ・ガール』『汚れた血』に続くアレックス三部作の完結編とも言われているが、ミッシェル役に、当時、実生活でもカラックスのパートナーだったジュリエット・ビノシュを起用したことで、剥き出しの愛の形がより鮮烈に炙り出された。
製作が困難を極めたのは、ポンヌフとその周囲の背景をすべてセットで作り上げたことが大きな原因だが(というわけで、それだけでも一見の価値あり)、ビノシュによれば、花火のシーンは真冬に行われ、打ち上がる花火を背景に水上スキーをしなければならなかったのは、長い役者生活でも特に緊張を強いられたシーンだったとか。カラックスとビノシュ、製作サイドで何度も意見が交わされ、二転三転したラストシーンの行方もぜひ映画で確かめていただきたい。 |