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今月のテーマ:「火星」

火星がどんどん近づいてきています! 映画や小説、情報のことではなく、地球のすぐ外側を回っている惑星、火星が今年10月30日、2年2ヶ月ぶりに大接近するのです。前回2003(平成15)年8月は6万年ぶりの大接近でしたが、それが今年もまた体験できるとは! 今月のテーマは「火星」です。


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CINEMA:マーズ・アタック!

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DVD『マーズ・アタック!』 11月18日発売980円(税込・期間限定)
監督・製作:ティム・バートン
出演:ジャック・ニコルソン、グレン・クロース、アネット・ベニング、ピアース・ブロスナン、ダニー・デビート他
販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ
上質なB級パニック映画。突然の火星人襲来に人間たちは……?

平たい銀色の円盤に乗って突如、地球に現れた火星人。小柄な体に肥大化した頭、そしてお約束のギョロっとした目。一度は思い描いたことのあるステロタイプなビジュアルに、まずは苦笑いするだろう。
本作は、新作『チャーリーとチョコレート工場』が大ヒット中の奇才ティム・バートン監督の1996(平成8)年の作品。よくある宇宙人の地球侵略話でも、バートンの手にかかれば一筋縄ではいかない。パニック映画の定石をなぞらえて、大統領以下マスコミや市民が対応に追われる姿を描くも、どの登場人物もズレまくっているのだ。全く関係のないことに執着していたり、無関心だったり、異常にハイテンションだったり。首脳陣の協議の末、友好的に火星人を出迎えることにしたものの、『E.T.』のような感動的な交流があるはずもなく、到着した彼らは有無を言わさず地球人を襲撃する。ここで「話せばわかる」は通用しない。意味なく容赦なく、殺戮を繰り返す。だが、ご安心を。バートンは、残酷さの微塵も感じさせないキッチュさで大殺戮を描き、どこまでいっても大真面目にB級感を紡ぎ出すのだ。
「上等なお馬鹿映画」とでも呼ぶべきか。ハリウッドきっての一流スタッフ、豪華キャストを揃えながら、あくまでB級に徹する姿勢は従来のSFパニック映画に対する皮肉なメッセージにも思えるし、議論を待たない無闇な暴力は、時として傲慢になりがちな私たち人間の性を見せられているような気もしてくるのだ。けれども、バートンが決して悲観的ではなく、人間に明るい未来を見ていることはラストを見れば明白。思いがけない結末をぜひ楽しんでほしい。

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BOOK:恐るべき旅路 火星探査機「のぞみ」のたどった12年

宇宙の彼方に馳せた27万人の想い 2億2794万kmを隔てて輝く赤き惑星

探査機の開発から12年、打ち上げから5年半が経ち、日本初の火星探査機「のぞみ」の出した答えは、「探査失敗」の四文字であった。この一言に至るまでに、多くの人々の費やした膨大な時間と努力、そしてそこに込められた想い。新聞やテレビによる要約された報道の背後では、はるか赤い惑星を目指す壮大な物語が繰り広げられていた。
著者・松浦晋也は宇宙関係の優れた著作を多く著していることでも知られる。彼は間近で「のぞみ」の動向を見守り、開発に携わった人々の想いを肌で感じてはいても、都合の良い美談として紡ぎはしない。本書は、事実を事実として淡々と描き切ることで生まれた、迫真のドキュメンタリー。
「のぞみ」という名前は、1998(平成10)年1月から約2ヶ月間行われた『あなたの名前を火星に』というキャンペーンに、27万人の応募が集まったことから、人々の「のぞみ」を託されたとして名付けられた。開発当初から予算不足、経験不足、軽量化への限界までの挑戦と、問題は山積み。間断無く襲いかかるトラブル。そしてその受難の日々は、打ち上げという産みの苦しみを経て、火星への船出に至っても途切れることはなかった。だが、開発に携わった者の中に、誰一人諦める者はいない。一人でも諦めてしまえば、すべてが灰燼と帰してしまうのだ。28年間、ただひたすら日本の惑星探査の未来を考え続けた者がいた。病魔に冒されながらも開発から離れることなく、ついには命を落とした者がいた。各自の責務を全うした10人足らずの少数精鋭の開発チーム。数多の研究者、そして27万人を超える「のぞみ」の成功を祈る人々がいた。無数の望みを搭載し火星へ向かった「のぞみ」は、それでも、火星に辿り着くことなく2003(平成15)年大晦日に、その任務を終えた。
日本の宇宙開発の現状を知るための、歴史書とも入門書とも成り得る本書。それでいて物語としての臨場感にも溢れた、今年5月に上梓されたばかりのスペース・ノンフィクションの傑作。

BOOK
『恐るべき旅路 火星探査機「のぞみ」のたどった12年』
著:松浦晋也  
発行:朝日ソノラマ 定価1400円(税込)
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