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今月のテーマ:「卒業」

桜の季節と共に、街で見掛けることの多くなる女学生の袴姿。
胸に抱えられた賞状筒の姿は、普段の有名ブランドのバッグと違って、日本の春の訪れを実感します。映画や小説、様々なテーマに登場することの多い「卒業」が今月のテーマです。


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DVD:25年目のキス

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『25年目のキス』
監督:ラジャ・ゴズネル
出演:ドリュー・バリモア、デビッド・アークエット、ミシェル・ヴァルタン,
DVD発売元: 20世紀 フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン
DVD販売元: 20世紀フォックスホームエンターテイメント
高校に潜入取材する25歳女性記者の2度目の卒業

アメリカの青春映画と聞いて、思い浮かぶのはプロムのシーンだろう。高校の卒業時に開かれるダンス・パーティーで、アメリカのティーンエイジャーの悲喜こもごもがそこに描かれる。男女ペアでの参加のため、生徒たちはパートナー探しに奔走し、誰を誘うか、誰に誘われるか、誘ったところで相手に受け入れてもらえるのか、何を着ていくか、晴れてパートナーとプロムに参加するまでに、それはもう数々のドラマがあるのだ。そして、クライマックスは何といっても、今年のキングとクイーンの発表!
一見、華やかで楽しそうなアメリカの青春シーンだが、恋愛におくてな生徒にとって、これほど残酷な卒業イベントもない。地味でルックスに恵まれなかった者は、スポットライトの影に追いやられ、その事実を後も引きずることになる。
本作のヒロイン、ジョジーもそんな過去を持つ一人。今でこそ大手新聞社で活躍する編集者だが、プロムでひどい仕打ちを受けた彼女は今も心に深い傷を残している。紙面で現在の高校生事情を特集するにあたり、ジョジーはとある高校へ覆面記者として潜入することに。前向きな彼女は、今度こそ惨めな過去を挽回するチャンスと張り切るものの、案の定ことごとく空回りする。果たして彼女は過去の自分から”卒業”できるのか。純粋で不器用、でも明るさだけは失わないジョジーの奮闘ぶりは涙ぐましく、そして愛らしい。体当たりでジョジー役に臨んだドリュー・バリモアの達者な演技にもご注目を。

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BOOK:卒業

家族の死と、それぞれの「卒業」悲しみの先を見据えた、4篇の物語

作者の重松清は小説家であると同時に、フリーライターでもある。長年子どもが犠牲になった事件や少年犯罪を取材し、文章に綴り続けてきた書き手は、数え切れないほどの悲しい現実を見つめてきたからだろうか、どの作品からもしみじみと優しさが感じられる。直木賞受賞作となった『ビタミンF』のFに込められた意味のひとつはFictionであったが、その一言では括ることのできないリアリティがこの作家の持ち味。本作は、「卒業」をテーマに悲しみを乗り越えようとする人間の姿を描いた珠玉の短編集である。
収録された4つの物語に共通して描かれているのは、家族の死。表題作『卒業』に登場する少女は、自分が生まれる前に自殺した父親のことを知りたいと願いつつ、自身もリストカット経験を持っていた。中学受験を終え、燃え尽きた息子を持つ父親が、母親の死と向き合う『まゆみのマーチ』。義理の母親と折り合いをつけることができず、亡くなった母親に手紙を書き続ける小説家を描いた『追伸』。今年1月、テリー伊藤、薬師丸ひろ子を主演に映画公開された『あおげば尊し』では、余命2ヶ月と宣告された父親の介護を通じて、家族のあり方や、死の意味を問いかける。
「捨て去ること」でも、「逃げてしまう」ことでもなく、「卒業すること」の意義。登場人物たちはそれぞれが家族の死という現実と同時に、過去の自分とも向き合うこととなる。卒業シーズンの今、自分にとっての「卒業」を見つめ直すきっかけを与えてくれるかもしれない。

BOOK
『卒業』 
著者:重松清 
発行:新潮社 
価格:1600円
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