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デジカメ散歩
第3回 川とともに暮らす門前町「亀戸」を歩く

今回訪れるのは「水」と密接な関係にある街、亀戸周辺。
多くの神社仏閣があり門前町として栄えた歴史を持つ一方、荒川と隅田川に挟まれた低地に位置するこの一帯は、水害に悩まされてきた。昭和44(1969)年、東京都によって策定された「江東再開発基本構想」は、この一帯の水害を防ぎ、良好な生活環境の確保を目指したもの。以後、計画は着々と進み、災害時の避難広場を兼ねた公園や、スーパー堤防などが各所に造られている。
災害に強く、川とともに暮らす街。暑さも何のその!「水」を目指して、いざお散歩スタート!

 
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亀戸駅

今月のお散歩スタート地点、JR亀戸駅に到着。「亀戸」とは、「亀村」という地名と、その地に湧き出た「亀ヶ井」という井戸の名前が由来とか。江戸期には、天神様(亀戸天神社)を始め多くの神社仏閣の門前町として栄えた。

 
亀戸駅
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「亀のいた井戸」があったことが地名の由来
マーケット広場
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マーケット広場
 

昭和52(1977)年に誕生した「サンストリート」。セイコーの本社と時計工場の移転に伴い、15年間の暫定利用として再開発された場所だ。
「マーケット広場」と呼ばれる広場を中心とした構成が特徴で、その周囲を低層の建物がぐるり取り囲むように建ち、大通りからの視線を遮断している。広場では、年間を通して多種多様なイベントが催されているが、イベントがない日も、買い物途中の人や親子連れ、若者などがベンチに腰掛けくつろいでいる姿を多く見かける。


また一見、複雑に思える店舗間の移動も「楽しさ」を増幅させている。緩くカーブを描く通路、広場に面して施された各店舗の多彩なディスプレイ、あちこちに設けられた階段などなど、ちょっぴり冒険気分で買い物を楽しめる。広過ぎず、狭過ぎない、建物全体のスケール感がこうした活気を生み出しているのだろう。

 
迷路のような通路
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迷路のような通路

サンストリート亀戸
噴水公園、かめ・うさぎ公園

亀戸と言えば、もちろん「亀」。駅前の噴水公園で亀をモチーフにした噴水を発見。3匹の亀が仲良く重なって……何と空に向かって羽ばたいている! この公園、よく見ると足下の舗装も全て六角形、3匹の亀が鎮座する土台も六角形。亀づくしだ。
公園内には、荒川の現在の水位を示すモニュメントが設置されている。発光ダイオードの光と、亀のオブジェが乗った水盤が、荒川の水位を示しているという。またオブジェには、過去に起こった災害時の荒川の水位や荒川に住む生物などが刻まれており、この地と川との密接な関係を知ることができる。

 
羽ばたく亀。後ろ姿がとてもチャーミング
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羽ばたく亀。後ろ姿がとてもチャーミング
荒川の水位を示すモニュメント。水盤の上には、もちろん亀
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荒川の水位を示すモニュメント。水盤の上には、もちろん亀

かめ・うさぎ公園1
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かめ・うさぎ公園1
かめ・うさぎ公園2
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かめ・うさぎ公園2

この噴水公園の隣は「かめ・うさぎ公園」。
こちらは、うさぎと亀の童話をモチーフに、遊具やベンチが作られている。

十三間通り商店街。福引きセールなどイベントも多彩
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十三間通り商店街。福引きセールなどイベントも多彩
 

続いて、駅の北側から明治通り沿いに蔵前橋通りまで広がる江東区最大の商店街「十三間通り商店街」へ。飲食店、レコードショップ、雑貨店など約90店舗が通りの両側に途切れることなく建ち並ぶ。十三間通り商店街は、途中、亀戸中央通商店街と交差。こちらも、多くの買い物客で賑わっていた。

道幅が十三間(約23.4m)だったのが名称の由来と言われていたが「香取神社」の文書には「氏子の地境である用水路(現在はない)から東へ十三間の所にあった道」と記されているそうだ。

 
中央通商店街
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中央通商店街


十三間通り商店街
亀戸天神社

受験シーズンともなれば、合格祈願に訪れる人で埋め尽くされる亀戸天神社。学問の神様として崇められる菅原道真の像を、寛文元(1661)年に奉ったのが始まりと言われている。以来、多くの参詣者を集めるだけでなく、梅や藤の花の名所としても名高い。

亀戸天神社
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亀戸天神社
   
昔から長寿のおめでたい生き物として知られる亀。子供たちにも人気もの
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昔から長寿のおめでたい生き物として知られる亀。子供たちにも人気もの

参道正面の赤い鳥居をくぐると、太鼓橋が池をまたぎながら本堂まで続く。これは、太宰府天満宮を模して造られたものだという。現在の橋はコンクリート造。
本殿の横には合格祈願を綴った絵馬が鈴なりになっている。思わず、大学受験を控えていたウン年前の思い出がよみがえる。静粛な気持ちで、神社を後にする。

大東島駅
 

亀戸駅北口よりバスに乗車し、東大島駅へ。大島は「おおじま」と読む。その昔、この一体は、旧東京湾に浮かぶ孤島だったそうだが、その後、開拓が進み「大きな島」が転じて「大島」と呼ばれるようになったそうだ。
駅の一帯には、都立大島小松川公園が広がる。

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開拓が進んで「大きな島」になった
東大島駅
東京都立大島小松川公園

江東区の防災市街地再開発事業により設置された、面積約20万平米の公園。災害時には20万人を収容する避難広場となる公園内には、テニスコートのほか各種スポーツ施設、また風の広場、季節の広場、バーベキュー広場などがテーマごとに設けられている。
荒川を望む「風の広場」の一角には、旧小松川閘門が堂々とした姿を留めている。水位の差がある水面に船を昇降するために作られた水門だ。小高い丘の上にあるこの広場には、川から心地良い風が吹き上げてくる。
「風の広場」。周囲の木々以外、視界を遮るものがない
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「風の広場」。周囲の木々以外、視界を遮るものがない

 

旧小松川閘門
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旧小松川閘門

小松川第二ポンプ所
 

「風の広場」の隣では、何やら大規模な工事が行われていた。
江東区の亀戸、大島地区と、江戸川区の小松川地区の雨水を集め、江戸川に放流するポンプ所「小松川第二ポンプ所」の工事現場だった。建築面積約5,500平米。今年5月に着工され、完成は、2013年3月末を予定。

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小松川第二ポンプ所
小松川第二ポンプ所
スーパー堤防

荒川沿いでは、「スーパー堤防」計画が進んでいる。
川岸に高い堤防を建てるだけでなく、堤防の頂点から市街地側に緩やかに勾配をつけながら土地を整備していくことによって(つまり、堤防の最高点から緩やかな「裾野」となる土地を整備することによって)、洪水の際に堤防が決壊することを防ぎ、また必要に応じて地盤改良を施すことで地震にも強い地盤をつくっていくのだそうだ。
確かに、高い堤防が一つあるだけでは、水位がそれを越えたときに災害は免れられない。

  スーパー堤防
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  スーパー堤防

堤防の途中にあった海までの距離を記したモニュメント
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堤防の途中にあった海までの距離を記したモニュメント
 

この辺り一帯は、荒川と墨田川に囲まれた「江東デルタ地帯」と呼ばれる低地で地盤が軟弱だが、この堤防と、先の小松川第二ポンプ所、そして災害時の避難広場となる公園などの整備を同時に進めることでそれらの問題を解消しようというものだ。
傾斜の緩やかな堤防の斜面には、桜の木の他、多くの樹木が植栽されている。もちろん、人が通ることも可能だ。通学途中の学生や、ジョギングに汗を流す人、ベンチに座って川面を眺める人など、川と人とが寄り添える空間がそこにある。

 
 

「亀戸周辺は神社を軸にした古い町並みと、人々が思い思いに集うことのできる広場などの新しい空間が融合した、心地よい良い町だった。身近に水のある風景は、何故か気持ちを落ち着かせてくれる。」

亀戸
イラスト/小湊好治 Top of the page

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